第122話 新しい目標
あれからダギルさんの店に特に変化は見られない。代わりに向かうの店では僕の仕掛けた毒が狙い通りの仕事をしてくれている。問題は無さそうだ。
けれど今回の件で分かった事が二つある。
一つが、僕がその場にいなければ力を発揮出来ないというウィークポイント。二つ目が、その場所の特定に時間がかかること。
つまり、遠隔能力においてかなり問題が見られる。というよりそれを解決すれば行動の幅が広がる様に思えるので、まずは遠隔能力としてこれをもう少しなんとかしておきたい。
という訳で、僕は今地味な訓練を始めている。そしてこれに付き合ってくれているのが野良猫たち。
まず野良猫に治療するタイプの毒を付与する。そしてそれを他の能力者に気取られない様に小さく身体の一部に擬態させる。これに関しては普段から熟していた範囲内なので難なくクリア。
そして次にその治療毒を接触した別の猫に移動させるルールを組んだ。肉体的接触があった場合その対象へと能力を移動させる。ゆくゆくは分裂させたいところだけれど、まだそれをやると管理しきれなくなってしまうので、まずは移動から。
これによって毒持ちの対象が変動するタイミングを察知しつつ、対象の行動範囲が広がる事で探知の力も鍛えられる。
ん? 今移動したな。今度は…子猫だなと。弱っていたみたいだったので回復には時間がかかりそうだな、とか。
こういう所を感覚的に常時トレーニングしている。今は五匹管理しているが、慣れないうちはなかなか頭が混乱する。これが日常となるレベルまでは静かに続けていくしかない訳だけれども……少し時間がかかりそうだ。
それにまだ余り距離が離れてしまうと維持できなくなるという欠点もある。感覚は切ってしまって能力を残す事も出来るけれど、それをやり過ぎて誰かに何かを見つけられるのも困るので、範囲外では消滅するようにしてある。知らない所で解析されても困るからね。
これを鍛えなければ、動く度にリスクが増え、そして巻き込む人が増えてしまう。それじゃ誰かを完全に救う事にならない。それに、救えなくなる時が遠くない未来で訪れてしまう。そんなのはゴメンだ。
仕事をしていれば修行にはなる。あとは日常的に遠隔操作を学び、その応用力を鍛える。
最近の目標はそんな感じだね。今回の件で痛感したんだ、未熟のままではいつか大切な人をとんでもない事に巻き込んでしまうって。
そうならない為の努力なら、辛くないよね。
頑張らないと。