第146話 未知との遭遇
それからすぐに僕はカサビムさんに馬車に戻っても大丈夫だとジェスチャーを受ける。もう少し動きたい気持ちもあったけど……まぁ必要ないなら体力を浪費するのも良くないからね。馬車へと帰還した。
「お疲れ様です、ご主人様! ご主人様凄いでふ!」
「興奮して噛むのは良いけど、落ちないでよ?」
「はぅ……すみません。まさかこんなにカッコいいと思ってなくてつい……」
「キュゥ!」
「まぁ普段は座ってばかりだからね」
馬車に戻ると凄くキラキラした目のレミリアがお出迎え。ミールと二人で嬉しそうにしてくれている。安心してくれたなら良かった。
それにさっきからかなり魔物が減ってきている。これはこのままいけばもっと落ち着いてくるのかな? ……うわっ!
「!?」
馬車が、急にその歩みを止める。
「どうしたの?」
前を先行していたニーナさんが不審に思って後ろを振り返る。そしてカサビムさんからジェスチャーを受け取り、表情を歪ませる。
「そんなに?」
よく見ると……カサビムさんが少し緊張感をはらんだ雰囲気を醸し出している。
「分かった気をつけるよ、ありがと。院長さん!」
「何かありましたか?」
「いや、この先にあるみたいなんだけど。敵の質が上がるらしい。数は減るみたいなんだけど。油断しないでね」
「……了解」
何の事だからサッパリ分からないが、危険が増すという事だろう。何故こんな流れになってるんだろう。同じ森の中で敵の質が上がる? 状況に理解が追いつかないな。
再び歩みを進める馬車。
だがすぐに、戦闘が始まる。
目の前に現れたのは……何だ?
オークの様な見た目だが……下半身が別の……。
それに何か棍棒の様な武器も持っている。
何より……奴は魔力を纏っている。魔物が魔力を持つケースは珍しいという程でもない。でもそれはランクで言えば……Cクラスレベルの力を最低でも保持しているという強さの表れでもある。
目の前で、戦闘が繰り広げられている。
それなりの速さで出される攻撃をかわしつつニーナさんが打撃を試みるもこれもかわされ、当たっても耐えられている。
とここでダリアさんが大きく踏み込む、その強烈な斧攻撃を棍棒で防ぎ、防いだものの身体は宙に浮いてしまう。
隙が……生じる。
「風刃!」
真横に走る風の刃が揺らいだ敵の魔力を貫通し、身体を真っ二つに断裂する。中距離からの攻撃も多彩なニーナさん、流石に強いな。
「ふぅ、何なんだろうね今の?」
どうやらニーナさんにも分からない魔物らしい。ぱっと見だとオークの様にも見えたが、明らかにその強さの範疇は越えていた。それに……見た目にやや違和感も覚えた。
アレが森の不穏な空気の元凶だったのかな?




