第141話 旅の違和感
「うわー、本当に懐いてるの? 凄いねー」
「キュゥ!」
「こうやって見るととっても可愛いですね……」
「ウイングラビットかー、前にクエスト受けた事あったよね? 捕獲のさ」
「ありましたね、確か結局掴まらなくて知り合いに補助を依頼する事になった……あれですね」
「そうそう、めちゃくちゃ速いんだよなーこいつら」
「キュゥ!」
「でもこうやって抱いてると可愛いね、次にウイングラビットと対峙したら躊躇しそう」
「あ、それ分かります」
隠れていたミールが出てきて、その後今日のノルマを達成したので一旦休む事に。どうせこのままいけば森なので、頑張った所で夜間の強行となってしまう。危険しかないので今日はここまで、という事らしい。ベテランがいると安心するね。
とは言え、ちょっと油断し過ぎな気もする。
「見張りや索敵は大丈夫なんですか?」
「基本的にはカサビムさんがいますので」
凄い信頼度だな……。
僕は彼を知らないから実に不安だ。
「そんなに凄いんですか?」
「えっと、五百メートルほど索敵出来る別の知り合いの方が【奴は化け物だ】とか言ってましたね」
「えぇ……どんなレベルなんですかその人たち」
「みんな凄いよー、どんどん強くなるし。僕はちょっとサボり過ぎたかなー。それはそうと見張りは大丈夫だから気にしないでね。カサビム一人の時と、あいつが休憩する時は他の全員で見張るから」
「な、成る程」
どうやら護衛に抜かりはないらしい、流石だ。因みにレミリアは僕の隣で大人しくしている。けど少し落ち着かない感じもあるんだ、時々服の裾をギュッと握るからそんな時はそっと手に手を重ねている。
そりゃ……怖いよね。
「でもなー、何か変なんだよなー」
「そうですね」
「え?」
ニーナさんが不穏な事を言い始める。何なんだろう、危険な事は勘弁して欲しいな。
「いやー、いつもさ。このルートでこんなに蛇行する事ないんだよね。何にも会ってないから違和感ないかもだけど、多分カサビムが回避してんだよねーこれ」
「た、確かに結構な頻度で蛇行してますね」
「前に似たような事があった時は罠だったから分かるんだけど、今回は妙なんだよね。多分何かと合わないように避けてる」
「何か? それは一体……?」
「分かんない、あいつ喋らないからさー」
「えぇ……」
まだ今は何も起こってはいないけれど、何かを避けながら状況は進行してるらしい。って事はカサビムさんが居なければこの速度を保てて無かったって事なのかな。
何か……か。
何もなければいいんだけど。