死刑執行
シュミレーター終了
武藤浩輝はグッタリしていた
「武藤浩輝、殺人、死体遺棄の罪で逮捕状が出た。君の身柄は我々、犯罪撲滅科が引き取る事になった。言い分などは隣の部屋に移動してから聞く。拘束ベルトを外す!両手を後ろへ回せ!」
無言のまま話しを聞いて言われた通りに行動している。
こんな大人しい男が何故…
隣の部屋に移動し、調書開始
「2017年4月21日に殺害された三上由衣とは、どの様な関係でしたか?」
「……あの女の本名なんて知りません…。店に何回か行ってたら同伴してくれっていうから、断ったら一切連絡来なくなって…店に行ったら指名してくれないから来ないでくれって言われて……俺の事どう思ってるのか聞いたら…鼻で笑いやがって!」
「静かにしろ!それから?」
「それから…店が終わるのを待って帰り道で待ってたんだ……そしたらストーカーで訴えるとか言い出したから……顔面を殴って…持ってたナイフで腕と脚を刺してやったら暴れてた…なんか楽しくなって…次は腹…胸…顔面…気づいたら動かなくなってた…綺麗な色をしてたんだ…」
「その後、遺体をどうしたんだ?」
「近くに神社があるから……その裏の山に埋めた…ずっと持っていたかったんだけど…腐っちゃうから……」
「その後の被害者との接点は?」
「あの女、店で彩華っていうんだ……仲良かった奴が彩華知らないかって電話が来て…あの神社に呼び出して…次は顔面殴ったら気絶しやがって……だから犯してやった…そしたら気付いて騒ごうとするから首刺して殺してやった…」
「……その後の被害者全員そうしたのか?」
「同じように呼び出して犯して殺して……あっ……最後の女だけは違ったな……半年ぐらい一緒暮らしてた…あいつは言うことを聞くいい子だった……でも親父があいつを見て帰してあげなさいって言うから目の前で刺し殺してやった……そしたら腹の中から赤ん坊が出てきたんだ…もう…死んでたけどな…」
淡々と供述していく男を見て後藤は段々怒りを隠せなくなり席を離れた
替わりに斎藤が話を聞く事になった
「続けていいぞ。」
「…何人やったのか覚えてなかったんだ…けど親父が捕まって知ったよ…思ったほど殺してなかったんだって」
薄ら笑いを浮かべながら話している武藤浩輝に斎藤は怒りを露わにした
「そうか…楽しかったのか…良かったな!じゃ後、6日間楽しんでくれよ!死にたくなるほどの恐怖と苦痛をな!」
「……」
ヘラヘラしてた武藤が黙った
「シュミレーターも楽しかったんだろ?被害者の恐怖を感じる事が出来て!」
「………」
「そんなに楽しみたいのなら今から始めよう!おい!例の部屋を開けろ!移動させる。」
「はい!歩け!」
さっきまでの奴とは別人のように震えていた
「武藤!楽しんでこいよ!みててやるから。」
「……てめぇも殺してやる!」
「早く歩け!」
「離せ…殺してやる。」
「うるさいから、これつけとけ!」
口に粘着テープを貼って黙らせた
騒いではいたが恐怖心は隠せなかったようで足はガタガタ震えている
部屋の前に着いた途端に逃げようとする武藤
「静かにしろ!椅子に座りなさい!」
半ば無理矢理、椅子に固定した
頭に装置を付け、身体全体にも器具を付けた。
「今日は初めの被害者の痛みを知ってもらう。それでは機械作動開始」
最初は刃物を使わず電流を使い切れたような痛みを与える事となった
同じ痛みを味わって頂くため襲ってくる自分を見せる
姿形は被害者に
「斎藤さん、どうなるんですかね…」
「恐怖で声も出ないと思うぞ。一日目の結果次第では電流を止めてナイフに変える。」
「出血死しませんかね…」
「治しながら続けるまでだ…」
「途中で亡くなった場合どうするんですか?」
「死んでも続ける…6日間は…」
斎藤は武藤を見つめながら言い聞かせるように話した
「亡くなった人間を玩具の用に弄んだ奴を…死んだからといって止めると思うなよ」
斎藤の目が血走っていた
何かを思い出したかのように怒りで拳が震えていた
「斎藤さん大丈夫ですか?」
「あぁ…大丈夫だ……少し外の空気を吸ってくる。悪いが様子を見ててくれ。何かあれば、すぐに戻ってくる」
「はい!分かりました!」
斎藤は足早に外へと出て行った
しばらくすると様子を見に室長が現れた
「様子はどうだ?」
「声も出せずに小刻みに震えています。失神も何回かありましたが、すぐに意識を取り戻し暴れていました。今日の分はもう少しで終了します。」
「そうか……。斎藤はどうした?」
「なんだか様子が変でした。外に行ったっきり帰ってきません。」
「うん……。嫌な思い出を思い出したのかもしれないな……。」
「何かあったんですか?」
「……斎藤には子供が2人居るのは知ってるよな?」
「はい。」
「長女が塾の帰りに男に襲われてな……命は助かったんだが…重体だったんだ……。今も病院で意識を取り戻すのを待ってるんだ…。」
「そうだったんですか…」
「今回の犯人を見て娘を襲った犯人とを重ねてしまったのかもしれないな…。」
「……」
「そろそろ終わるんじゃないか?後藤見て来てくれ!」
「はい!」
部屋のドアを開けると皮膚の焼けた臭いが漂っていた
「なんだ、この臭いは…?!」
恐る恐る犯人に近付いて行くとあちこちに水膨れの痕が出来ていた
声もあげられずに口からよだれを垂らし、カタカタ音を立てて震えて尿を漏らしている武藤がいた
「……武藤!」
びくっ
「……助けて下さい…助けて…下さい…」
「意識はあるようだな!では違う部屋に移動する!」
「…ごめんなさい……ごめんなさい……」
「係員!コイツの服を替えてやってくれ!」
「はい!交換した後、部屋を移動させます。」
「頼んだぞ!」
「はい!」
施設の中には色々な人間がいる
係員は清掃全般を担っている
調理は食事などを
機械員は機械全般を
死刑員は死刑に関する設備を
医療班は怪我などを
専門家達の集合体だ
係員が服を交換し違う部屋へと連れてきた
「座りなさい。」
「……」
「今回、被害者の恐怖と苦痛を味わってもらった訳だが…今の感想が聞きたい。どの様に感じた?」
「自分が……怖い……気持ち…悪い……」
「痛みはどうでした?」
「…切られた様な痛み…あったけど…血が出てなかった……でも痛い……」
「これから毎日この痛みを痛感していただく訳だが。何か言いたい事があれば聞くがあるか?」
「…俺は……死ぬのか?」
「求刑は死刑です。」
「………」
「6日目に亡くなるようにしております。」
「……途中で死んだら?」
「亡くなったとしても6日間は続けるという事が決まっています。それでは、また明日10時より開始しますので今日は休んで下さい。夕食も用意してあるので。」
「………」
武藤はただ黙って部屋へ歩いて行った
食事には一切手を付けず
寝ようともしなかった
そんな武藤に精神的苦痛を味わってもらう
壁一面に血の色
そして、うめき声
女の影
これでも足りない