3 スキル『変化-へんか』
俺は従者から庭師になってお嬢様の私邸で毎日庭を手入れをしている。
俺と一緒に庭師をしているスン爺は66歳の爺さんだ。
元々は兵士で、戦いの時に片足をケガし今は庭師をしている、なんと執事のセバスチャンさんの幼馴染みらしい。
俺も色々と世話になったから、多分いい人だと思う。
「おーい、颯太。悪いがそこの高い木の枝、綺麗に整いてくれるか」
「あいよー、スン爺」
俺は庭師の小屋から枝切りバサミと脚立を持ってきた。
しかしこの枝切りバサミ、この世界だとこんな古いやつしかないんだな。
俺はそれを持ちながらテレビショッピングに出てた3mぐらいまで切れる電動高枝切りチェンソーがあれば簡単に出来るのに、と考えていた。
するといきなり古い枝切りバサミが変化した。
スン爺もそれを見て呆然としている。
えーと、これはあれか俺のスキル『変化』か。
「おい、颯太それなんだ?」
「ああ、これは電動高枝切りチェンソーだ」
「それは枝切りバサミと全然違うぞ、それにどこにいった枝切りバサミ」
「これに変化した」
「はあ?なんだそれ」
「ええと、この手元にスイッチがあるんだ、スン爺ちょっと離れてくれ」
俺はスン爺が離れてからスイッチを入れる。
ブインンンンンンンンンンーーーーー
「おい、颯太、うるせえぞ」
そのまま木の枝を綺麗に整いて行く。
「な、こうやるんだ」
あ、スン爺が呆然としている。
「お前・・・・・」
「多分俺のスキルだ」
「スキルか、凄いな」
「スン爺、やって見るか?」
「おう、貸してこれ」
スン爺にやり方を教える。
ブインンンンンンンンンンーーーーー
「おーーー、早いぞ、簡単だー」
「スン爺、調子にのんなよー」
バキ
スン爺が幹を半分ほどに切ってしまった。
「ほら、幹切ったろー」
「スン!?」
気が付くと後ろに執事のセバスチャンさんがいた。
「あ、セバか、ワリイー調子にのった」
「お前は相変わらず調子にのり過ぎる」
セバスチャンさん、それでいいのか。
「それより颯太、それは何でしょう」
「え、俺じゃないですよ」
「いや、そうじゃなくて、それは何ですか?」
セバスチャンさんが電動高枝切りチェンソーを指している。
「ああ、多分俺のスキル「変化」で枝切りバサミから電動高枝切りチェンソーに変ったんだと思います」
「電動高枝切りチェンソーとは何ですか?」
「俺の世界にそういう機械があるんです」
セバスチャンさんがじっと電動高枝切りチェンソーを見ている。
「それが颯太のスキルなんですね」
「ええ、多分」
「他にも出来ますか?」
「どうでしょう、それこそ初めてですから」
「例えばこれはどうでしょう?」
セバスチャンさんがマッチを出して来た。
俺はマッチを手にして100円ライターを考える。
「これでどうでしょう」
握っていたマッチが100円ライターに変化する。
「これですか?」
俺は黙って火を付けた。
シュボ
「おー、なるほど。それが変化ですか」
また、セバスチャンさんが考える。
「これはどうでしょう」
ナイフを出してきた。
「あーそれは無理ですね」
「何故ですか?」
「ナイフはナイフです、俺の世界でもそのままです」
どうやらガッカリしたみたいだ。
「そうそう、颯太は侍じゃないですか、その刀でしたか、それに変化しませんか?」
「刀ですか、まあ一応やってみますが」
ナイフを預かってアニメに出て来た名刀正宗を考える。
んー変化しないかあー。
あ、光った。
今までと違って時間がかかったが刀に変化した。
「これが刀です」
「なるほど、見たこともないですね。こちらお借りしてよろしいでしょうか」
「あ、別に俺の物じゃないんでいいですよ」
「はい、それでは」
セバスチャンさんが電動高枝切りチェンソーと100円ライター、名刀正宗を持って行った。
「颯太、この後芝刈りするんだがいいものあるか?」
「スン爺、普通はどうやってんの」
「鎌だな」
スン爺が150cmほどの芝刈り鎌を持ってきた。
「スン爺、それ貸して」
テレビショッピングで見た一番高い電動芝刈り機を想像する。
「よし、スン爺これだ」
「おーーーー、でどうやるんだこれ?」
「こうやるんだよ、スン爺」
バリバリバリバリバリバリ
綺麗に芝が刈られていく。
「おーー、いいぞ颯太」
▽ ▽ ▽ ▽
「お嬢様、こちらが颯太が変化させた物です」
セバスチャンがシルフィーに渡した。
「颯太殿のスキルなのか?」
「はい、実際に目の前で変化しました」
シルフィーが電動高枝切りチェンソーと100円ライター、名刀正宗を見つめる。
「それでは伝説の聖剣や魔剣でもナイフから変化するのではないか?」
「それは颯太に聞いて見ないとわかりませんが」
「そうか、しかしこれ程の能力があって庭師にして置くのはどうだ?」
「いえ、相変わらず本人はのほほんと作業しております」
セバスチャンが部屋の窓から芝を刈っている颯太を見る。
それを見てシルフィーも見た。
「セバスよ、あれは?」
「多分それも変化させたのでしょう?」
シルフィーは楽しそうに作業をしている颯太を見つめる。
やはり只者ではなかった、お嫁さんになりたい。
あの能力があれば一流の錬金術師と同等、いやそれ以上ではないか。
問題は戦闘能力ではない、戦闘する気合の無ささだ。
「お嬢様、どうかなされましたか?」
先ずは錬金術師にさせるか、それなら・・・
「お嬢様?お嬢様?」
「セバス、颯太殿を錬金術師にするぞ」
「・・・了解いたしました」
シルフィーウキウキしながらセバスチャンに伝える。
お嬢様、颯太は面倒な事はやりませんよ。
しかしセバスチャンはお嬢様に伝えることは出来なかった。
自分の二人称の表現が出来ない為、三話から主人公は基本的に一人称に直します。
すいません、勉強不足です。