第164話 姉のその後③
「さて、そうと決まれば時間が惜しい。すぐに来てくれ」
「えっ、でもガンディス様にはまだ連絡が……」
「どうせ多忙だ、それに到着直後という事もあって今は兵士の事も見なければならない。ミコトの面倒もあるしな」
「……ミコト?」
「あぁ、勇者の姉の方だな。ソルダート様が不在の時はガンディス様が指導に当たる事になっていてな。この件に関しては恐らくガンディス様も同意見だ。問題ない」
「……そりゃ確認出来ないですものね」
かなり強引に話を進めようとしてくれるクリス様だけど、恐らくそれくらいの勢いでねじ込まなければ成せない内容なのだろう。きっと事前にわかっていたからといって可能な訳ではない状況なんだ。
「ご主人様……私……」
「大丈夫、僕が付いてるから。任せてよ」
「はい……」
僕の差し出した手を握り返すレミリアと共にクリス様の後に続く。懐かしいな、この街は。
一時期合同演習の名目でかなり長期に渡って滞在した事もあった。ゴツゴツとして活気のあるパワーにあるれた街だ。実にガンディス様らしい雰囲気。
街の中心にある城はと言えば、この上ない迫力を放つ巨大にして強大な城。これは誰かが住むための城ではなく戦う城、大きな城門を越えて受け付けらしき人の座る所へとまずは歩みを進める。
「私だ、知人を連れてきた。ガンディス様とも関係のある者でな、少し中へ通すが目を瞑ってくれ」
「ふふ、クリス様がそうおっしゃられるのなら」
受け付けの女性は笑いながらクリス様の我儘をスルー、普段から丁寧な信頼関係を築いているのが伺える。
「こんなアッサリ……良いんですか?」
「ふ、お前も私の共犯者さ。おっと、私らしくもない事を言ってしまったな、気にしないでくれ」
「そうですね、気にせずに付いて行かせて頂きます」
お互いに笑いながら、その様子を見てレミリアも心なしか高揚してきたのか、笑顔と不安が入り混じった様な複雑な表情だ。でもしっぽは揺れている。大丈夫だろう。
まずは……ガンディス様の所だ、間も無く到着だと聞く前から何となくそんな気がしていた。
何せ熱い……気温が上がっている気がする。
そしていよいよ部屋、という所で立ち止まる。
扉が赤い……その上妙に熱を放っている気がする……。怖いなこの扉。
「止まれ、そして三歩離れろ」
「えっ」
言われるままに扉から三歩離れる。
一体何が……?
「失礼します、クリスです」
「サッサと入らんかぁぁぁぁ!!!」
バァンと扉がとんでもない勢いで開かれる。
あぁ……これは当たってたな、こ、こういう事か。
相変わらず怖いな……一応魔力を纏っておこう。
「ほぅ、全く臆さぬか。ヌハハハハ面白い奴め! クリス、こやつは誰じゃ!」
「ハッ、我が軍の大いなる失態を人知れず収め、利を齎した貢献者にございます」
「何と! ヌハハハハハハハでは礼が必要じゃな!!」
バシーンバシーンと両の肩を叩かれる。そして地面が振動する。魔力で身体を守っていなかったら骨折していたよねこれ。