第二十二話 幸せな眠り
ブックマークや評価、感想をありがとうございます。
今回は主人公視点。
猫として訪問することになったジークフリートがどうなるか、楽しんでください。
それでは、どうぞ!
目が覚めて、一番に確認したのは体の異常。けれど、どこにもおかしな様子はなく、何もされなかったのだという事実に心底安堵する。
(大丈夫、だった?)
覚悟を決めたのに気絶してしまうなんて情けないけれど、あれはさすがに予想外だったのだから仕方ない。それよりも、私は考えなきゃいけない。
(何が、目的だったんだろう?)
じっとにらめっこをした後、抱きつかれた。それだけの状況で何らかの目的を探ろうという方が無謀なのだろうけれど、何も考えないわけにもいかない。夕食やお風呂……は鎖のせいで無理だから、浄化魔法とやらをしてもらった。そうして、一心地ついた私は、あまり使っていなかった椅子に腰かけて考え込む。
(うーん、また、来るのかなぁ?)
しばらくウンウン考え込んでいると、ふいに、扉がノックされる。ノックがあるということは、専属侍女の誰かだろう。
「(どうぞ)」
一応、危害は加えてこないらしいということが分かってきた私は、ひとまず落ち着いて対応することにする。
「失礼します」
入ってきたのは、無表情のララさん。その手には、籠が一つと、袋が一つ、それぞれ抱えられている。
(何だろう?)
専属侍女である彼女達が、食事以外のものをこの部屋に持ってくることは稀だ。記憶にある限りでは、リリさんが持ってきた鞭と、メアリーやララさんに持ってきてもらった本くらいしかない。
そうして、ララさんはまず、袋の中身から取り出す。
(……だから、何で鞭!?)
袋の中から出てきたのは、リリさん、メアリーとそれぞれが見せてきたものと同じ鞭。
(まさかとは思うけれど、全員が常備してるわけではない、よね?)
恐ろしい想像をしてしまいゾッとする私を置いて、今度は袋や籠を一度床に置いて、籠の中から何かを取り出す。それは、翡翠色をした生き物らしかった。
(何の生き物だろう?)
随分と長い毛をした生き物を、私はじっと注視する。すると、その視線を感じたのか、生き物はクルリと私の方を振り向く。
(ふわわっ、あれは、世間で良く言われるブサネコっ!)
そこには潰れたような顔をした、愛らしい猫が居た。毛の色が翡翠色だったりするのは、きっと異世界ならではか、私が翡翠色の猫を知らないかだけだろう。
(可愛いっ、触ってみたいなぁ)
灰色の猫の時は、ララさんに止められてしまった覚えのある私は、今回は思う存分触らせてもらえないだろうかと期待する。そして、二つのものを取り出したララさんは、ようやく口を開く。
「どちらになさいますか?」
「(何がっ!?)」
それは、何と何を比べて言っているのだろう?
(まさか、ララさんと猫のどちらを鞭で叩くのかとかいう馬鹿げた話じゃないよね? よねっ?)
今までの言動からして、十分にあり得そうな想像をしてしまった私は、それだけは勘弁してほしいと頭を抱えたい気分になる。
「鞭で私を叩くか、猫を愛でるかの選択です」
ただ、現実は思っていたほど残酷ではなかった。……いや、ララさんを鞭で叩く選択肢があること自体穏やかではないものの、猫を愛でるという選択肢があるだけマシだ。
「(猫の方でお願いしますっ)」
即答をした私を見て、ララさんは猫を私の方へと連れてくる。とてもブサ可愛いにゃんこだ。
「……ナーゴ」
ちょこんと膝の上に乗せてもらった猫を前に、私は今までの恐怖も忘れてメロメロだ。
「(かっ、可愛いっ!)」
私が抱き上げると、ビクッと体を震わせた猫は、それでも大人しく私にされるがままだ。
「(瞳は、よく見えないけどサファイアみたいな色、かな? 長毛種の猫なんて、画面越しにしか見たことないよっ)」
最上の癒しを手に入れた私は、とにかくそのサラッサラな毛並みを堪能する。
(あぁっ、もうっ、可愛いっ)
撫でれば気持ち良さそうに目を閉じる猫を見て、私は少しばかり暴走する。ギュウゥッと抱き締めて、その小さい体を堪能すると、猫は堪らずといった具合に悲鳴を上げる。
「(あっ、ごめんなさい)」
しまった、警戒されると思ったものの、どうやら猫は私が謝ったことに気づいてくれたらしく、膝の上に置いてあげると少しふらついたものの、真っ直ぐに私の方を見つめ返してくれる。
(どうしよう。胸のトキメキが抑えられないっ)
つぶらな瞳に、完全に心を射抜かれた私は、無言で猫を抱え上げてベッドへと向かう。
「ニャッ!?」
そうすると、なぜか猫は慌てたように私とベッドを交互に見て下りようと暴れたものの、私は放すつもりなんて毛頭ない。
「(可愛い猫ちゃん。一緒に寝よう?)」
声は出ていないものの、言葉にしてしまえばそれはとても良い考えに思えた。猫を連れてきたララさんは、まだ仕事が残っているのか、今はもう退出してしまっている。少しくらい、長く猫を愛でてもバチは当たらないはずだ。
「ニャッ、ニャッ」
ギュッと抱き込んで布団を被った私は、暴れる猫をなだめるように撫で続ける。
「(大丈夫、大丈夫。ちょっと一緒に寝るだけだからね)」
そう、そうすればきっと、今日は悪夢を見ずにすむ。グッスリと眠れるはずだ。
「……ナーゴ」
やがて、猫は観念したのか、暴れる動きを止めて私の腕の中で大人しくなる。
「(ふふっ、おやすみ。猫ちゃん)」
そうして私は、久しぶりに幸せな眠りに落ちるのだった。
今回は、きっと、突っ込みどころが満載です。
ジャンジャン突っ込んでみてください(笑)
それでは、また!




