制裁
理性が無くなった人間ほど最悪なものはない。
誰彼構わず犯罪を犯す…
なんのために法律があるのか?
犯罪を犯しても、死刑にはならない…じゃ何人殺せば死刑ですか?
人、1人の命の重さは軽いんですか?
お金を払えば癒されるぐらいの痛みですか?
私達が、そんな世の中変えて差し上げます。
犯察こそが正義なのです。
加害者家族からすれば悪かもしれません。
ですが、私達は1人の命の重さはとても重いと思っております。
人を1人殺せば同等の命で…その考え方が正しい…
私達は、そう思って犯罪を犯した方々に制裁を加えて参ります。
室長、神崎纏40才
警視庁から転属
警部、斎藤貴之35才
警視庁から転属
警部、後藤幸雄34才
警察庁から転属
警部、佐々木誠35才
警察庁から転属
警部、小野剛29才
警察庁から転属
手始めに神崎を筆頭に5人体制で結成された。
それぞれが被害者になった経験もあり、悪を許さない。
警察が介入出来ずにいる事件でも彼等なら簡単に介入し解決へと導く…
それが、どんな結果であれ…
報復へと進む…
“悪を許さず制裁を”
ファイルナンバー00125
恐喝、暴行、殺害
林 聡«はやし さとる»
28才
被害者を必要以上に暴行し殺害
盗んだ金はパチンコで使ったとの事
「室長、どうなさいますか?」
「調書を読んでみたが酷いな…知性の欠けらもない。後藤に一任する。結果を報告してくれ。」
「はい。一度シュミレーター室に入れてみてから、判断したいと思います。」
「頼んだぞ。」
「はい。失礼致します。」
シュミレーター室とは実際に自分の犯した罪を体験する施設です。
被害者側が受けた痛みを体験するのです。
調書をもとに作り上げたデータを加害者の脳に送り込み、その結果を室長に報告し犯人の死刑が行われるかを決断する。
「小野。被疑者を連行しにいくから付いてこい」
「はい。」
「犯察が出来て初めての仕事だな。」
「はい。ちょっと緊張します。」
「今回の犯人はまだいい方かもな…これから先、目を覆いたいほどの事件も担当するだろう…。」
「そうですよね。なんだか気が重いです…同じ人間なのに簡単に人の命を奪う事が出来るなんて……人を殺したくなるほどの憎しみってなんなんでしょう?理解出来ないです。」
「それは犯人にしか解らない事なのかもしれない。俺も殺してやりたいほどの奴がいる……でも、殺してしまった所で失った者は戻ってこない……。無差別殺人をする人間はもっと理解に苦しむな…その後で精神疾患があると判明すれば刑は軽くなる…そんな法律必要あるのかと思う……。」
「そうですよね…」
「着いたぞ!」
「はい。」
手続きをしに行くと周りの刑事達が蔑むような目で見ていた
「後藤さん、俺ら嫌われてるんですか?」
「だろうな…権限は俺らの方が上だからな。それに解決した事件をひっくり返して調書から資料から全部持っていくからな。疎ましいんじゃないか。」
「やっぱり……」
「嫌われようと俺達は俺達の仕事をするだけだ。気にする事はない。」
「はい。」
「林聡だな。身柄を犯罪撲滅科で預かる事になった。一緒来てもらおう。」
「……」
「小野、連行しろ。」
「はい!歩け!」
車に乗せシュミレーター室に移動
林は不気味なほど大人しかった
犯察の噂を拘置所内で聞いていたのかもしれない。
「林聡。こちらのベッドに横になりなさい。」
「……」
無言で横になった林は顔色がみるみる青くなっていった。
人は死を目前にすると自分のしてしまった罪の重さを知るのだろうか……
「小野!手足の拘束ベルトを付けてくれ!」
「はい。」
「今から頭に機械を付ける…。その後もう一度調書をとる。分かったな!」
「は…い。俺はどうなるんすか?」
「お前次第だ…。さぁ機械を作動する。我々は外から監視している。」
「待ってくれ!」
「扉を閉めろ!」
シュミレーターが始まった
叫び声が響き渡る
林が殺した人の苦しみを林は解らなければならない。
本当に林は理解する事が出来るのだろうか……
叫び声が消えた…
シュミレーター終了
「小野、林を見てこい。」
「はい!」
扉を開けるのを躊躇していた
「いつまでかかってるんだ。」
「申し訳ありません。なんだか……」
「もういい!俺が行く!調書を取るから部屋を用意しとけ!」
「はい。」
部屋に入ると林はガタガタ震えていた
青白い顔をして天井を見つめている
「林!部屋を替える!聞いてるのか!」
声を聞いて我に返ったように林は泣き始めた
「すみません。すみません。」
「起き上がったら後ろを向き両手を上へ上げろ!」
「はい…」
立ち上がった姿は小鹿のようにカタカタ両足が震えていた
「手錠をかける。両手を後ろへ。」
「はい。」
「部屋を移動する。歩け!」
「はい。」
足が震えて中々前に進まない
「早く歩け!」
「すみません。すみません。」
やっと別の部屋に移動して調書を取り直す。
「今回、君には被害者が受けたであろう苦痛を体験してもらった訳だが…君はどのように受け止めましたか?」
「………」
「何も話さないのであれば、それでもいいです。その時点で君の刑は確定します。」
「……俺は……何も考えず…無抵抗の人間に暴行を加え……殺してしまいました……それは許される…事ではありません……今回…被害者が受けた…苦しみを…感じ…最低な人間だと理解しました……」
「それで君は、この先どうするつもりですか?」
「謝った所で……してしまった罪は…消えないと思いますが……被害者家族に…謝罪文を書きます…」
「我々は、反省しても人は同じ過ちを繰り返すんではないかと思っています。君は絶対、二度と罪は犯さないと言い切れますか?」
「…はい。二度としません。」
「それでは、もう一度同じ過ちをおかした場合、我々は躊躇せず死刑執行させていただきます。これが最後の通告です。刑務所の中で反省していただきます。刑期終了後、手足に装置を着用していただきます。GPS機能が付属してあり、君が不審な行動をした場合はその場で死刑執行させていただきます。」
「……えっ…」
「最後の通告だと言ったはずです。そして無理矢理、装置を外そうとした場合も同様に死刑執行させていただきます。」
「…はい。」
「なお、この機械は貴方が亡くなるまで着用していただきます。異議は認めません。」
「…はい。」
「それでは、刑務所の方に連行させていただきます。」
「…はい。」
「送ってやれ!俺は室長に結果報告してくる。」
「はっ!かしこまりました。」
林は抜け殻の様になり刑務所へと連行されて行った。
これから彼は刑期を終えても監視され続ける。
代償としては軽すぎるが彼にとっては辛い日々になるのかもしれない。




