第132話 構造を理解するという事
「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
僕の管理下に入ったミール。暫くはこの子の様子を見つつ、それに携わる技術を磨く事で修行とするしかなさそうだ。ちょっと無視できる問題じゃないからね。
「ねぇカミラ、ミールは大丈夫かな?」
「……問題、なし」
家に置いてくる訳にもいかず、店に連れてきたは良いけれど。さてどうしようとなって、結局ここに落ち着いてしまった。
「マーベルさん! おはようございます!」
「あぁ……レミリアちゃんが今日も輝いている……美しい、あそこにだけ光が射している様に見える……と、それはそうと差し入れよ!」
「わー! パンが沢山! ありがとうございます!」
「今日はオフだったから……癒しをね、頂きまぁぁぉす!」
「ちょ、あ、あの、マーベルさん……」
「ちょっとだけ……ちょっとだけだから……」
「キュゥ!」
「あら、貴方もいたのね」
「キュキュゥ!」
声だけで誰が来たかは分かるけど、今日は時間的に早いね。まだ午前中なのに。
「貴方も可愛いわね……何食べるのかしら」
「うーん、昨日は家の野菜を食べてました!」
「野菜? ふむ、検討しておくわ。にしてもこの看板というか……首から下げてるこれ。仕方ないとはいえ露骨ね」
「一応ミールちゃんは魔物なので、危害を加えない事を分かって貰わないとって思いまして!」
そう、ミールには悪いけど今暫くは首から看板を下げて貰うしかなくて、窮屈だろうけど仕方ないよね。
【医院のペット、ミールです!】
って書いてあるから、この子がどういう存在なのかは見てすぐ分かると思うんだけど。お客様を怖がらせる訳にはいかないしね。
「お次は……マーベルさん! どうぞ!」
「はーい」
そして待合室からマーベルさんが入室してきた。今日はオフだからか少しお洒落な気がする。オフになると露出が増えるんだよねマーベルさん。目のやり場に困る。
「やっほー院長さん」
「おはようございます、先日はありがとうございました」
「あれくらい仕事だから気にしないで! それより今回のテイム、どうやったのかしら? 普通だと強制的に使役出来るような特異魔法を持っていないと出来ない筈だけど?」
「えっと、色々……はい」
「まぁ言えないわよね、そりゃそうか」
「何と言いますか、テイムの仕組みを理解してしまったと言いますか……」
「仕組みを理解!? えっ、それって……」
「多分、特異魔法でテイムしてる人がどういう手順で何故テイム出来ているのかが分かっちゃいまして。実践してみた結果が……はい」
「えぇ……それだとまた別の魔物をテイム可能って事なの?」
「ですね、あまり大型の魔物に関しては現状手出しできないので、イマイチ使えない技術ではあるのですが」
「十分凄いわよそれ……。ギルドに報告は?」
「やめておきます。偶然って事で」
「……そうね、騒ぎになりかねないものね。私も興味本位で聞いていたけど、聞かなかった事にしておくわ」
「助かります」
その後マーベルさんは普通に診察を終えてサッと店を去って行った。今回の件はギルドに知り合いがいて本当に良かった。やれやれ、どうしたものかな。この技術。