第13話 お泊りお店キャンプ
「ご主人様ー、パン買って来ましたよ!」
「おっ、ありがとね」
結局あの後そのままお店にいたがお客様の来店は見られなかった。とは言え、お店が荒らされるのも困るので今日はこのままレミリアと二人でお店に泊まる事にした。
そんな訳で、いつもは仕事が終わるとサッサと帰るんだけれど、逆に帰らないと決めてしまうとそれはそれでワクワクしてくるから不思議なものだ。
「お泊りですね! 何だかワクワクします!」
「片付けが済んだら使えそうな物纏めといて貰える?」
「分かりました! 布団代わりになりそうなのとか、枕につかえそうなのとか探しておきます! 後は何が必要ですか?」
「ロウソクとかあったっけ?」
「確か数本だけ……用意しておきます!」
レミリアもノリノリだ。日常と違う事をするのは何であれ楽しいよね。折角なんだからこういう所も楽しませて貰おう。ダメだ困ったと悩んでいてもどうせ何も変わらないのなら、考えるのを止めるのだって立派な一つの作戦だ。
「よーし、どうせならこの先どうしていくかとかの話もしようか!」
「そうですね……あ! ここの間取りだとご主人様の動作でロスする時間が勿体無いと思うんですよね」
「うーん、僕もそこは気になってたね。それならさ、僕が手すきの間にここに在庫を移動させたらさ……」
「あ、成る程。それだとここにこれがあると便利ですよね」
「確かに買った方が良さそうだね、後は……」
そうやって夜が更けていった。日の光は完全になくなり、室内はロウソクの灯りが一つだけ。布団も沢山ある訳じゃなかったから、一つの毛布に二人で包まって。何だかキャンプでもしてる気分になってくる。
「ご主人様、私ダメな従業員です」
「ん? どうしたの?」
「お店が大変で、こんなに困ってるのに……とっても楽しくて、こんな日もたまにあると良いのになって思っちゃって……」
「そうだね、僕も似たような事考えてたよ」
「そうなのですか?」
「何かキャンプみたいでワクワクするよね」
「そう! あ、えっと……」
「ね?」
「……あぅぅ、ごめんなさい。でも私もキャンプみたいでとっても楽しくて」
「いいじゃん、折角なんだから。今を楽しもう」
「……はい!」
目の前にある小さな頭をナデナデしながら夜遅くまで雑談していたけれど、結局襲撃はなかったなぁ。今ここに人が居るよって、入り口にもロウソクを一つ立てておいたのが効いているのか……或いは今日は来なかったのか。
やれやれ、ネズミさんはいつ顔を出すのやら。