第134話 動きだす状況
「ミール、身体に変な感じはしない?」
「キュゥ!」
「何か辛いとか、痛いとか、大丈夫?」
「キュゥ!」
あれから、ミールに僕の魔力を可能な範囲で与え始めたんだけれど、ミールはそれを徐々に吸収していっている。
それこそ、元々魔力の総合値が10だったミールの中に、100くらいの圧縮した解毒魔力を与えて維持していたんだけど。もう多分50くらいは吸われたよね。まだ二日目なのに今日中に無くなりそう。
そしてあれからもう一つ面白い事が判明した。解毒魔力を吸収したミールは僅かながらに解毒を操り始めている。部屋の中の汚れている場所に気付いたミールが、そこを掃除するのかなと様子を見ていたら解毒し始めて目を疑った。
恐らく、吸収した魔力がそのまま特性になるのだろう。試しに麻痺毒を身体に影響のない範囲で与えてみたけど、それは操れなかったから、多分特性として身につくのは最初に大きく吸収した魔力の種類によるらしい。
もうこの時点で既に元々のウイングラビットの五倍強い毒耐性を持ったミール。今後の観察が楽しみだ。
「ご主人様、これはどこに片付けますか?」
「うーん、それは……そこに頼むよ」
「分かりました!」
「……任務、完了」
「お、カミラも終わった? ありがと」
何気ない日常が気持ち良く過ぎていく。ミールも特に問題はなさそうで、プラムの仕事も順調で。
このまま何事もなく、毎日が過ごせればいいのになって、そんな風に考えていた時だった。
「な、ナビリス様!!」
突然入り口から荒々しく入ってきたのはうちの用心棒をしてくれているサリファさん。クラリスさんからの善意で店の警護をしてくれている人なんだけど……。
「あの……すみません。今私の上司から連絡がきまして……その……」
「どうしたの? 珍しいね、サリファさんがそんなに取り乱すなんて。レミリア、飲み物頼める?」
「分かりました! ……はい!」
「すみません……ふぅ。あの、聞いて欲しい話があります」
「聞いて欲しい話?」
「はい、お嬢様に関する話です」
……クラリスさんか。前に少し話を聞いていたな。何か状況がややこしくなっているとか何とか。何かあったのかな?
「おい! 俺っちだ! ナビリスの奴はいるか!」
更に状況に輪をかけるように、扉の向こうで声が聞こえる。声なんてものじゃない、叫び声だ。
しかもこの声は……ライバックさんだ。
「ちょっとごめんね、サリファさん」
「いえ、大丈夫です」
終始困り顔のサリファさんだけど、向こうも何か緊急みたいだ。とにかく扉を開けよう。
「こんばんは、ライバッ……」
「ナビリスか! 居て良かった! 俺っちだ!」
うわっ、凄く食い気味に、それに凄い汗だ……。
「れ、レミリア、飲み物を……」
「分かりました! ……はい、どうぞ!」
「すまねぇ……ふぅ、いいか、落ち着いて聞けよ?」
「えぇ……僕は落ち着いてますよ?」
「良いから聞け、大事な話だ」
「大事な……話?」
「レミリアちゃんの姉が……見つかる可能性がある」
「え!?」
「そ、それは……ど、どういう……事でしょうか」
真剣な表情のライバックさんの迫力で、それが冗談でも眉唾でも何でもない事が伺える。
一体何が起こっているんだろう……。
どうも展開的にシリアス編に突入しそうです。
お姉ちゃんも出てきますかね、タイミング的に間に合うのかな。