草春
私は、人を好きになった事は、今まで一度もなかった。
だけど、高校に上がった今日・・・恋に落ちた。なぜか分からないけど、心がドキドキする。見ているだけで・・・顔が熱くなる。
彼の名前は、何というのだろう。この高校には、友達が二人しかいない。二人とも男子なのだが関係ない
女子の中には、入らない。いじめとか嫌だから・・・
俺が彼女を見かけたのは、入学式の時だった。一人で自立して将来を見透かすような澄んだ瞳で窓の外を見ている、その様子を見ているとなぜか鼓動が早くなっていく・・・
彼女の名前を知りたいしかし、この高校には、俺の中学の生徒は、女子しかいない。まあ、聞いてみるしかないのだが。
私は、やっとのことで彼の名前を知った。すこし男子にそそのかされたがちゃんと聞けた
名前は、海馬流乍、貝軟中の出身らしい。
俺が女子から聞いた情報によると彼女は、佐久波留という名前らしい。
中学は、俺の隣町の奈賀我中らしい。そういえば、男子が、俺のことを誰かが名前を聞いていたって言っていたな。
物好きな奴もいるものだな、俺なんかの名前を聞いてどうするのだろう。
私が、彼の名前を聞いてから女子に聞いた話だが。その彼が、私の名前を聞きに来たらしい。何で私なんかの名前を聞いてきたんだろう。
小学の頃、けっこう私は、いじめられっ子だった。そのおかげで色々嫌いになった。まず動物は、好きだが人間は嫌い。
特に男子や、女子は、大嫌い。大人は、まだましだと想う。
そして、今見えている、この世の中も嫌いになった。与えられているものを黙って食べればいいのに、文句を言う。
力の弱いものに力の強いものが、命令したりいじめたりする。
しかし、今そのころを思い出すと今の自分に嫌気がさす。
するといつの間にか、自分の体を傷つけている。血の滴る手首を見たときに我に返りそして痛みを感じる。
痛みは、肉体的なものもあるけれど・・精神的なものもある。
俺は、中学の頃。親から虐待を受けた。なぜか兄弟は、やられず、俺だけの獣みたいに見られた。
親は、ストレスだったのかそれとも何かの病気だったのかは、わからないが中3の秋に他界した。
虐待は、中一の春から、中三の秋までに殴られたのは、数え切れない。それも顔などでは、無く服に隠れる部分だけだった。
いまだに時々、夢の中で殴られる。その日には、ひどい頭痛が襲ってきて時々学校を休むけど、彼女が居るから休まないだろう。
二人の心には、大きな溝がある・・・。占い師さんに恋の話をするのは、どうかと思うが一様聞いてみるとこんな返事が返ってきた。
わたしは、彼の溝とは、どういうものなのだろう。
名前を聞いてから、2週間もたってしまった。俺は、今だに彼女に声をかけられないままにすごしてしまった。
今日こそ声をかけたい。ちょうど教室の戸が開いて彼女が入ってきた。絶対声をかけるぞ・・・。
もう2週間たった。私は、声をかけられない・・・彼もかけてこない。友達にもなれないのかな・・・はあー。
そう思っているうちに早めに教室に着いてしまった、まだ誰もいないだろう。
戸を引くと・・そこには、彼がいてそして誰もいなかった。
「おはよう。」彼が言った。「おはよう。」私も返事をする。彼の声は、透き通るように繊細で、低い心地よい声だった。
初めて声を聞いた。
彼女が返事をしてくれた。うれしかった。初めて彼女の声を聞いた。ウグイスが鳴くような心地よい声だった。
“もっと彼の声が聞きたい”“もっと彼女の声が聞きたい”
《あのっ》やば・・・一緒に言い出しちゃった。
「すみませんでした。お先にどうぞ。」彼女が言う。
「俺こそごめんな。ただ・・・そのー今日放課後あいていますか?」唐突な質問をしてしまう。しかも敬語で・・・
「えっ・・・あいてるよ。じゃあ・・・放課後昇降口で会いましょう。」彼女がそういってくれるのは、びっくりだった。内心とまどった。
「じゃあ放課後。ところで、あなたが言おうとしたことは、何ですか?」
「えっと、はるで、いいよ。えっとながさって呼んでもいいかな? 私の名前知ってる?えっと佐久 波留って言うんだよ。これからよろしくね。」
「俺は、海馬 長乍って言う。よろしく。」自己紹介できてうれしいよ、はる。
こんな事をしているとドアがまた開いて女子たちが塊になってながれこんできた。聞かれたのだろうか。
放課後になるのか待ち遠しかった。そして俺は、気づくのだった。あっ、ノートとってない今回のテストもやばいな。
もう一つ気づいたのだった。俺、いつの間にか、彼女に話しかけることができたんだ。無性にうれしくなっていく。
チャイムが鳴り響いている。俺は、昇降口で彼女が来るのを待った。
そうしているうちに彼女が来た。
「いきなり、呼び出してごめん。」
「いいよ、色々と気になってたから。」
その言葉に決心が付いた
「俺と・・・付き合ってください。前から見ていたんです。2週間前の入学式からずっと好きでした。」
少し彼女は、とまどったように苦笑したが、すぐに返答が帰ってきた。
「いいよ。私も、前々から長乍の事が気になっていたから。付き合うよ。」
そういってから何回もデートをしたり、夏には、花火を見たりした。
もうそれから5年もたってもう私は、大学生になっていた。その頃が懐かしい。
「付き合ってください・・・。」その言葉を聞いたとき私は、この人となら一生一緒に連れ添ってもいい、これが運命なのだ・・・
とおもった。
しかし、あることで、その運命は、引き裂かれた。
学校の帰りは、二人で手をつないで帰った。駅までだったけど、楽しかった。時々彼の家に泊まった。
とっても幸せだった。けれどもいきなり彼は、いなくなってしまった。
俺は、青の横断歩道を渡っていると、いつも横から車や、トラックが来るんじゃないかと不安になる。
その不安は、どこから来るのかわからない。俺は、小さい頃から注意深い子供だったと中学にあがる前に死んだ親から言われた。
けれど、この注意深さは尋常ではない・・・
今日も不安になる、まだ赤の横断歩道だが足を踏み出してしまいそうだ。だけど、彼女が側にいるから安心する。
目の前に高速で走る車がいても・・・。
横断歩道の前で、彼と話をしていた。もうすぐ変わる・・・3,2,1,カウントは、成功して青になった。
彼が歩き出す、私も後を追っていこうとしたとき目の前から彼が消えた。
どこに行ったのかと辺りを見回すと、左斜め前には、一台のトラックが止まっていて、その後輪のタイアと、タイアの間に何かが挟まっていた。
私の目からは、何かが流れ出ていた。それに気づいてぬぐうとそれが涙だとわかった。
私の前から、彼が消えてしまった。もう彼の声も、笑顔も何にもできないんだ・・・。
変な理解が浮かんで消えて私は、我に返った。
彼は、死んだ。私に何も言い残すことはなく、無言で死んだ。
それから・・・彼からの手紙を見つけた。そこには、こう書いてあった。
【波留へ、もし俺が死んだら・・・ってこの手紙見つけたとき君は、何歳なんだろうな。まあいいや。
悲しまないでくれ・・・。また来世でも逢えるんだから・・・。そして次こそ、幸せに暮らそう。】
この手紙は、自分がもうすぐ死ぬってわかっていて書いたみたいだった。
そうか来世で逢えるのか・・
しかしそれから5年もう私は、彼のことを待てなかった。彼がいないとどうしてもおもしろくない・・・。
ひぐらしが鳴くこの森の中で私は、命を絶つことに決め、木にロープをかけて首に巻いた。
・・・・・3,2,1そして私も死んだ・・・。
私が人を好きになったのは、一度だけだった。
小鳥がどこかで鳴いている・・・・・・
母親を待つように、
目を開けるとそこは、自分の部屋だった。夢だったらしい・・・。5年も長かったのに、一夜限りの夢だった。
私は、佐久波留ただいま海馬長乍に、惚れています。
一生に一度の夢かもしれないけれど・・・私は、彼を死なせないように。
俺は、佐久波留を死なせないように。
“誓います。”
本当に変でごめんなさい。恋愛になってないと思いますが、どうか評価をしてください。