第142話 辺りの様子
「今日は森を抜けてしまいます、なので少し揺れが酷くなるのと状況がバタバタしますがお気をつけて下さい」
「まぁ乗っててくれたらそれで大丈夫だと思うけどね! 僕らに任せてよ!」
「よろしくお願いします。本当は少し身体を動かしたい気持ちもあるんですけど、安全第一なので」
「あーそっか、元軍人さんだっけ? どこまでいったの?」
「Dクラスまでいって退職しましたね」
「それだけやれれば大型のやつでもない限りは任せても大丈夫そうだね。魔力的な修行は続けてるの?」
「むしろ仕事が特異魔法を扱うもので、その辺りは毎日鍛えられてますね」
「あはは、本当だー。そっかー確かにあれも修行か。そしたら毎日何時間も修行してる事になるね!」
「まぁ身体を動かせていないんで、それに実戦からは離れてから日も長いので」
「ま、ピンチの時は頼むね!」
「ピンチが無いことを願います」
「おっと、確かにそうだった!」
「もうニーナさん。後ろが疎かになってますよ!」
「へーきだよ! ダメだったらカサビムがもっと怒ってる筈だから!」
「カサビムさんを無闇に怒らせないで下さいよ……」
朝のミーティングがてら軽く打ち合わせをしつつ今日の進行を始める。良く晴れた天気で特に問題はなさそう。顔の大半を隠してしまっている寡黙なカサビムさんが謎のアンテナを張り巡らしてくれているらしいのでニーナさんも油断している。
でも変に緊張感を保たれるよりかは精神的には楽で助かるよね、特に今は……レミリアもいるから。
「ご主人様、私……やっぱり邪魔ですよね」
「大丈夫だよ、それを言い出したら僕も大差ないからさ。二人で仲良くお荷物やってたら良いさ。彼らには正式に依頼してるしね」
「ありがとうございます。ごめんなさい……ずっと落ち着かなくて……」
「うん、だよね。大丈夫、大丈夫だから」
「ご主人様……」
不安そうに尻尾をゆっくりと低く揺らすレミリアは、耳をへたらせながら困り顔をずっと続けている。困り顔というより……怖さと不安と、そこに希望を少しだけ混ぜたような一番怯えた状態。そりゃ……不安にもなるよね。
僕はそっとレミリアを抱きしめた。
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「ナビリスさん、少し良いですか?」
「え、もう森ですか?」
「そうなんですけど……少し問題が発生しておりまして」
「問題?」
「森も、なんですけど、この辺りの様子がかなりおかしいとカサビムさんが先程からずっと警戒しています。後ろは問題ない様なので、一旦ニーナさんを呼んで先行して貰おうと思うのですが、如何でしょうか?」
「あ、はい。それニーナさんは大丈夫なんですか?」
「彼女も冒険者の端くれなので、そこは信頼してあげて頂けると助かります」
「ならよろしくお願いします」
様子がおかしい……か。確か昨日もそれっぽい事言ってたよね。何が起こってるんだろう。