2.あり得ない再会
「ん……」
目を覚ますと視界いっぱいに、見慣れた白が広がっていた。
――まだ生きている。朝このことを最初に考えるのは、もう日課になってしまった。
生きていたいと思う一方で、早くハルのところへ逝ってしまいたいと思うのだから、私の頭の中は矛盾だらけだ。
上体を起こして棚に置いてある時計に目をやる。4月1日、AM7:00。 あぁ、今日はエイプリルフールなのか。ハルはこういった何気ない行事が好きだったから、きっと空の上のそのまた上の、セレストブルーで溢れているところで、私の知らない誰かに嘘をついている頃だろう。
「ハル――」
呼んだって返事が帰ってくる訳ではないのに、口が勝手にその名前を呟いていた。
「どうしたの。キョウちゃん」
ついに私の耳は可笑しくなってしまったらしい。聞こえる筈なんてないのに、ハルの声が聞こえてしまうだなんて。起きたときは今日も生きているなんて思ったけれど、
「幻聴が聞こえるだなんて、案外死期が近いのかもな――」
「幻聴?何のことを言ってるの、キョウちゃん」
「えっ……?」
声がした方を振り向くと、そこには少し大人っぽくなったハルがいた――。
え、ちょ、は? どういうこと?!
え、ハルって10年前に死んだはず?だよね……?
じゃあここにいるハルのそっくりさんって一体――。
「やだなあー、キョウちゃん。ちょっと時間が経って、ちょっと大きくなったからって忘れちゃったの?」
えっ……?
「ほんとうに、ハル、なの……?」
「うん、そうだよ。何なら触ってみてもいいよ」
ハルが差し出してきた手をおそるおそる触る。昔 握っていた手は小さくてあたたかくて柔らかかったけれど、今では私の手をすっぽり包めるほど大きく、少し冷たい。
「ハルは幽霊なの……?」
「うーん、まあそういうことになるのかな? こうして触れたりできるから違うのかも知れないけど」
自分でもよくわかんないや、と続け昔のようにへらっと笑った。
「そっか……」
「えぇ、何その微妙な反応~。キョウちゃんは僕に会えて嬉しくないの?」
「いや、嬉しいけど 何がなんだかさっぱりで、混乱しちゃって……」
突然の出来事にいっぱいいっぱいで、俯きながらそう返す。
……?
「ハル……?」
何も言わないハルを不思議に思い、おそるおそる顔をあげると、にやにやしながら こちらを見ているハルと目が合った。
「?!ちょっ、なんでそんなに にやにやしてるのよ……!」
「だって いつもはツンツンのキョウちゃんから『ハルが居なくなって寂しかったから、また会えて嬉しい!』なんて言葉が聞けたら誰だってこうなるよ~」
「そこまでは言ってないでしょ?!!」
このままだとハルのペースに持っていかれそうだ…。話題、話題……。あ、そうだ!
「ところでハルはなんで ここにいるの?」
ずっと抱いていた疑問をハルにぶつける。
「あ、そうそう!僕キョウちゃんと1日と2日を一緒に過ごしたくて来たんだった!」
「えっ、そんなことなの……?」
「そんなこととは何さ!僕が神様を必死で脅s…お願いして来させてもらったのに!」
今コイツ"脅して"って言いかけてなかったか……?まぁ、いいか。面倒臭いから触れないでおこう……。
「それで、ハルはその2日間で何がしたくて来たの?」
「エイプリルフールと トゥエイプリルフールをキョウちゃんとしたくて……」
やっぱりか。
そして顔を赤らめながら言うな。気持ちが悪い。
区切りが微妙ですが、一旦ここで。