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5.日照雨の誘い
――ざぁざぁざぁ。
ハルがいると一日が過ぎるのなんてあっという間で、4月2日がやってきた。
今日は早朝から雨で。その雨音で目を覚ました私はここで暮らしている誰よりも早起きだったんだろう。静まり返った空間と、耳元で微かに聞こえる秒針の音、そして短針が示す4の数字が何よりの証拠だ。
この地方では滅多に雨なんて降らないのに珍しいなと思いつつ、少し気が滅入りそうな色の雲から降りてくる水滴を観察してみることにした。
ぽたっ、ぽた、ぽた。
どのくらい見ていたのかわからないけれど、薄鈍色に染まった雲はどうやら機嫌が良くなったのか、さっきよりも優しく空気を濡らしていく。
風とともに草木を揺らす音。
水溜まりに落ちて跳ねる音。
特有の仄かに甘い匂い。
窓際に置いてある椅子から立ち上がり、再びベッドの中に戻って目をそっと閉じると、そういったものが少しずつ伝わってきてなんとなく幸せな気持ちになり。そして雨に全身を包まれたまま、誘われるように意識を手放した。