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episode12









「あなたに臓器を渡すためでも、あなたを殺す為でもないよ! 話をしたかったの……ずっと、あなたに」



 俯き加減で枝真が言う。



「おかしなクローンね。私に対して憎悪とか嫉妬とか負の感情はないの?」



 ベッドに腰をおろした状態で、ふんぞり返る様に由梨が長い足を組んで見せた。はきはきと喋る様子から、とても重病人とは思えない。


 偉そうな子だな……なんて思いつつ、枝真は気後れしないように、キッと由梨を見据えた。



「ないと言ったら、それは嘘になる……でも、あなたがいなければ私は生まれてこなかったでしょう?」



 眉をひそめてそう問いかけた枝真に、由梨は乾いた笑みを返した。

 


「あなた、名前は枝真っていったかしら……。先生があなたのことを嬉しそうに話していたのをよく覚えているわ。……あなたはいいわよね。皆からちやほやされて、好きな事ができて、何よりも私の持っていない健康な体をもっている」


「本当に不幸せなのはね、何の関心も持ってもらえなくなること。一人ぼっちで牢獄のようなこの病室に閉じ込められていること。もう完治しない病気を憐れんで、腫物に触るように扱われること……同情されること」


「あなたはクローンである以外、普通の人間と同じだけの幸せを手に入れている。いいわよね」



 間髪を入れずに由梨が言い募る。

 まるで自分を羨むかのような彼女の言葉に枝真は、内心驚いた。



「由梨……もしかして寂しいの?」


「……」


「私、別にあなたを責めにきたわけじゃないんだよ? ただ、私を対等な人間として扱ってほしくて」


「対等? 私とあなたが?! 冗談でしょう?」



 耳を疑う言葉に、枝真は愕然となる。


 枝真が確かめたかった事――


 それは、由梨が自分の意思で枝真を生み出したのかどうか、という点だった。


 日本で初めてのクローン技術の被験者だったという彼女。


 やはり由梨は枝真をクローンとして、自分の病気を治療する材料としか認識していない。



「対等だと思っちゃいけないの?」



 枝真の視線を受け止めながら、由梨はかすかに苦笑する。



「オリジナルとクローンが対等であるわけがないでしょう?! クローンは、オリジナルの替え玉でしかないのよ! オリジナルが病気になれば内臓だって差し出さなきゃならないし、オリジナルが子供を産めなきゃ代わりに産んでその子供を手放さなければならないっ! 私だって……っ」


「……え?」



 枝真が聞き返すように返事をすると、由梨は苛立ったように舌打ちして、組んでいた足を解き枝真にぶつけてきた。



「……もういいわ。出てって」


「ちょっと待って由梨!」



 突然暴挙に出た由梨に戸惑いながらも、枝真は会話を続けようと試みたがそれはかなわなかった。


 彼女が病室で暴れだしたために、 緊急通報装置が作動したのだ。



「話は終わりよ、出てって!!!」



 枝真は仕方なく激昂する由梨を残し逃げるように病室を後にした。











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