第107話 入念な準備
「こっちの仕込みはどこまで進んでる?」
「全て終わってて、今はプラムちゃんの作業を補助してます!」
「クッソ早ぇな……」
「プラムちゃんの所は時間のかかる作業なので、ひとまずこれかなってお手伝いしてます!」
「よしならそこを頼む!」
「任せて下さい!」
「レミリアさん、これお願い!」
「うん、こっちは終わってる奴です」
「ありがと!」
サブ的に必要な物は昨日プラムが済ませてくれてるから、今は肉に対する仕込みを急ピッチで進行中。つまり店内はまだ仕込みの段階。昼は焼肉の様な単純なものからスタートして、味を染み込ませる系のものは夜に出す予定だ。
「……こっちは、完璧」
「おっ、よし終わったか!」
「……盛り付け、手伝う」
「なら切りまくるから頼むぜ!」
ダギルさんが肉を捌き、それをカミラが皿に並べる。いくら焼肉用だからって無造作に置かれていては意味もなくなってしまうからね。
僕は既に洗い物専門としてその力を発揮している。めちゃくちゃ洗い物流れてくるからね。
「お願いします!」
「オッケー、そこに頼む」
「こっちもよろしく!」
「それもそこに」
これだけ洗い物があると少しは役に立ててるかなと安心出来るよ。しっかりしなきゃね。
「奥さんは?」
「……向こうで、ご飯を」
「そっか、それも必要だよね。飲み物はどうするんだっけ?」
「……それだけ、有料。持参も、アリ」
「成る程、まぁそりゃそうか」
そんなこんなで準備が急ピッチで進められていく。
正直、かなり楽しい。みんなが真剣な表情で何かに打ち込んで、一丸となって何かを成そうとする姿を見てるだけでじわりと心が暖かくなるのを感じる。
何というか、誇らしいよ。
あの子達、僕の家族なんだよ? って、みんなに自慢したくなるよね。
「……ニヤけるのは、早い」
「おっとゴメンゴメン。そうだよな」
洗い物をする背中を後ろからカミラにバシバシされる。うん、これは気合いも入るね。
「……また、後で」
「ん、しっかりな!」
流し目でニヒルに笑うカミラには【しっかり】なんて余計なお世話だったかなと思わせる程の頼もしさと、そっちもね、という彼女なりの返事を感じさせる。
やれやれ、うちの家族は優秀だ。
「おーい、そろそろ時間だぞ! 全員気合い入れろや!」
「「「おー!」」」
おっと、どうやらもうお昼になるらしい。まずは昼分が無くなるまで営業して一旦閉める、そしてまた夜にという流れだ。
ダギルさん主催のイベント、その昼の部が幕を開ける。