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異世界の闇軍師

番外編 プロジェクト・スリングショット

作者: まさな

『異世界の闇軍師』の番外編です。本編を読み終えた人向けです。


約6000字で、一話分です。続きはありません。


2016/10/28 若干修正。

 天空の城の地下二階。

 そこには中央司令室が存在する。

 セキュリティレベルは最高のレベル5、たとえ一国の王であろうとも許可無く立ち入ることはできないエリアである。

 防衛システムの一つ、レベル99のオリハルコン・ゴーレムは、ミスリルの剣でも傷が付かず、炎属性なら伝説級の呪文攻撃すら無効化する。

 壁にも二十五センチ厚のオリハルコンが二重にして埋め込まれ、核ミサイルの飽和攻撃を食らってもビクともしない構造となっている。


 その中央司令室の正面の机に両肘を突き、両手の指を口元の前で交差させて座った男が口を開く。


「プロジェクト・スリングショットの進捗状況を報告せよ」


 普段は掛けていない丸いサングラスを掛けている。どこからともなくリズムの良いティンパニーの音が鳴り響き始めた。


「は。現在、ラウルを装備設計責任者、トーマスを技術開発責任者、ピエールを建築総責任者とし、計画の24%ほどが完成しております」


 中央司令室でその男の常に斜め後方に立つ副官、銀髪の男が即座に答えた。


「遅いな」


 微動だにしないが、両肘を突いた男は不満げであった。


「申し訳ありません。装備の方は完成を見ましたが、施設の方は投入できる上位魔術士が二人しかおらず、また動かせるゴーレムも限られるため―――」


「言い訳はいい。どんな犠牲を払っても構わん。スピードを上げろ」


「了解しました。夜間も工事を進め、スピードを上げます」


「ああ、それでいい」


「ただ、気になることが…」


「なんだ?」


「警戒エリアに何者かが侵入した形跡があります。発見はしておりませんが、すでに感づかれたと考える方が妥当でしょう」


「そうか。切り札は全てこちらが擁している。彼らには何もできんよ」


「ですが、探部(検察)や異端審問官が動き出すと面倒な事になります」


「ううむ…では、住民のためのアメニティ施設とだけ、報告しておけ。詳細は話す必要は無い」


「了解しました」



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 


 ロフォール領のティーナの屋敷の執務室では、書類に決裁のサインをするティーナに、リサが報告を入れていた。

 

「何を造っているかまでは分からなかったけど、厳重な警戒だったし、かなりの規模よ」


 リサは時々このようにティーナに情報を上げているが、ティーナが探部に深く関わっているために、盗賊ギルドからは公的な隠密として認識されている。


「そう…ううん、どうして私達に内緒にして進めてるのかしら…」


 サインの手を休めず、ティーナは考える。


「決まってるでしょ。ろくでもない事だからよ」


「うーん…よし! じゃ、本人を問い詰めてみますか」


「それが良いわね。ミオかエリカを連れて行って、嘘発見の呪文を使えば良いわ」


「そこまでしなくても…まあ、ユーイチがとぼけるようなら使ってみるかな」


「ええ」


 ノックがあり、返事を待たずにリックスが執務室に入ってきた。


「お館様、ヴァルディスより手紙が届いております」


「見せて」


 ティーナはすぐにリックスから封筒を受け取り、ペーパーナイフで封印を剥がす。


「ああ、セルン村に新規建築中の施設に関してだそうよ。住民のアメニティ施設……確か快適な施設のことだったわね」


「快適? 具体的にはどう言うモノなの?」


 リサが聞く。


「さあ。これにはどんな施設かは書いてないわ。一枚だけしか入ってないし」


「それじゃ意味無いじゃない」


「そうねえ。じゃ、リックス、私は今からヴァルディス領に行ってくるから、後はお願いね」


「承知しました」


「リサも一緒に行く?」


「いいえ。私はいいわ。何を造ってたか、後で結果だけ聞かせて」


「ええ、分かった」


 ミオと小型高速飛空艇に乗り込んだティーナは手鏡で自分の髪型のチェックを怠らない。

 鼻歌も混じり、どこか嬉しそうだ。


「あ、ミオはセルン村に何か造ってるって話、聞いた?」


「ううん。何も、聞いてない」


「そ。ロフォールにもアメニティ施設を造りたいんだけど、何かアイディアはある?」


「ん…思いつかない。でも、考えとく」


「お願いね」


 一時間後、ヴァルディス領の天空の城にティーナの乗った飛空艇が着陸する。


「これはこれは、ロフォール卿、ようこそ、我が城へ」


 黒ローブの男が両手を広げて笑顔で出迎えしてくるが。わざわざ出迎えている時点で怪しさ全開だ。


「うわ…ちょっと、ユーイチ、セルン村に何を造ってるのか、今すぐ白状しなさい」


 ティーナも顔が険しくなる。


「い、いや、別に何も怪しいモノは作ってないぞ。あれはタダの貯水池だ」


「嘘ね」


「むう」


「ん、あからさまに動揺してる。正直に白状する。今なら罪は軽い」


 ミオも言う。


「いや、別に犯罪をやってるわけじゃ無いぞ…計画の邪魔をしないと言うなら、全貌を教えてやるから」


「ダメよ。計画がどんなモノか分からないと、摘発対象かどうかも分からないじゃない」


「うーん、じゃあ、神殿には内緒ってことで」


「ええ? つまり、破廉恥な施設って訳ね?」


「いや、あれだけでは、そうはならない、はずだ」


「いいから、教えて」


「ふう、温水プールだよ。本当は出来てから、みんなにお披露目したかったんだが」


 ユーイチが答えた。


「プール……ああ、確か夏に泳いで涼む施設だったわね?」


「そうだ。温水プールは水の温度を調節できるから、一年中、泳げるけどな」


「へえ」


「じゃ、それを見に来たんだろう? 案内するよ。まだ完成はしてないけど」


「ええ」


 ティーナが笑顔で頷く。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 それから二週間後、ミオやエリカも温水プールの建築に協力したことで、プロジェクト・スリングショットはあっと言う間に完成を見た。


「今日は楽しかったわ。また遊びに来るわね」


 ティーナがそう言って飛空艇に乗り込む。


「ああ、いつでも歓迎するよ」


 俺も笑顔で手を振ってお見送り。飛空艇が去ってから振り向き、ニヤリと笑う。

 ティーナはプロジェクト・スリングショットをただの温水プールと勘違いしていた。

 チョロインだよ。


「さてと…」


「ユーイチ様」


「おお、来たか。よしよし」


 時間ピッタリにエルとニーナがやってきた。この二人は信用できる。

 水色のお下げの髪のエルと、白色のネコミミのニーナ。


「じゃ、今日は君たち二人だけの貸し切りだ。普段、真面目に働いてくれてる分、ゆっくりくつろいで欲しい」


「ありがとうございます。でも、本当に良いんですか? ベリルとか凄く楽しみにしてて…」


 エルが少し申し訳なさそうに言うが、ベリルなんて今日はさんざん泳いで帰ったから、気にする必要なんてない。

 オープンは九時からの予定にしてたのに、七時からやってきて開けろとうるさかったから、開けてやったけど。


「いいんだ」


「中は広いと聞いてます。貸し切りで無くても私は良いのですが…」


 ニーナも申し訳なさそうに言うが、二人きりじゃないとまずいわけよ。ククク。


「いいんだ!」

 

 力強く言い、俺は二人を更衣室へ案内する。


「じゃ、君たちのサイズに合わせた水着が用意してあるから、どれでも好きなのを選ぶと良い。気に入ったのは全部あげるよ」


「はあ、一つだけで良いんですが」


「ま、好きなのを選び給え。ただし! 選ぶ時間は、そうだな、三十分に限定させてもらう。それまでにどれかは必ず選ぶこと。泳ぐ時間が無くなったら、意味ないからな」


「はい。分かりました」


「じゃ、俺は先にプールで待ってるから」


「はい」


 プールサイドのデッキチェアに寝そべり、レモンスカッシュをストローで優雅に飲む。

 もちろん、地獄耳(ビッグイヤー)千里眼(クラボイエンス)の呪文も使う。


「本当に私達だけでいいのかしら…?」


 エルの声がはっきりと聞こえてきた。


「なんだか他のみんなに悪いですね」


 ニーナも苦笑している。


「あ、これが水着ね。ベリルが言ってたけど、下着と変わらない大きさらしいわ」


 エルが水着の入った箱を見つけて言う。


「うーん、下着ですか。それだと、ちょっと、男の人の前に出るのは抵抗がありますね…」


 ニーナが困った顔を見せる。


「でも、それが当たり前なんだって。ティーナ様もユーイチ様が作った水着で泳ぐって言ってたし」


「そうですか…ユーイチ様はたまに、真顔でしっぽを触らせろと言ってくるので本当に困ります」


 ニーナが顔を赤らめて言う。


「ああ。私はしっぽが無いからよく分からないけど、それってお尻と同じ感覚なの?」


「ええ。むしろお尻より、その…」


「あ、ああ…。うーん、本当に困るようなら、ティーナ様かリサさんに言った方がいいよ」


「ええ、まあ、無理矢理と言うことは無いので」


「そう。まあ、あの御方はお優しいから」


「ええ」


「じゃ、選びましょうか」


「はい」


 エルが箱の蓋を開け、水着を取って、硬直する。


「なっ!」


「ええ?」


 ニーナも水着を取って、唖然とする。


「えっと、エルさん、これ、組み合わせたりするんですか?」


「いえ、私が聞いたのは普通の下着と同じように、上と下だけなんだけど…ええ? これ、紐だよね?」


「ええ。完全に紐ですね。あ、紙が入ってます。説明書ですね」


 ニーナが説明書を見つけた。


「あ、読んでみて」


「はい。この右の図の水着は、名称をマイクロビキニと言う。左の図はスリングショットと言う。どちらも、合法である、これだけですけど」


「合法…それって、一般的じゃないってことじゃ…」


「ええ、そんな気がします…」


 やっぱり賢いな、この二人。一発で説明書のニュアンスを見抜きやがった。

 残り時間二十五分。

 まだまだたっぷり時間はある。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「どうしよう、もうそろそろ着替えないと、時間が」


 エルがそこに置いてある時計を見て言った。時間は残り五分になっている。


「ええと、ユーイチ様に言って、別な水着を用意してもらうと言うのは…」


 ニーナが提案するが。


「ううん、拒否される気がする……」


「困りましたね……エルさんは妻だからいいとしても」


「いえ、私も、妻だから何でもという訳では」


「そうですか。ううん、私はユーイチ様に恩義がありますし、頑張ってしまおうと思うのですが、いいですか?」


「えっ、あ、ああ、ま、それは私に断らなくても…ティーナ様、ううん、この場にいないし、なるほど、だから二人だけの貸し切りですか」


「それも考えた上でのことでしょうね」


「ええ」


 おっと、ニーナが服を脱ぎ始めた。布の服を脱ぐと、華奢でくびれたお腹が露わになる。俺が覗いている事を知らないからか、躊躇無く下着も脱いだ。

 それを見て、エルも覚悟を決めた様子で服を脱ぎ始めた。


 うほほ。

 眼福、眼福。


 水着に着替え終わった二人が、更衣室を出て、プールに入ってくる。


「やあ、二人とも、よく似合ってるよ」


 俺は爽やかな笑顔で言うが。

 エルもニーナも、困った様子で顔を赤くしている。

 いいねえ。


「さあ、もっと(・・・)良く(・・)見せて(・・・)くれないか(・・・・・)?」


 俺はにこやかに言う。

 あくまでコレはお願いだ。

 別に断ってもペナルティは一切無い。


 だが、俺はセルン村の領主であり、侯爵であり、宮廷魔術師である。

 この二人は権力者に媚びたりは絶対にしないが、権力者を怒らせたらマズいと考えるタイプだ。


「「わ、分かりました…」」


 二人ともお互いに目配せして、頷き合い、隠していた手をどける。


 ほう。


 ニーナが選んだのは、白のスリングショット。V字型の紐が三カ所をギリギリの範囲で隠している。胸の膨らみは隠しようが無く、色白の肌が鮮烈だ。しっぽでなんとかさらに隠そうと試みているが、無駄なあがきだ。

 恥ずかしさに紅潮した頬と言い、緊張したまま斜め下を見る視線と言い、そそる。

 健康的で引き締まった体だが、しなやかさも兼ね備えている。

 控えめな胸だが釣り鐘型で形は申し分ない。


「ニーナ、後ろを向いて」


「は、はい…」


 ニーナが言われたとおりにこちらに背を向けたが、小ぶりのお尻のラインもこれまた素晴らしい。クッ!


「よし、もういいぞ」


 次はエル。エルが選んだのは水色のマイクロビキニ。ぱっと見ると、裸にしか見えない。

 実に柔らかそうな胸に、紐が乗っかっているという感じ。全体は華奢で痩せているが、お腹は少しふっくらしていて、柔らかな体つきの印象を受ける。

 恥ずかしそうに微笑んでいるエルは、時折、俺に視線を合わせるが、すぐに逸らしてしまう。


「エル、後ろを向いて」


「はい」


 エルが俺にお尻を向ける。ニーナよりぽっちゃりしていて、こちらはボリューム感がある。


 俺は舐めるようにじっくりとその形を眺めて楽しむ。


 裸の時より、エロいね!


 ああ、どうしよう。

 これから日暮れまでの四時間近く、俺のフリータイムである。


 そしてこの二人はたいていのお願いなら聞いてくれる。


 どんなお願いをしようか?

 どこまでやってしまおうか?


 焦ることは無いのだが、どうにも気が逸ってしまう。

 落ち着け。


「よし、じゃあ、まずは開脚からやってもらおうかな。準備運動は大切だろう?」


「「は、はい…」」

 

 俺の真の意図を知っていながら頷く二人。

 二人がその場に座り、俺はもっと近くで見ようと一歩を踏み出した瞬間。


「うっ!?」


 俺の足下に、ボウガンの矢が突き刺さった。

 ま、まさか―――


「そこまでよ! 探部である! 地位を利用し領民を虐げる悪逆領主、大人しくお縄に付きなさい!」


 ティーナが部下の女騎士の部隊を引き連れてプールサイドに踏み込んできた。


「くっ! お前ら、帰ったんじゃ…」


「バカね、アンタが早く帰らせようとしてたから、何かあると思って泳がせて(・・・・)たんだけど、相変わらずチョロいわね」

 

 リサがボウガンを構えたままで言う。ミオとエリカも杖を構えているし、くそ、この面子相手に一人では対抗は無理だ。


 俺は今回の処分がどうなるのか、顔面蒼白になりながら投降した。

 

 おお、女神ミルスよ、どうかお慈悲を―――。

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