第159話 到着、コーラルカーン
「キュキュゥ!」
「はぁぁ、ミールちゃん可愛すぎます……」
心の傷が一番懸念されていたルルリさんは、ミールの力ですっかり調子を持ち直している。それで解決した訳じゃないだろうけど、ひとまず笑える様になってくれて良かった。
グッジョブミール。
「キュゥ!」
「あぁ……ミールちゃん……」
ミールがルルリさんの元を離れ、僕の肩へと移動する。もうすぐ到着だからね。
「見えて来ました……うわぁ……何というか、凄いですね」
「コーラルカーンは要塞都市だからね」
既に見慣れている僕や沈黙のメンバーは特にリアクションもないけれど、レミリアが大きな息を零した。
確かに初見のインパクトは凄いかな。めちゃくちゃゴツゴツした街だからね。周りも立派な城壁で囲われてるし、対魔族戦の最後の砦にされる街だ。柔なそれでは成り立たない。
そんな要塞都市の入り口を通過し、妙に騒がしい街中を抜けてギルドへと到着する。やっと着いた……大変だったなぁ。街全体がやけに騒がしいのはやっぱり貴族どうこうのゴタゴタのせいかな?
やっとここまで来た、でもこれからだからね。まだ気は抜けない。にしても相変わらずここのギルドは立派な扉だ。なんでもガンディス様が来るたびに扉を壊すから、鉄製の扉を特注したとかなんとか。
熱過ぎるよねガンディス様。
「いらっしゃいませ、今日は如何な御用でしょうか!」
「えっと、ラベルカーンからここまで護衛の任務を依頼しておりまして、完了報告です」
「え!? ラベルカーンから!? 何かありませんでしたか?」
「え、何かというか、変な魔物とは遭遇しましたが……」
「やはり……!? 詳しく聞かせて下さい!」
どうもこっちでも噂になっていたらしい。
受け付けの人にはニーナさんが認識しているのと同じ内容で報告しておいた。多分それがベストだろう。
そしてそんな話の中、向こうの話を聞くと今回の件について色々事情が見えてきた。
どうやら謎のオークは例の貴族の屋敷から逃げ出した被験体だったそうだ。とはいっても元は人だったという訳ではなく、オークに対して人に施す前の段階の実験をしていたらしく、それが全て逃げ出してしまったとか。
うーん、危ないなぁ。まぁ本当に危ないのは倒せてるから大丈夫だとは思うけど。
「そ、そんな事に……ではそのキメラの親玉の様なものは既に討伐済みなのですね?」
「そこは大丈夫です。しかし粗方他のキメラオークも討伐しながらここまで来ましたが、また第二のアレが育たないとも限りません。討伐隊は編成して送り出すべきかと」
「成る程……では早速手配いたします。貴重な情報、それに事前の危機回避、本当にありがとうございます。改めてギルドからも軍からも礼をさせて頂きたいのですが……」
え、そうなの? それだったら……。
「えっと、ならその実験場で見つかった奴隷についての話を聞かせて貰いたいんですけど……」
「……他でもない、軍の失態の尻拭いをしてくれた方の頼みですからね。急ぎ取り次いでみましょう、丁度今軍に報告する内容を持った者が立つ所だったので、すぐに伝わる事と思います」
これは上手く話が進みそうだ。
後はその……内容だよね。