第140話 旅の始まり
「おはよー! あれ? 二人になったの?」
「申し訳ないのですが二人の護衛でお願いします。よろしければ事情は道中で話させて頂きます」
「ま、大丈夫だよねダリア、カサビム?」
小隊のリーダーであるダリアとレンジャーであるカサビムが了承してくれた事で、レミリア同行は良しとされた。ダギルさんに大丈夫だとは聞いていたけど、やっぱり無茶は言ってるからね。
「その子がいるなら馬車も手配した方が良さそうだね、荷物はそれで全部?」
「荷物はこれだけです。あの……護衛に差し支えは?」
「まぁ前にも経験あるから大丈夫だと思うよ? その時は暗殺者が来たから滅茶苦茶大変だったけどさ。二人は誰かに狙われてるとかないよね?」
「えぇ……暗殺者って。僕らはただの民間人なので」
「なら魔物からの警護は僕らの得意とする所だからさ。人が敵じゃないなら問題ないよ!」
ニーナさんの隣にいる、紫の髪のルルリさんも小さく頷いてくれている。どうやら本当に大丈夫みたいだね。良かった。
馬車はギルドからレンタルして、準備は滞りなく終了。問題は……ない筈だ。
「さーて、それじゃ早速出発しようか!」
「よろしくお願いします」
ニーナさんが号令をかける事で、僕たちはコーラルカーンを目指し始めた。
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進み始めた陣形は前にダリアさん、馬車の運転はカサビムさんが。そしてその隣にルルリさんも座って。ニーナさんが後ろ。
特に何事もなく進行している。
経路としては途中森を通過する場面があり、その後川を越えてコーラルカーンへ。
川には十分な橋がかけられているので、問題があるとすれば森くらいだとルルリさんが教えてくれた。
「左三十」
時折、カサビムさんが手でシグナルを出してそれをルルリさんが先頭にいるダリルさんに声で伝える。
意味する所も、何故言っているのかもよく分からないが、これがレンジャーの仕事。
索敵や探知によってあらゆる危険から小隊を守る危機回避のエキスパート。これが熟せる人が小隊に居なければ効率が大きく低下する大切な存在。
索敵は広く魔力を探る能力で、ある程度の適性がなければ習得もままならない。僕には無理だった技術だ。
時折、ボアやゴブリンといった小型の魔物が現れていたが、前衛のダリアさんが瞬殺している。
大きな身長に比較的細めの引き締まった身体、そしてスキンヘッドに両手斧という、危険な見た目のダリアさん。
恐らく難なく倒せる魔物以外を避けつつ、ダリアさんの瞬殺範囲でルートを取っているのだろう。
今の所は順調そうだ。
「……あの、カサビムさんがナビリス様の荷物から見過ごせる程度の気配がすると。何か心当たりはございませんか?」
「え?」
僕の荷物が? 言われて荷物を見ると……僕の魔力の気配が。ミールだ……気付かなかった。うーん、そんなに余裕なかったのかな……。
「こらミール、いるのは分かってるぞ?」
「キュゥ!」
荷物を開けると中から元気にミールが出てきたよ。全く、何してんだか……。