今日の夢
すごく小さな隙間から奥に進むとガラクタの山がある。
僕はそこで、たまに彼女に会う。
会えば気兼ねなくなんでも話すのだが、僕は彼女の名前を知らない。
歳や趣味、いじめにあっていた過去さえ知っているのに名前は知らないのだ。
興味が無いわけではないしできれば知りたいと思うのだが、今更「なまえはなんですか?」なんて言うのが気恥しいのだ。
それに僕は彼女のことが好きみたいだ。
彼女に会いたいがために毎日ガラクタの山に行っている。
そこで彼女がいれば心も体もウソのように軽くなり、またいなければ心に言いようのないイライラが居座り続けるのだ。
ある日いつものようにあの場所に行ったが、彼女はいなかった。
僕は言いようの無いイライラに襲われながらも「仕方ないか」と思って帰った。
しかし、次の日もまたあくる日も彼女はあのガラクタの山に来なかった。
確かに彼女は毎日来るわけではなかったが、三日続けて来ないことは一度だってなかった。
どうしたのだろうと思いながら僕は、今までにないほど焦っていた。
おばあちゃんの死を聞いた時もここまで焦りはしなかっただろう。
それからのことはあまり覚えていない。
たぶん、無我夢中で町中を探し回っていたと思う。
気が付くと暖かな温もりが僕を包んでいた。
「なーんだ、夢か」