殺人事件
「室長!後藤只今戻りました!」
「ご苦労だったな。結果はどうなった?」
「はい!死刑執行は見送りにし刑期終了後、装置を着用していただき経過をみる予定であります!」
「そうか。初の仕事だったが、どうだった?」
「少々、小野が手間取る所もありましたが…無事完了出来まして良かったと思っております。」
「そうか…これはまだ手始めに過ぎんからな。次の被疑者の調書がきた…こいつは一筋縄ではいかないぞ!どうする?後藤お前がやるか?斎藤にしようか悩んでいるんだが…」
「私にやらせて下さい!」
「それじゃ、今回は後藤と斎藤でやってくれ!」
「はい!調書、資料お借りします。失礼致します。」
調書に目を通すと想像以上に酷かった……
ファイルナンバー005241
武藤 義清«むとう よしき»
50才
殺人、死体遺棄
五年間に6人もの人々を殺害、遺棄
現在、刑務所に服役中
「斎藤さん、室長から聞きましたか?」
「今回の事件、お前と2人でやるみたいだな。調書は読んだのか?」
「はい。読みましたが……シュミレーターかけるまでもないかなと……」
「貸してみろ!」
「はい。」
「……これは……シュミレーターかけてみた方がいいかもな…面白い事実が分かるかもしれないぞ…」
「え?どういう意味でしょうか?」
「まっ、とりあえず被疑者をシュミレーター室まで連行してこい!」
「はい!それでは失礼致します。」
斎藤さんに言われるまま武藤義清を刑務所まで迎えに行きシュミレーター室まで連行した。
「斎藤さん。武藤義清を連れてきました。」
「じゃ拘束ベルトして機械取り付けたら、こっちの部屋に来てくれ」
「はい!」
武藤はただ無言で話しを聞いていた
言われるがまま横になりシュミレーターが作動した
隣の部屋から様子を見ていたが武藤は無言だった
叫ぶ訳でもなく…
ただジッとしていた
「後藤、これがどういう意味だか分かるか?」
「えっ?いえ私には解りません…前回の被疑者は叫び声をあげて暴れてました。何故、武藤はビクともしないんですか?」
「犯人じゃないからさ…武藤には1人息子が居たよな?」
「はい!調書によると妻と息子と3人暮らしとなっています。」
「その息子、今どこに居るか調べてこい。」
「はっ!失礼します。」
息子は事件があった五年前30才
結婚もせず実家暮らし
被疑者と被害者との共通点はなし
被害者は全員、水商売系
被疑者が被害者の店に行った形跡はない
「斎藤さん、息子はまだ実家に暮らしているようです。」
「そうか……。連行してこい!」
「えっ?今すぐですか?」
「そうだ。任意で連れてこい。」
「はい!それでは、いって参ります!」
「頼んだぞ!」
室長に斎藤さんの話しを聞いてもらい許可を貰った
令状もすぐに発行してもらえるように話を通して
武藤 浩輝«むとう ひろき»
を任意で連れて来た
「武藤、お前は隣の部屋に移動しろ。息子さんが来てくれたからな。」
「刑事さん、息子は関係ないじゃないですか…。」
「大人しく見てろ。」
武藤浩輝にシュミレーターをかける事になった。
後藤は訳も分からず斎藤の言う通りにした。
「作動したら、後藤もこっちにこい!」
「はい。準備完了しました!」
「作動開始!見てろよ…犯人はこれに反応する。」
作動開始直後、叫び声が響き渡った
身体を起こそうと暴れだす
「ほらな。犯人は息子だな。後藤、令状取ってこい!」
「はい!すぐ取れるようにしておきました。」
「よし。武藤義清の釈放手続きも一緒にしてもらってこい。」
「はい!分かりました。」
武藤義清は涙を流しながら息子を見つめていた
後藤は、すぐに室長に報告して令状と釈放手続きを進めてもらった
「武藤、罪を庇うのは悪い事だ。本人にとって良いことではない。また人が死んだら、どうするつもりだったんだ…。」
「息子は私と約束してくれました。ですから、その心配はありません。」
「本当にそう思ってるのか?お前の息子は、もう違うターゲットを見つけていたみたいだぞ…」
「えっ……」
「本当に息子が大事なら庇うのではなく、罪を償わせる事が大切なんじゃないか?罪の重さを軽視するようにならずにすんだかもしれないのにな…」
「息子は、どうなるんですか?」
「死刑は間違いないです。」
「………」
「貴方も虚偽の罪で、もう一度裁判にかけられます。」
「はい……。」
「それでは、警察署にお送り致します。」
「すみません…あの子の罪を軽くする事は出来ないのですか?」
「それは無理です。彼は過ちを繰り返す傾向にあり、身勝手な思考もあります。亡くなった方々のご家族の事を考えた事はありますか?」
「………」
「貴方も人の親なら解りますよね?それでも罪を軽減させたいと思うのであれば、我々は貴方に対しても罪を課せます。」
「……1人息子なんです…」
「だから、なんですか。人を殺しておいて何を言ってるんですか?」
「………」
「斎藤さん、武藤義清を警察署に移動させてもいいですか?」
「あぁ、もう彼に用はないからいいぞ!」
「はい!それではパトカーが到着してますので、こちらへ。」
「……刑事さん、どうか…」
「早く乗りなさい!」
「…刑事さん……」
「出発してくれ!」
最後の最後まで息子の心配をしていたが武藤浩輝の死刑は確定していた。
この後、室長・斎藤・後藤が話し合いをし、どの様な方法で彼に罪を与えるかが決定された。
シュミレーター終了後、様子を監視し経過をみてから次の段階へ
被害者が受けた痛みと恐怖を味わってもらう
シュミレーターで使った機械を装着させ、刺された箇所を同じ刃物で刺す
6人の痛みを味わってもらうため急所は外して6日間に渡り続けられる事となった
彼にとっては死にたいほどの痛みと苦痛であろうが6日目までは死なせない。
「室長、何故この様なミスがおきたのでしょうか?」
「それは、父親が凶器に触れ犯行現場が自宅の近く死体を遺棄した場所すべて把握していた事からだろう…。次に事件がおきていれば、息子が犯人なのは解ったはずだ…。癖というのは変えられないからな…」
「そうですよね。でも事件がおきてからでは遅いですよね…斎藤さんは何故すぐに気付いたんでしょうか?」
「斎藤は被害者が水商売で店が近い点と年齢、服装、髪型が似たような感じだった事に違和感を感じたらしい…それでまず、シュミレーターをかけてみないと解らないと言う事で実行した。」
「すみません。私1人でしたら、そのまま武藤義清を死刑執行していたかもしれません。」
「仕方ない。分からない事があれば斎藤に聞くといい。アイツは勘がいいからな。」
「はい!」