第128話 毒帝の応用
ひとまず預かったウィングラビットを、昼休みを利用して観察してみる事に。どこまでどう通用するのかな。
まずは……この麻痺毒を弄ってみるか。臓器にいっているのがマズイな、手足の方に移動して……出来るな。内在してしまえば動かせるか。
そしたら手足の先に解除毒を生成……ん?
出来ないな。他には……うーん、出来ない。魔物には僕の能力は通らない? 或いは勝手が違うのか?
もう少し、丁寧に状態を探る。
全体を見るに……魔力の濃度が高い。いや、むしろほぼ魔力で出来ている……? 成る程、魔物をこんな風にマジマジと見る事もなかったから気付かなかったな。魔物は魔力の物だから魔物か。討伐消失時、たまに魔石を落とすのはその塊みたいな物だから、ある種核が生成された様な物という事か。
因みに横道にそれるが、魔石というのはその名の通り魔力の込められた石。使うと少し魔力が回復する魔道具だ。
成る程、生物に魔力を送り込むイメージだったからダメだったのか。魔力に魔力を混合するイメージならどうなる?
……お、出来たな。……これは維持が難しいぞ。自然と混ざろうとするからそれを押しとどめてキープするのにいつも以上のコントロールを要求される。
しかも混ざると危険だ、吸収される恐れがある。毒耐性のある魔物に進化しちゃうな。そうならない為には……僕の完全な管理下に置く必要がある。
仕方ない、野良猫の修行の魔力は一旦解除だ。こっちに集中しないと間に合わなさそうだ。……解除完了。全てを解除すると途端に余裕が戻る。よし、今なら多分問題な……?
ん? 問題ないのか? ならもしある程度を全体に馴染ませた後でコントロールしたらどうなる?
……おいおい、ちょっと待てよ?
まさか……!?
「キュ?」
「……出来てしまった。どうしよう」
マズい、これはかなりマズい。まさかこんな応用方法があったとは……。
魔力的存在である魔物に僕の魔力を流し込む、そしてそれが全体に行き渡ったのを確認した後、集中的に全体に馴染ませて、一気に管理を取り戻す。
するとどうだ。
魔物をテイム出来てしまったじゃないか。
これは魔力を特異魔法として扱う人のなかでも、支配者レベルの能力者にしか不可能な芸当。しかも魔力生物、つまり魔物にしか通用せず、効いたとしてもかなり細かいコントロールが必要となる。
でも僕の場合、一度手綱を握ったら問題ないんだけどね。これは困ったな……。
「キュゥ……キュキュ?」
「いや、お前にひどい事したり逃がしたりしないさ」
「キュゥ!」
まさかこんな事になるなんて……。
ちょっとまだ混乱してる。
頭を冷やさなきゃ……。