第150話 vsキメラ②
「クソッ、ダメだ避けきれ……」
「ニーナさん!」
「院長さん!?」
キメラが左手に持つその巨大な斧でダリアさんを牽制しつつ、拳でニーナさんを追い詰めていた場面。このままいけば直撃していたであろう攻撃の、拳側に魔力を込めた渾身の蹴りを試みる。
結果見事に軌道を逸らす事に成功し、ニーナさんは事なきを得て素早く数歩後ろに下がった。
「危なかった、ありがとね!」
「いえいえ、何か手立ては浮かびましたか?」
「いやーそれがサッパリでさ」
敵を見ればダメージらしいダメージはダリアさん斧な付けたであろう複数の切り傷くらい。今の僕の攻撃でも軌道を逸らす程度でダメージにすらなっていない。
何処かに活路は……!
ダリアさんの斧傷が入れられるのなら、同じ箇所を狙えば……! やってみるか。
僕は魔力を全開にした。
『ガアアアアァァァァァァァァ』
叫び暴れるキメラの攻撃を掻い潜り、腕につけられている斧傷を狙って攻撃を仕掛ける、これで……!!
「効いている、有効だ!」
「成る程ね!」
弱点らしい弱点は見当たらない、なら作るしかない。そして撃ち込むなら……ニーナさんの方が向いている。
「ダリアさん! 腹部に傷を付けてもらえませんか!」
無言で反応するダリアさんはすぐにその攻撃をキメラの腹部へと見舞うべく、行動を開始する。戦線に僕が参入した事でキメラはやや手数に遅れが生じている、今なら……! よし、傷は入った!
「僕とダリアさんがサポートします! 最大風圧で中から吹き飛ばせませんか!」
「中から!? ……成る程、やってみようか!」
迫りくる斧をダリアさんが受け止め、そして僕が攻撃を逆サイドから仕掛ける事で注意を出来るだけ引きつけて……ここ一番で視界を奪う。顔を狙った攻撃!
「ニーナさん!」
「任せてよね!!」
斧はダリアさんが封じてくれている、視界は僕が塞いだ。今なら……! ダメだマズい、キメラがニーナさんを捕捉している。間に合ってくれ!
ニーナさんが素早く懐に潜り込んで、さっきダリアさんが付けた傷に……腕を突っ込んだ。
「風圧掌!」
その瞬間、キメラの腹部は内側から弾け飛んだ。
だが……すでに振り上げられていた腕が……ニーナさんを捉えている。まずい。これは……!?
「グハッ!?」
勢いがやや死んでいたとはいえ、ニーナさんに攻撃が直撃する。属性魔法で攻撃中だったニーナさんは守る魔力を十分に纏えていなかった、ダメージが通っている……! 考えが甘過ぎたか!
キメラはそのまま、その場に大の字倒れた。けれどニーナさんもまた……その場で倒れている。
「大丈夫ですか!?」
「……」
意識がない……。けど見たところ命に関わりそうな傷は見当たらない。状態的には当たりどころが悪くて気を失ったみたいだ。魔力で殆どガード出来なかったんだから……この程度で済んだのなら逆に幸いか。
恐らく、既にトドメをさせていたから力が入りきらなかったのだろう。後数秒違っていたら……いや、考えても仕方のない事は考えないておこう。
それより傷の手当てだ。今仮に僕が何かしようと考えても、僕の力で治せるのは体内からで即効性のあるものではない。ここは効果は薄めでもポーションに頼る方がマシか。後は普通に消毒と。
「ルルリさん!」
「ニーナさんは無事ですか!?」
「大丈夫です、少し当たりどころが悪かったみたいで気を失ってはいますが……」
「なら早く馬車に乗って下さい! すごい数のオークが後ろから来ています!」
「え!?」
後ろを見ると……確かにこの状況ではどうにも出来ない様な数のオークがそこに。
一難去ってまた一難……兎に角今は逃げるしかない。