第157話 そして僕に出来る事
「どちらの可能性にせよ、僕はお姉さんを引き取ろうと考えている。或いは買い取ると言い換えても良い」
「えっ」
「居たら、引き取れる状況が僕に与えられたのなら、或いは掴み取れたのなら。必ずお姉さんを我が家に迎え入れる。そのつもりだ」
「ご、ご主人様……」
これは最初からレミリアとしていた大切な約束。反故にするつもりなど毛頭ない。治療が必要なら僕自身の力も惜しまないし、金に糸目もつけない。
けど、状況が読めないのが問題だ。
「ただこの件には既に軍が介入している。それも貴族と炎将ガンディス様が状況に臨んでいるのなら、恐らく穏便に済ませたい貴族と不正を許さないガンディス様の間で押し合っている事だろう」
「……はい」
「貴族側の力が大きく働けば、奴隷達は静かに横流しされる可能性が高い。恐らくそういう場所だ、珍しいとされる存在が沢山いるだろう。貴族は貴族間でその存在を共有したい筈だ。だけど、ガンディス様はそれを許さない」
「……はい」
あの人は本当に純粋な炎の塊の様な人だ。その分……話術どうこうで来られると弱い、というのも否めない。
「正直、ガンディス様は戦闘面以外ではあまり強くない。真っ直ぐで熱いお人だ。だから……貴族側に上手くはぐらかされて逃げられてしまう可能性も高い。けど、どうも最近そこにサポートする存在がいるとも聞いている。もしかすると……上手く解放してくれるかもしれない」
「そう……なんですね」
「となると、もし上手く事が運べば軍の奴隷管理部門から精査されて奴隷商人へと移送する流れになるはずだ。そこで、接触のチャンスはあるかもしれない」
「本当ですか!?」
「飽くまで可能性の話だけど、あり得る範囲だ。けと懸念するとすればもう既にかなり時間が経ってしまっている、難しい状況になるかもしれないけど……恐らくクラリスさんの件よりこっちの方が急務だと考えている」
「……はい」
「クラリスさんには悪いけれど、街についたらまずはこの件から話を進めよう」
「よろしく……お願いします。その後は私も精一杯協力させて頂きます! そ、それでまずは私は何をすれば……」
「そうだな、行動手順としてはまずギルドに顔を出した時に、そのままガンディス様の動向を聞いてみる。コーラルカーンだとギルドとガンディス様の繋がりは強い。そこで聞いた話で行動を変えていくつもりだ」
「はい」
どこがどうなってるかなんて、その正確さをこれ以上ここで考えても不毛だろう。もしダメならこうする、それがダメでもこうする。って事を考えられるだけ考えておこう。
それくらいしか僕に出来る事はないからね。