第149話 vsキメラ①
「あれは僕とダリアでやる。みんなは下がってて」
「気をつけて下さいね、ニーナさん」
「万が一の時は、僕も出ます」
「あはは、頼りにしてるからね院長さん! でもそっちも何かあるかもしれないから頼むよ!」
「分かりました」
ニーナさんは両手をプラプラさせながらその場で軽くジャンプし、ダリアさんは首をバキバキと鳴らしている。二人とも……魔力が整えられていく。
そして、爆発するように魔力を全開に。
「風刃乱舞!」
先行したのはニーナさんの属性魔法。中距離から攻撃をしかけられるのは属性魔法の強味だ。だけど……。
『ガアアアアァァァァァァァァ!!!』
それを物ともしない強力な魔力を纏う謎のオーク。あれはもう……オークというよりキメラだ。複数の魔物が合体した……別の何かになってしまっている。
ダリアさんが接近するそれを隣からニーナさんがサポート。風圧掌で注意を左から引きつけつつ、右からダリアさんが攻撃を仕掛ける。
ダリアさんの斧は敵の肌こそ傷つけたものの大きなダメージは入らない。
振り下ろされるキメラの斧は速度的にも威力的にもかなり危険な勢い。ダリアさんはかわしたが、地面は大きく砕けた。当たると……かなりまずそうだ。
「ご、ご主人様……どうすれば……」
「大丈夫、最悪僕も出るから。二人が大丈夫って言ってるんだから、まずは任せよう」
厳しい攻防が続く、致命傷こそ互いに受けていないものの、破片や細かい攻撃圧によるダメージがニーナさん達に蓄積していく。
敵も段々と傷が増えてきてはいるけど……まだ倒すにはかかりそうだ。
「ダリア!!」
かわしきれない攻撃、ダリアさんが間一髪斧で受ける事で致命傷は避けたが、大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。だが、揺らぐ事なくすぐに戦線に復帰するダリアさん。
めちゃくちゃタフだ、アレだけの攻撃を受けてなお魔力に揺らぎはない。けれど……少しずつ、追い詰められている様にも見える。これは……早い段階で手を打った方が良いかもしれない。
「ルルリさん、レミリアを……頼みます」
「ご主人様……」
「大丈夫、少し手助けするだけだから」
「分かりました、無理はなさらないように」
「了解です」
「ご主人様、お気をつけて……」
泣き出しそうな目でこちらを見つめるレミリア。
この子の為にも、ここは何とか切り抜けないと。
とはいえ……無闇に特異魔法を使う訳にもいかない。命と引き換えになるようならやむを得ないけど、最初からそれに頼っていてはこの先もやっていけないだろう。
特異魔法は無しだ。
僕自身の力で、サポートする。