第135話 与えられた情報
「俺っちも今立ち寄った奴隷商店で聞いてきたばかりだ、長居はしない」
「そ、それで何を?」
「コーラルカーンで事件があったらしい」
「コーラルカーンで? あんな軍でガチガチの街で何の事件が……」
「汚職だ」
「……え?」
コーラルカーンはここラベルカーンから見て北東にある街で、最短距離で行っても三日はかかる場所。そして軍事に特化した要塞都市だ。
そんな街で事件? 汚職?
「貴族の汚職が発覚した、それもかなりの規模だ。これはマズイ事になった。暫くコーラルカーンは大荒れだ」
「そ、それが一体どう関係して……」
「ナビリス、こっちに来い」
「え?」
僕はライバックさんに手を引かれて店の外に。
「小声で話せ、良いか? よく聞けよ?」
「は、はい」
「発覚したのは奴隷の大量実験と鬼畜な快楽場だ」
「なっ!? まさか……それを貴族が?」
「そう、だから握り潰されていたんだ。こんなとんでもない事になるまで発覚しなかったのは初めてのケースだ」
「でも何でそんな事が発覚……」
「俺っちの仲間の奴隷商人に聞いた話だと」
「アズライールさんですか?」
「お、知ってたのか。知り合いか?」
「いえ……名前だけ」
「まぁ有名人だからな。あいつの身内が内部で暴れたらしい」
「暴れた!? 貴族の実験機関で? そんな、自殺行為もいいところですよそんなの……」
「そうだ、だがそいつはやりきったらしい」
「……何て事だ。つまり国が隠蔽していた不祥事に、レミリアの姉さんが関わってしまっていた可能性が?」
「あると決まった訳じゃねぇ、可能性が高いって話だ」
「……成る程。という事はライバックさんの探している人も?」
「可能性は高い、だからこうして慌てている。俺っちは今すぐに立つ。ナビリスも行くなら急げよ? 奴らはきっとまた無かった事にしてくるから、この話も表には出てこない筈だ」
「確かに……」
「なら俺っちはこれで失礼する、レミリアちゃんにお茶サンキューって伝えておいてくれ。じゃあなナビリス!」
そう言い残すと、ライバックさんは風を操ってその場で浮いた。この人は……風の属性魔法のエキスパート。こんなレベルで風を操れるのは極一部の能力者だけだけど……彼にはなんて事はない。
そのまま天高く舞い上がり、凄いスピードで姿を消してしまった。向かったのだろう、コーラルカーンに。
なんて事だ……まさか国家レベルの不祥事の発覚、それも奴隷に纏わる非人道的な? ライバックさんがレミリアを遠ざけたのはこのせいか。
ひとまず店に戻ってサリファさんの様子を見ると、小さく頷いている。まさか……?
「もしかして、クラリスさんもこの件に?」
「はい、そこまで大事に至ってはいない様なのですが、このままでは危険な可能性が。万が一の時にこれをと、預かっておりまして……これです」
渡されたのは一通の手紙だった。
これはちょっと……マズイ事になったな。
心臓の音が……やけに耳に響く。