第136話 状況把握
サリファさんが差し出す手紙を受け取り、互いにただ静かに頷き合う。恐らく、読めばわかるという事だろう。
「ご、ご主人様……あの……、さっきライバックさんが言っておられた事は……」
隣にいたレミリアは話を断片的に聞いてしまった上に、どうしても聞き逃せない単語を耳にしてしまった。それ故にとても不安そうに、少し震えながら僕の方を見つめている。
「ごめん、まずは僕が今の状況をちゃんと把握するから、それまで待っててくれる?」
「……はい。あの、ご主じ、あっ」
「大丈夫、僕も今凄く焦ってるし震えてる。レミリアは一人じゃないから、一緒に頑張ろう。大丈夫」
「ご、ご主人様……」
不安がるレミリアを抱きしめて、頭を撫でて落ち着かせる。落ち着かせようとしているのは果たしてレミリアなのか、それとも自分自身なのか。
少し落ち着きを取り戻したレミリアを離れさせて、僕は手紙を取り出し、読み始める。レミリアの隣には既にカミラが付いている。向こうは任せさせて貰おう。僕はこっちに集中だ。
手紙は小綺麗な封筒に収められており、手紙を取り出して……意を決してそれを開いた。
中には……恐らく今クラリスさんが置かれているであろう状況について、丁寧に書かれていた。事が発覚した直後に筆を取ったらしい、日にから換算するに今日で四日目。どうも前半は外部で起こった内容についてから触れているらしい。
奇しくもコーラルカーンに帰還している時にその知らせは舞い込んできたみたいだ。街の権力の一部を握り、広大な敷地を保有する貴族の非人道的な行いの発覚、それは当然細かく調べられる。
それによって同時に起こるこれらに関わっていたとみられる奴隷や身元不明者の大量出現。ここまできてはもはや小さく隠し通す事は不可能。
何故ならその行いが発覚したのはコーラルカーン最大の勢力、炎将ガンディス・ガルガイルからのリークだったから。どこの筋からかその場で行われていたそれらを察知し、事の収束に動いたのが軍の中でもXXの地位を持つ将だったのが運の尽き。そしてガンディス氏の元には優秀な右腕と呼ばれる存在が最近付いていたらしい。ここに目をつけられてはもう言い逃れは出来ない。
話が世間レベルに出てくるかどうかは分からないが、少なくともこの件は無かった事にはならないそうだ。
ライバックさんほど俊敏に事に対処出来る訳では無かったのでそこは安心した。今すぐに出ても三日はかかる、合計で六日以上か。それでも間に合わなかったという事にはならなさそうだ。奴隷や身元不明者たちは一旦炎将の預かりとなるらしい。
そしてこれが筆を取った時点での外部で起こっていた内容で、ここからが内部で起こっていたクラリスさん自身の話が綴られていた。
むしろここからが本題か。