第147話 森の中の攻防
それからというもの、敵の数こそ減ったが兎に角一つの戦いに手間取る状況が頻発した。
だがその特徴も段々と見えてきた。
その敵はオークだ。だが……すべて違う特徴を持つ謎のオークだ。妙に脚力の強いオーク、武器持ちのオーク、極端な話羽の生えたオークまでいた。
訳が分からない。
そしてもう一つ厄介なのが、その全ての魔物が魔力を纏っているという点。
数もそれなりに存在するにも関わらず、一体一体が侮れぬ程に強い。
「ごめん右を頼む!」
「了解!」
前から下がってきたニーナさんが声だけかけて左に移動する。右からも何かが接近している。今だと僕にも分かる、敵が魔力を纏っているからね。
見えたけど……あれは何なんだろう。オークはオークなんだけど、腕がカマキリみたいになっている。どうも鎌を持っている訳ではなさそうだ、あれは腕の一部だね、完全に生えている。
その現れたカマオークは、その鋭い鎌を僕に向けて振り下ろした。速さも練度もない。その程度の攻撃なら当たる訳もないけど……見た目が異形過ぎてどうしても少し尻込んでしまう。
懐に入って下腹部に拳を突き刺す。さっきまでなら軽く吹き飛ばせた敵も今はダメージこそ入っていてもその場にとどまっている。一撃とはいかない。
なので次の攻撃が来る前に足を払い、そのままその勢いで一回転して体制を崩しているオークの顔に回し蹴り。
流石にこれにはオークも吹き飛んだので、すぐに追いかけてもう一発蹴り飛ばしておいた。
倒せてはいないだろうけど、追いつけもしないだろう。出来れば省エネで切り抜けたい。
「大丈夫だった!?」
「問題ありません、そちらも?」
「こっちは大丈夫だけど……院長さん本当に結構戦えるんだね」
「まぁこれくらいなら」
「元々Dクラスじゃなかったの?」
あれ? そう言えばそうだな。この敵は多分Cクラスくらいには相当しているだろう。普通に戦えてたし、感覚的にも危険は感じてないからスルーしてたけと、意外とやれてるみたいだ。
「の筈なんですけど、割と戦えてますね」
「ふふ、変なの! まぁ僕らにとっては嬉しい誤算だから良いんだけどね!」
恐らくこの小隊はダリアさんとニーナさんがAクラス相当。ルルリさんは多分BかCか、でも土を操るその力を込んだならB以上だろう。カサビムさんはよく分からない。
でもこの事態、恐らく依頼を受けて貰えてなかったら……コーラルカーンには辿り着けていなかったかもしれない。
僕らはその後も何度かの襲撃を受けつつも、何とか森を抜ける事に成功した。
抜けた先には……その異形のオークたちが群れを成して待ち構えていた。