第130話 ギルドへの報告
「あの……モンスターテイムを申請したいんですけど……」
「あら院長さん? え? テイム?」
「そうなんですマーベルさん……」
「誰が?」
「僕が」
「何を?」
「ウィングラビットを」
「え、ウィングラビット? あんな厄介なのを?」
「えぇ、何故か患者として現れまして」
「へー、便秘だったんだその子」
「そうじゃなくて」
「キュゥ?」
その日の仕事終わり。いつもより少しだけ早い目に切り上げて、早く申請してしまうべく先にギルドを目指した。遅くなるとプラムに悪いからね。
「にしても相変わらず突拍子もない事を……まぁでも院長さんの事だからまた詳細は秘密なのよね?」
「えぇ、その……はい」
「とにかくテイムに成功したと、まぁそこから先はもう聞かないでおくわね」
「助かります」
「因みに危険性は?」
「無いですね、何かチェックする事ありますか?」
「本当は確認も危険だから担当がいるんだけど、院長さんがそう言うなら私がするわよ?」
「良いんですか?」
「可愛くないわね、その台詞禁止で」
「ちょっ……」
何言ってるのこの人。
「ほら、おいで?」
「キュ?」
「いいよ、ほら行きな」
「キュゥ!」
「キャッ!? えっ、モコモコフワフワ……」
「キュキュー!」
「あっ……ちょっと、何この子……超絶可愛い」
童顔なマーベルさんが小動物と戯れていると、本当に幼く見えるな……胸が大きいから余計違和感を覚える。というかミールが色々引っ張っていて視界がまずい事に。取り敢えず右を向いておこう。
「ど、どうでしょうか」
「どこ向いて話してるの院長さん」
「いや、その、ミールが……」
「ふーん、ミールちゃんって言うのね! それで申請しても?」
「お願いします」
「どこ向いてるのよ、こっち見なさいよ」
「いや、でも……」
恐る恐るマーベルさんの方を向くと、既にミールは大人しく膝の上に乗って座っていた。この光景も可愛いな……。
「何を期待していたのかしら?」
「キュゥ?」
「……いえ、何でも」
「あら、赤くなって……」
「ませんから! 申請は?」
「そうだったわね、えっと……確かこの辺に用紙が……あった」
「ここに名前ですか?」
「院長さん、軍は退役してるのよね?」
「そうですね」
「ならギルドに登録しておかない? その方が手続き早いんだけど」
「ギルドカードを持つと色々厄介ですし、ギルドとして活動する気は無いんで」
「そう、カードがあった方が便利なのに……」
「カードは開業時に商会で。向こうだと項目が能力ではなく、職種になりますから」
「あらそうなのね。まっ、院長さんの場合それも仕方ないわね。ならこの用紙とこの用紙と……あとは……」
出してもらった用紙に機械的に記入を済ませていく。聞いた通り少し多い気がするけど、仕方ないよね。
「最後に……」
「ミールです」
「ミールちゃん! ここにハンコよろしく」
「キュ?」
「手を、ポンとね!」
「キュゥ!」
ミールが朱肉に手をつけて、そのまま用紙に手形を押した。
「オッケーお疲れ様! これでこのバッチを渡せるから……ここのスカーフにつけるわね!」
「よろしくお願いします」
ふぅ、何とか申請も済んだな。次はプラムのお迎えか、どんな反応するだろうか。