第145話 ブランクを含む戦い
荷台の前から飛び降りて右側で馬車と並走する。どっちから来るのか分かってたらそれ程問題でもないからね。
こういうのはどこから何が来るのか分からないから危険なのであって、それさえ分かっていれば危険は激減する。だからレンジャーは小隊に一人は必須なんだよね。
お、右から何か蜂みたいな奴の大きいのが……二体。イエロービーか、特に問題はなさそうだ。
僕は身体に纏っていた魔力を増幅させた。
右の上空から迫る敵だが、低空飛行をしては飛ぶメリットも消えている。それに動きは僕の方が速い。
素早く接近し、まずは先頭の一匹を殴り飛ばし、そのまますぐ後ろにいたもう一匹も蹴り飛ばした。
あれ? ブランクがあったから動き辛いだろうなって思ってたのに妙に身体が軽いな……。
「おぉ! やるじゃん院長さん! 」
「まぁこれくらいは」
「ん、真ん中は大丈夫そうだね、助かるよ。ゴメンだけど暫く頼むね!」
「任せて下さい」
実はちょっと動きたくてウズウズしてたんだよね。右側を並走しつつ様子を伺う。
後ろからはそれ程追われていないので問題はなさそう、寧ろ問題は前だね。でも前は前で問題なさそうだ。なんせ前を行く二人が二人とも凄く強い。
両手斧のダリアさんは比較的小型の両手斧で、器用に踊る様に敵を蹴散らしている。かなり洗練された……それにおそらく、大型の魔物ともやりあえるであろう力強さも感じる。
それにニーナさんも。殴る蹴るが基本だけど、まるで手や足に幻の延長線がある様に当たっていない敵までも吹き飛ばしている。恐らく風で射程距離を伸ばしているのだろう。
あ、またカサビムさんから指示が来た。
今度は左らしい。
再び身体に大きく魔力を纏い、馬車を飛び越える様に左に移動する。うーん、やっぱり身体が軽いな。
現れたのはイノシシのような見た目だが、二足歩行のオークという魔物。確かEランクだったかな?
姿を確認すると同時に踏み込み、右腕に力を込める。
そして反応される前に殴り飛ばす。やっぱり身体の調子がかなり良いみたいだ。ブランクがあったのに昔でもこんな風には動けていなかった様に思う。
特異魔法に目覚めてから強くなった訳じゃないけど、魔力量はめちゃくちゃ増えたからなぁ。
その辺りで全体的な能力が向上していたのかもしれない。足手まといにはならなくて済みそうだ。