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2 白薔薇の乙女騎士団

「颯太、ここが私の騎士団だ」


ルーゲルダード公爵の第7王女、ヤストリア帝国騎士であるシルフィー様の従者となった颯太は、王女様に連れられて騎士団の屋敷に向かった。


「シルフィー様、ここは」


「うん、ここは父上の領地でな。そしてこの屋敷は父上から貰った屋敷だ」


大きな建物の前で数人の女性達が剣で練習している。


「シルフィー様、この女性達は」


「ここにいるのが私の白薔薇の乙女騎士団の団員だ、みな侯爵や伯爵、子爵、男爵の娘ばかりだ」


白薔薇の乙女騎士団か・・・、みんな女性ばかりだ、乙女だしな。


シルフィー様が近づいて来るのを気付いて団員の動きが止まる。


「シルフィー団長に礼!」


「「「「「は!」」」」」


「よい、そのまま続けよ」


「「「「「は!」」」」」


団員のうちの1人がシルフィー様に近づいて行く。


「アル、セバスはいるか」


「は!屋敷の中にいるかと」


「そうか。アル、この者は今度私の従者とした颯太だ」


颯太は黙って礼をする。


この赤毛の女性も美人だなあ、オッパイも大きいぞ。


アルは颯太を見ていきなり寒気を感じた、どう見てもこの国の者には見えないためか。


「団長、この者は」


「そうだ、異世界の転移者だ」


「それでは・・」


「いや、勇者ではない。勇者であれば私の従者になる訳などなかろう。この者は巻き添いだ」


「では一般人ですか」


「いや、職業は侍、補助魔法も使える、ステータスも300前後を持ってる」


「騎士と同じ様なレベルですね、ただ侍とは何でしょうか」


「聞いた限りでは刀と言う剣で戦う戦士らしい」

「刀ですか、聞いたことないですね」


「まあ、おいおい聞くとする」


シルフィーとアルが話してる間、颯太はぼんやりと団員達を見ていた。


15歳位から25歳位までの女性が5人、みんな美人ばかりだ、俺が勇者だったらなー、ハーレム作るのに。


颯太は身長が175cm、中肉中背で髪の毛は薄い栗毛色、当然カラーリングしている。


結構なタレ目で、またそれが可愛いと言う彼女もいたが、行動や考え方が軽薄なため、すぐに振られる。


見た目と違って童貞であった。


可愛い子はみんな嫁、アニメの見すぎのせいであろう。


「シルフィードお嬢様」


「おお、セバス。丁度良かった」


屋敷から出て、シルフィーがいる場所に執事然とした初老の男性が近づいて来た。


「セバスよ、今日からこの男を私の従者とした、よろしく頼むぞ」


颯太は改めてセバスに対して礼をする。


「お嬢様、私は何かしてはいけない事をやってしまったのでしょうか?」


「うん?別にないぞ」


「ではお嬢様、何故にこの者を従者に」


セバスは失意と絶望の顔をしている。


「違うぞ、セバスチャン。お前の執事としての力は完璧だ、ただ単にこの者は異世界の転移者だからだ」


「ああ、お嬢様、ありがとうございます。このセバス、これからもお嬢様の執事として死ぬまでまっとういたします」


うわあー、なんか怖いんですけど。


颯太はセバスチャンの暗黒の目が見えていた、単なる妄執だけど。


「それではお嬢様、私はこの者に何をしたら宜しいのでしょうか」


「そうだな、颯太には従者としての考え方やこの世界について教えてやってくれ」


「わかりました、では颯太と言いましたか、私に付いて来て下さい」


「わ、わかりました」


颯太はセバスに連れられて屋敷の中に入って行った。


▽  ▽  ▽  ▽


「では颯太殿、従者について貴殿はどう思いますか」


颯太は椅子に座り、セバスチャンから教えてもらっている。


「いえ、わかりません」


「なるほど、ではお教えいたします。お嬢様の為に死ぬのです」


「いや、死ぬ気はありませんが」


「では、辞めて下さい」


「わかりました、失礼します」


颯太は立って帰ろうとする、まあ帰る場所も無いのだが。


「ちょっと待ちなさい」


「はあ」


「いいから座りなさい、単なる例え話です」


「そうなんですか」


「そうです、まったく若者はすぐに辞めようとする」


どこの世界でも年寄りは面倒な事ばかり言うな、と颯太は考えている。


「では、従者とはですが。単純に言えば主人のともをする者です。執事や使用人も同じような者です」


「なるほど、わかりました」


「本当にわかったんですか?」

「はい」


「では、あなたの主人は誰ですか」


「シルフィー様です」


「そうです、ではお嬢様の職業は?」


「帝国騎士ですね」


「そうです、わかってるじゃないですか。では帝国騎士とはなんですか?」


「わかりません」


「なるほど、そこからですか。帝国騎士とはヤストリア帝国に所属し、敵に対して騎乗して戦う者です」


「わかりました」


「では、改めてお聞きします。帝国騎士に対して従者は何をしますか?」


「わかりません」


「何故です、帝国騎士は戦う者ですよ、そして貴方は従者です」


「えーと、一緒に戦うのかな?」


「そうです、その通りです」


「やっぱ、辞めます」


「おい」


あ、セバスがツッコミを。


「颯太殿、貴方は異世界の転移者なんですから戦えるでしょう」


「いえ、戦った事ないですよ」


「そんな事ないでしょう、相手とケンカしたとかぐらいはあるでしょう」


「いえ、俺はフラフラ生きてきたんで、ケンカする相手もいませんでした」


「えーと、どんな世界だったんですか?」


颯太はセバスに逆に聞かされた。


「まあ、平和でしたよ。ただ暴力はありましたね、ケンカも見た事はあります」


「では」


「だけど俺は関係なかったんですよ」


「・・・わかりました、ちょっと休憩します」


セバスは疲れ切ったように部屋から出ていった。


「そうだよなー、俺、戦えないよなー、だから勇者じゃないのか」


颯太はぼんやりと天井を見ている。


従者辞めよう、帝国騎士って戦うんだから、従者は俺には無理だわ。


シルフィー様は美人だけど、死にたくないしな。


颯太は従者を辞める事を決めた。


▽  ▽  ▽  ▽


「お嬢様、お話しがあります」


「なんだ、セバス」


シルフィーは騎士団達と練習していた。


「颯太殿の事ですが、彼は戦った事がないそうです、そして戦う事をする気もないみたいです」


「セバスよ、冗談だろう。彼は異世界の転移者だぞ、勇者ではないが侍だぞ」


「いえ、本人に確認しました」


「それではあれか、颯太殿は単なる役立たずか」


「はい」


「だからと言って私はルーゲルダード公爵の第7王女だぞ、従者にしたのに役立たずだから首にした、とも出来るか」


「はい、お嬢様、ですから執事をさせるしかないかと」


「颯太殿を執事にか、それこそ公爵家の執事など出来るか?」


「出来ませんな。ではそうですな、庭師ぐらいなら可能かと」


「・・・わかった、そうしてくれ」


「はい、お嬢様」


シルフィーはため息をついた、颯太殿を従者にしたのは私だ。


確かに帝王から一任されたのだが、それは多分勇者の偽物を召喚した事をなかった事にしたいのだろう。


だが殺せなかった。


何故だろう、本来はサッサと処分できる、自分は帝国騎士であり実際した事もある。


あの颯太殿は他の召喚された勇者と比べるとやる気に満ちていた。


勇者達は茫然自失とし泣いたり俯いていた。


その中で毅然とした態度をしていた三島殿と微笑みながら見ていた颯太殿が印象的だった。


三島殿は見た感じオーガの様だ、魔獣であるゴリラにも似ている。


颯太殿は中肉中背だが、結構細マッチョで栗毛の髪とたれ目、異世界で見た事のないイケメンだった。


だからと言って颯太殿の対応が私になった事を喜んだ訳ではない、絶対にだ・・・・・・・・たぶん。


確かに私は25歳、姉や妹達は嫁いでいる。


公爵家の王女がその年で結婚出来ないとは性格に問題ありとか百合だ、とか言われていたがそんな事はない。


父上は行かず後家になって最悪だとか、母上は白薔薇の乙女騎士団など勝手に作って百合王国を作ってお姉さまをやってるとか、兄上達が私のせいで乙女騎士団の団員が結婚出来ず、行かず後家騎士団になっているとか、陰で言っている。


私はそんな事はしていない、可愛い子をスカウトしただけだ。


そう、私は颯太殿を先ずは従者にし、そして侍として活躍してもらい、そして私と共に英雄になってもらい、そして、わ、私をお嫁さんにしてもらう予定だったのだ。


はー、庭師かー。


憂いでいる団長を見ながら、素敵なお姉さまが憂いでいるのもたまらないとがっついている団員達が妄想していた。


▽  ▽  ▽  ▽


「セバスチャンさん、俺、従者辞めます」


「了解しました」


颯太が辞める事を伝えると、何故かあっさりと了解された。


「ですがそのままでは生きていくことも出来ないのでは?」


セバスチャンに言われると、流石に出来ますとは言えなかった。


颯太が黙っていると、彼から提案された。


「このお嬢様の私邸で庭師をやりませんか?」


「庭師ですか?」


「はい、それなら食事も出ますし、颯太殿1人で作業をするわけでもありません」


「そうですか、じゃあやります」


「あの、私が言うのもなんですが、決断が早いと言うか、軽いと言うか」


「すいません、俺、軽いんですよ」


「そうですね、はい。では庭師用の小屋があります、そこで生活して頂きます。宜しいですか?」


「はい」


「では案内します、それと今後はお嬢様と呼んで下さい、シルフィー様はダメです」


「わかりません」


「では、こちらに」


颯太はセバスチャンに連れられて屋敷の裏側に行くのであった。

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