第154話 その後
「……キメラ!!」
「!?」
「……あれ? レミリア……ちゃん?」
「良かった、ニーナさん大丈夫ですか?」
「え? 大丈夫? どういう……痛たたた、あれ?」
「まだ寝てなきゃダメですよ!」
「え? どういう状況?」
「えっと……ひとまず現状に問題はありません。ニーナさんはあの時キメラの攻撃で気を失われたので……お身体に大事ありませんか?」
「あーそういう事か、面目無い。かー僕とした事がやっちゃったなー。ちょっと背中が痛いけど、この痛さは大丈夫なやつだね、暫くすれば治ると思う」
「良かった……」
「他のみんなは?」
「全員無傷で、ダリアさんだけ軽傷です」
「ダリア前?」
「そうですね」
「ダリァァァァごめぇぇぇぇん!」
そんなニーナさんの叫びに無言で手を挙げるダリアさん。いつもこんな感じなんだろうなぁというパーティ感。本当、何事も無くて良かった。
あの時、恐らくあの場所に変種の魔物が集まっていて、全員で南下していた。そう、北からスタートして南に向けて食い潰しながら南下、その過程であの化け物みたいなキメラが生まれた。
そしてそいつを中心に据えながら更に南下を続け、丁度橋の辺りで僕らとぶつかったのだろう。
その予想を裏付ける様に、その後は魔物との遭遇が全く無くなった。無理な蛇行もない事から回避している様子もない。
つまり、あの謎の現象はあの場所を中心としており、もしかするとあのままラベルカーンにぶつかっていたかもしれないという事だ。
逆に考えれば、ここで、この段階で倒せたのは運が良かったのかもしれない。恐らく、ラベルカーンに着く頃にはもっと違う姿になっていただろう。個々の能力もBクラスやAクラスレベルになっていた可能性もある。
一網打尽に出来たのなら……良かった。
それにこのパーティは恐らく見た事を口外したりはしないだろう。僕としてもそこは望む所ではないので、お願いするしないし、信じるしかないんだけどね。多分大丈夫だとは思う。
一番お喋りなニーナさんは寝てたから見てすらないしね、ラッキーだったかな。
ただ申し訳なかったのがルルリさんだ。素早くレミリアの耳を塞いで身体で覆い被さる様にあの状況からレミリアを守ってくれていた。それ故に……かなりキツイ事を経験させてしまった。
僕としてもかなり厳しい場面だったはずなんだけど……不思議と嫌悪感はないんだよね。かなり悲惨な状況ではあったと思う。でもこう……辛いとかそんな風にはならなくて、寧ろ清々しいというか……いや。ダメだとは思うんだけど妙にスッキリしている。
ただ、スッキリしてるのは僕なのか、それとも特異魔法の方なのか、それは分からないけどね。
青い顔をしながら一点を見つめてボーッとしているルルリさんが心配だ。大丈夫かな……。