第1話 いらっしゃいませ。
「いらっしゃいませ、順次お声がけいたしますのでお待ち下さい!」
元気のいいナース少女に促されるまま椅子に座る。少女がいくら元気でも私のお腹はちっとも元気にならない。毎日毎日悩まされて本当に嫌になる。
やれ人攫い、やれ殺しだ泥棒だ。どうしてもそんな大きな出来事に目が行きがちな世の中では、こんな悩み誰に打ち明ければいいのだろう。そう、悶々としたものを抱えながら日々を過ごしていた。
ある日友人とバッタリ街中であった時、とてもハツラツとした表情をしていて驚いたのを今でも覚えている。あいつは私と同じ悩みを抱えて日々を鬱々と過ごしていた筈だ。
なのにどうして、その謎はすぐに氷解する。
『街の片隅の、とある病院にいけば解決してくれる』
あいつは私にそう教えてくれた。病院は数あれど、アレらは全て体調を良くする為のものであって私の悩みにはあっていない。だから病院にいっても意味がない。そう、思い込んでいた。
『あそこは属性魔法の治療じゃなくて特異魔法の病院なんだ。だから……治すのは無理かな』
言っている意味が分からなかった。少なくとも謎は解けたが次の謎が生まれた。治らないのであれば何故そこへ行ったのかと。
『うーん、治すというか、壊して貰ったね』
そんな病院があり得るのだろうか。いや、段々とあいつが言っていた言葉の意味が理解出来てきた。するとふとした瞬間に成る程と、ストンと私の中で納得が出来た。
「次お待ちのお客様、お待たせしました!」
故に私はここにいる。促されるままに待ち、そして診察室へ通される。
「こんにちは、初めまして」
「……どうも」
「では少し失礼します」
ドクターは私の手を取ると、すぐに手を離した。
「今まで大変でしたね、また困ったらいつでも来てください」
「お疲れ様でしたー!」
そんな馬鹿な、ダマされた。すぐにそう思った。本当に何もしないまま診察室から支払いの場へと誘導される。こんな内容に支払う義務なんてあるのだろうか。いやない。断じてないだろう。私は意を決してクレームを出す事にした。
「初回の方ですね! ではお支払いの前に向かいのスイートルームへお進み下さい!」
だがそんな私の決意を知ってか知らでかナースは別の場へと誘導する、そして訳も分からないまま私は廊下を歩かされた。そこにはいくつものスイートルームとノーマルルームとセルフルームと書かれた小部屋が用意されており、どうやら支払った料金別に入れる部屋が違う様だ。
私はスイートルームに入り、そして出てきた。
また来週……絶対来よう。
必ず、スイートルーム指定で支払いをするんだ。