第三十一話 私の外見
ブックマークや評価、感想をありがとうございます。
今回は、前話の裏話。
夕夏ちゃん視点のお話です。
それでは、どうぞ!
リド姉……さん(?)と出会ったその日の夜、私は中々猫が捕まらないという報告を受けて少しそわそわしてしまったものの、結局ララとリリが二匹とも捕まえてくれたらしい。リリが満面の笑顔で、『今日は二匹ですねっ』と告げてくれて、とても嬉しかった記憶がある。そう、とても嬉しくて、幸せな眠りに就いたのだ。
翌日、私は朝食をいただいて、文字の勉強をしようと本に手をかけていた。けれど……。
「失礼します。ユーカお嬢様」
「「失礼します」」
なぜか、この部屋にメアリーやララ、リリが来て、どんどん箱を積み上げていった。何が入っているのかはもちろん気になるけれど、なぜこんなことになっているのかの方がもっと気になる。
「(メアリー、これはいったい……?)」
困惑して尋ねてみると、メアリーはいつもの微笑みを浮かべて優しく答える。
「これから、ユーカお嬢様に似合うものを見ていこうということになりましたので、今は、そのためのドレスや小物、アクセサリーを運び込んでいます」
(なるほど、これは全部、ドレスや小物やアクセサリー…………って、多いよねっ、多すぎるよねっ!?)
心の中で盛大に突っ込む私は、どんどん積み上がるそれらに戦く。
(まさか、今日一日で全部見るとか、言わない、よね?)
そうであってほしいと真剣に祈っていると、どうやら全てを運び終えたらしく、メアリーが報告に向かう。
「一緒に可愛いのを見ましょうねっ」
「きっと楽しいです」
リリとララにそれぞれ言われて、私はうなずくことしかできなかった。そうして、しばらくすると、なぜか、リド姉さんがメアリーを伴ってやってきた。
(何か忘れ物でもしたとか?)
ここにリド姉さんが居る理由が分からず、そんなことを一瞬考えた私は、次の瞬間、メアリーからの言葉に驚くこととなる。
「今回は、リドル様と一緒に見ていきましょうね」
(えっ?)
「リドル様は服飾関係の事業を手掛けるお方です。的確なアドバイスがいただけるかと存じます」
ただ、それも、ララの言葉によって氷解したけれど。
そうして始まった、ドレスや小物、アクセサリーの観賞会。リド姉さんに誘われるままに、ドキドキしながら箱の中身を見たのだけれど……。
(ヒラヒラ、フリフリ、子供っぽい……)
どうしてか、そこにあるのは子供っぽいドレスばかり。流石に着るのは恥ずかしい。そして、小物類やアクセサリーもまた、可愛らし過ぎるデザインのものばかり、私が混乱するには十分だった。
(えっ? 何これ……まさか、リド姉さんって、幼女趣味っ!?)
天啓のように閃いた私は、内心、大きなショックを受けたまま、リド姉さんからジリジリと距離を取り、ベッドの後ろにしゃがみ込んだ。もちろん、頭は出して、じっと見つめて警戒することは忘れない。
私が警戒したことにすぐに気がついたメアリー達は、なぜかオロオロとするばかり。いくつか声はかけられるものの、それに応じるわけにもいかない。
「ほ、ほらっ、警戒しないで、ね?」
(警戒しないわけないじゃない)
困ったように眉を寄せて、優しく諭すように言葉をかけるリド姉さんを、私は全力で警戒する。
「ユーカお嬢様? お気に召しませんでしたか?」
(いや、そういう問題じゃないんだけど……)
「……ユーカお嬢様? 何が、そんなにショックだったんですか?」
(……分からないの?)
どうやら、なぜ私がショックを受けたのか、全く分かっていないらしいことに気づいて、私はとりあえず視線を逸らす。
「ユーカお嬢様っ?」
心配そうな声音で問いかけるリリの視線が痛い。
「(……リド姉さんは、幼女趣味じゃない?)」
ようやく口を開いた私は、そうではなさそうだなと思いながらも、念のための確認をしておくことにする。
「い、いえ、さすがにそれはないと存じますが……」
予想外のことを聞かれたといった様子のメアリーに、私は少しだけホッとする。そうして、リド姉さんとメアリー達のやり取りを聞いているうちに、一つの可能性に気づいた。
「(私の年齢で、このドレスとか小物とかはおかしいよね?)」
「あの? 何もおかしくはないと存じますが……?」
意味が分からないといった様子のメアリーに、私はようやく確信を持って誤解を解くことにする。
「(……私は十八歳なんだけどっ!)」
「「「はっ?」」」
「……今度は、どうしたの?」
案の定、固まった三人に対して、私は一応確認をする。
「(私、やっぱり随分幼く見られてた?)」
「……申し訳ございません。その通りです」
「(……そう)」
ショックじゃないかと聞かれれば、普通にショックだ。昔から身長が低いことで小さな子供に間違えられてきた過去はあるものの、ここまであからさまに間違えられるのは久々だ。
「ねぇ、何の話?」
「十八です」
「はっ?」
「ユーカお嬢様の年齢は、十八だそうです」
「…………嘘だろ?」
ふいに男に戻ったリド姉さんを見ながら、あぁ、この人も勘違いしていたのだと納得する。なお、何歳に間違えていたのかは聞きたくない。
「……つまりは、ドレスや小物類が明らかに子供向けなのを見て、幼女趣味だと誤解した?」
「はい」
「両翼ちゃんは、年齢を誤解されていることに気づいてなかった?」
「そのようです」
事実確認をするリド姉さんとメアリー。本人達にその気はないのだろうけれど、今の私には刺激が強い。
「ごめんなさいね。ワタシ、両翼ちゃんのこと、せいぜい十歳くらいの子供だと思ってたのよ」
「(……メアリー達も?)」
「はい、わたくし達も同じです」
十歳くらいというのは、小学生くらいという意味だ。顔立ちなんかで、ようやく中学生くらいに間違われる状態まで回復(?)していたのに、ここに来てそこまで年齢を下げられるとは思わなかった私は、とにかく枕を抱き締める。
そして、何やら気まずげに視線を逸らすリリを見る限り、少なくともリリは私の年齢をもっと低く見積もっていたのだろうということが分かった。もちろん、リド姉さんやメアリー、ララも怪しいけれど、追求してダメージを負うのは私なので、これ以上は何も言うつもりはない。
何も言えず、じっとしていると、そのうち、リド姉さんがもう一度、謝罪という心を抉る行為をした後、退室する。メアリー達もどうやらドレス類を運び出すために動き出していた。
(私は、十八だもん)
そうして、年相応に見られないというコンプレックスを盛大につつかれた私は、ふてくされるのだった。
次回、またリドル視点に戻ります。
お楽しみにっ。
それでは、また!




