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なまぐさ坊主の怪奇録  作者: 独楽
這い回る女
8/8

オチ

 その日、天木流はいつものように寺を訪れた。

 挨拶もなしに勝手に家に上がり込んで真嵩まさたかの部屋の戸を開くと、


「……南無阿弥陀仏……」


 と、真嵩が3DSを前にお経を唱えていた。


「……なにしてんの?」


 訊いてみた。

 流に気が付いた真嵩は顔を上げ、


「ランポス、殺しちまった」

「……は?」

「だから、ランポスだよ。モンハンの」


 真嵩のいうモンハンとは、いまちびっ子に人気のハンティングアクションゲームの略称で、ランポスとはそこに登場する、いわば雑魚モンスターだ。

 流も当然それは知っていて――流が訊いているのはつまり、なんで3DSに向かって手を合わせてお経を唱えているのか、ということなのだが。


「0と1の世界でも殺生は良くないだろ? だから何も殺さないようレウス捕獲ミッションに挑んでたんだが……間違ってランポス殺しちゃったんだ……」

「はあ……」

「いや、ちげーんだよ。殺すつもりなんてなかったんだ。本当だ。逆鱗が欲しかったから尻尾狙って攻撃してたら、あっちから飛びかかってきたんだ」

「はあ……」

「……そしたらあいつ、真っ二つに……エフェクトも残さず消えちまった……」

「はあ……」

「殺しちまったんだ……俺が、あいつを殺しちまったんだよ……」

「で、悲しみを覚えてお経を唱えていた、と?」

「……うん」


 流は思った。

 ……なんでこいつモンハン買ったんだろう?


「それより、お金の話していい?」


 と、流は要件を促す。


「今回の除霊で使った小道具……吊るし紐、フラッシュペーパー、ウィッグ10個にマネキンの首……もろもろしめて十五万五千円。はい、これ請求書」

「え……ちょ、高くねーか? お前、ボッてんだろ」

「工作費と人件費も込みだからね。あの細井ってやつから五十万受け取るんでしょ?」

「だとしても高すぎる。客を釣ってきたいのりならともかく、てめーは特に何もしてねえ。十万だ。これ以上は払えねえ」


 真嵩は腕を組んでそっぽを向いた。


「だいたいよ、幽霊の生首作って、振り回して、ちょっと演技しただけで十万でも破格過ぎんだろ。それで文句垂れるとか、ふざけんな。商売なめてんのか?」

「そのぶん仕事持ってきてるでしょ? ギブ・アンド・テイクってやつだよ。実は次の仕事もあるんだけどなー? 払わないんだったらその仕事もなしだねぇ……」

「……いのりも大概だが、テメ―も金の亡者だな」


 真嵩は舌打ちをし、しぶしぶといった様子で、請求書を懐に入れた。

 流は満足げな笑みを浮かべ、


「そういえば、いのりちゃんは? まだあいつと付き合ってんの?」


 ふと思いついたように訊いた。


「しらね。けど、居心地がいいからしばらくは付き合うとか言ってたな」

「ふーん……いのりちゃんにしちゃあ、めずらしいね?」

「まあ、あの細井ってやつ、良い奴そうだったからな。まったく、いのりに憑かれるなんてあいつも大変だ――……ところで、さっき言ってた仕事ってなんだよ?」

「あ、それもう訊いちゃう?」

「勿体ぶんな、さっさと言え」


 流は持ってきたカバンから書類を取り出す。


「えっと、次の仕事はね――」



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