第103話 久しぶりの感覚
「……今日は、別々」
「だね、こっちは任せて。二人もしっかりね」
「カミラちゃんと二人で頑張るね!」
「店の前までは送るから、そこからは……頼むよ?」
「……了解」
あっという間にイベント前日。ひとまずいつも通りに全員で家を出て、まずはダギルさんの店に寄っていく。それ程遠い訳じゃないからね。
「お、オメーらか! 今日はよろしくな!」
「……よ、よろしくお願いします」
「荷物がこんなになっちまっててよ、早速困ってたんだ」
「……了解。万事、任せて」
「よし、それじゃダギルさんの所は頼んだよ。僕らは仕事に行ってくる」
「いってらっしゃい!」
「……そっちも、よろしく」
「こっちは任せて下さい!」
ダギルさんの店を後にして、久しぶりに二人で働く為に店を目指す。何だか……これはこれで懐かしい感じがするね。
「ご、ご主人様……」
「どうしたの?」
「そ、その……」
僕の服の裾を掴んで、ツンツンと軽く引っ張るレミリア。俯いてるけど、上目で僕の方を見つめている。あ、これ甘えてるやつだ。
「ほら。手、繋ごっか」
「良いんですか!?」
パタパタと尻尾を振って耳をピンと尖らせて。僕の差し出した手に、恐る恐る自身の手を重ねるレミリア。重ねられた手を、僕はしっかり握りしめた。
「こうやって二人で店を目指すの久しぶりだからさ、ちょっと懐かしい気分になるよね」
「ご主人様も? 私もそれが凄く懐かしくて、ちょっと嬉しくなっちゃいまして……それで……」
「ふふ、たまには良いよね。こういうのも」
「はい!」
二人で手を繋いで店を目指す出勤時間。こんな時間さえも、レミリアが居てくれると暖かい。嬉しい限りだ。
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「いらっしゃいませ、順番にお待ちいただければ順次お声かけさせて頂きます!」
二人で今のお客様の量を何とかしようとすると、やはりそこそこに大変な状況になってしまう。分かってはいたけど、カミラの仕事が本当に偉大だよね。ギリギリ補充は間に合っても、不備には届かないし、最低限の清掃しか出来ない。こりゃ大変だ。
「ここ代わります!」
「助かるよ、そしたら診察に戻るね」
二人で協力しながらバタバタと仕事をこなしていると、時間はあっという間に過ぎてしまう。気がつけばすっかり閉店の時間。レミリアが店の入り口を閉めて来てくれた。
「あー、今日は疲れたなぁ。お疲れ様、レミリア」
「大変でしたね、でも楽しかったです!」
「そうだね、レミリアが居てくれたから僕も楽しかったよ」
「あぅぅ、そんな……あ、ありがとうございます。ご主人様……」
頭をよしよしと撫でながら、今日の疲れを二人で共有する。仕事中はテキパキと動いてくれてたレミリアも、今は僕に抱きついて尻尾をパタパタさせている。仕事モードだとレミリアはカッコいいんだけど、終わると途端に可愛いよね。……でも、今はあまりのんびりもしてられないからね。
少し休んだら、出発だ。
「さて、ダギルさんの所に寄って帰ろうか」
「はい!」