第109話 そして夜の部へ
「うわー、殆どなくなったね」
「切った分はきっちり無くなったな。肉のストックは……焼肉用で残り三分の一くらいか。だが、夜は仕込み肉があるからな」
「美味しく出来てるかな……」
「……タレは、万全」
「本当!?」
「いつの間に味見してやがったんだこの野郎」
昼の部終わり、全員それなりに疲れてはいるが、それよりよやり切った感覚の方が遥かに大きく、夜の部を期待するとそれほど疲れも感じない。
「俺たちも昼飯にして、夜も頼むぜ!」
「「「おー!」」」
そして昼は僕らも焼肉パーティだ。例によってダギルさんは僕ら用により良い肉を残してくれている。焼いてる匂いだけでもご飯が進みそう。
「これ、私特製のタレだよ!」
「ありがと。……うわぁ、めちゃくちゃ美味しいこれ」
「本当!? 良かったぁ」
プラムはすっかり料理上手になったなぁ。好きだとこんなに上達が早いものなんだね。心配性な所は相変わらずだけどさ。
そんなこんなでみんなで焼肉を楽しんで、そして片付けて、夜に向けてまた仕込み再開だ!
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「本日は日柄最高につきよろしく頼むぜぇぇぇ!!」
「「「「「うぉぉぉぉ!!!」」」」」
そして夜。
なんともダギルさんらしい声で始まった感謝イベント、その夜の部。
「レミリアさん、これお願い!」
「分かりました、十等分くらいですかね」
「うん、それで十人前だよ!」
「プラムこれも頼むぜ!」
「はーい、すぐに切るね!」
既に完成されている仕込み済みの物が皿に分けられて各テーブルに運ばれていく。昼よりもとんでも無く良い匂いを放つ焼肉たち。
そして調理済みのそのまま食べる肉料理も次々にテーブルへと運ばれていく。どれも美味しそうな料理ばかりでヨダレが止まらない。
「……元気の、みなもと」
「お、食べていいの?」
「……食べなきゃ、動けない」
時折カミラが差し入れを持ってきてくれるので、洗い物に専念していても何とか空腹には耐えられている。本当助かるよね。
にしても、凄い人数だな……。
「サラダ行ってきます!」
「すまねぇ助かる!」
「これ切れたよ! 次はこっちで良いのかな?」
「おうよ! 頼むぜ!」
厨房は相変わらずてんやわんや。仕込みを事前に済ませていなければ恐らく回っていなかったであろう勢い。
その分、夜はお酒もよく出ている。成る程ね、ここで原材料費だけでも上手くペイしてるって訳か。つまりダギルさんは今日の売り上げのみを犠牲にしてイベントを興しているから、損失って程でもない訳だ。それでこれだけ賑やかに騒げるなら完璧なイベントだよね。
肉が手に入ると分かってからこっちにすぐ切り替えるんだから、ダギルさんは凄い人だ。本当はもっと小さくやる予定だったみたいだからね。
それが肉が来ただけでこうなると。
……クラリスさんには、改めてちゃんとお礼を言っておこう。