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スター誕生!(仮)  作者: ふー
プロローグ
3/7

当歳

お読みいただきましてありがとうございます


〈四ヶ月〉

露の降りた草

薄くかかる霧

遠くにくっきりとした稜線を見せる山

そのどれもユキは好きだった

世界の何もかもが好きだった

何を見ても楽しく刺激に満ちていた


脱走して夜の牧場で一夜を過ごしたことも、良い経験だった

遠くに光る自分とは違う目をみて少し怖くなったが、ヨーゼフが来てくれたので余裕が出来た

自分は生まれた牧場は、北村牧場というのだと知った


最近見知らぬ人が多く来る

ユキは人が好きなのだが、流石にうるさいなと思うときもある

そんな時は北村かっちゃんにねだって、秘密の場所に連れて行ってもらう

かっちゃんは小さい池のほとり木の上に“秘密基地”を持っている

木の上なのはクマよけだ


その池は深い青緑色をしていてとても綺麗なところなので、ユキもお気に入りの場所だ

ツキちゃんも一緒だともっと楽しいのだが、ツキちゃんは優等生タイプで静かにしているタイプの子なので、ついてきたりしないのだ


かっちゃんが時折鈴を鳴らす

「クマよけな。こうするとクマの方で人を避けてくれるんだってよ。」

と説明してくれたっけ

かっちゃんはいろいろなことを話してくれる

良くはわからないが“がっこう”での出来事と“まんが”の話が多い

“がっこう”はみんなで一緒に“おべんきょう”したりご飯を食べたり、遊んだりするところらしい

今度ついて行ったらダメかしら?

“まんが”の話になると身振り手振りが大きくなる

あんまり一生懸命になりすぎて木から落ちそうになったことは数知れず

主人公の決め技や決め台詞をかっちゃんは声を微妙に替えて、話すので見ていて面白い

まるでかっちゃんの中にいろんな人がいるみたいだ


【side B】

コーディネーターがユキに一目ぼれしたらしく、あれから月一いや多い時は週一でユキに会いに来る

グルーミングキットを一式持って来て、ユキを幸せそうな顔でブラッシングしていく

仕事をしていないんじゃないかと心配になったが、ここのところ彼の紹介でユキを見に来るピンフッカーやコンサイナーが増えた

ここでなるべく馴致ブレーキングまでしてやりたいが、馬主にコネと面識がある彼らの方が、ユキを大事に扱って大成させてくれる馬主と調教師に引き合わせてくれるかもしれない


ユキが生まれてから不良で遊び歩いてばかりいた三男坊の克幸かつゆきが、真面目に学校に行き始めた

昨日進路のことについて相談を受けた

親に相談してくるなんて、人生のことを考えていたなんて、それだけで母親の方は全てを許す気になっているのだから、しょうもない

夢のようなことばかり言っているのは、進歩がないがともかくやる気になったのだから、今回は見守るしかないだろう






〈七ヶ月〉

北の秋は早い

木々の葉が色づいたかと思うとすぐに大地は白一色に染まっていく

私にとってはやはり初めての季節

みんなは暑いほうが苦手というが、私には寒いほうが嫌

なるべく風の来ない所に移動したい

ヨーゼフや猫のシロと一緒に居れば少しは暖かいかも


外に出ないで一日中うちにいるとなるととっても退屈

最近かっちゃんも遊びに来てくれないし

つまんない~





今日は新しい仲間が来るって言っていた!

でもお母さんくらいのひとなのだそうだ







ツキちゃんのあ母さんとも違う感じがするひとだ


「よろしくお願いするわね。」

グラマーで色気のあるタイプとヨーゼフが言っていた

意味を聞くと大人の女のひととして魅力的なことをそう言って褒めるのだそうだ


「よろしくお願いします。」


「あなたの髪の毛の色って珍しいわね。“きゅうしゃ”での“レース”でも見なかったわ。」


「あの、おばさん、“きゅうしゃ”や“レース”って何ですか?」


「まだ若いんだから、おばさんには違いないんだけどクレスタって名前で呼んでくれる?気に入っているのよ、この名前。」

おばさ、クレスタさんはそう言うとタバコを取り出す

「現役引退してから、覚えちゃってね。ちょっと一服させてもらうわよ。」

そう言うとふうっと煙を吐く


「“厩舎ていうのは会社。“レース”は仕事。私たちのようにサラブレットとは『人と一緒に走ったり歩いたり飛んだりする』のが仕事ね。力仕事はしないわ。私たちの足は体に比べて細かったりするのよ。」

そういうと長くて綺麗な足を組む


「『人と一緒に走る』?」


「正確には人が言った通りに、先頭でゴールすること。」


そうか!

私は走ることが好きだから、それが仕事になるならそれはそれで嬉しいかも

でも

「人の言った通りって?」


「人tp一緒に走るのよ。人が指示したようにコース取りして人がGOサインを出したら力いっぱい走る。」


「自分で好きに走っちゃいけないの?」


「きめられたコースを走らないといけないからね。」


それはちょっとつまらないかも

ユキのつまらなそうな顔に気がついたのだろう


「私は一回しか勝てなかったけど、先頭でゴールするっていうのは気持ちいいものだよ?」


「そうなんだ~」


「何を話しているの?」

ツキちゃんも来た


「会社とお仕事の話。」


「私もお母さんに聞いたことがある。その前に学校に行くんだよ!」

目をキラキラさせていう


「学校!」

かっちゃんが行っていた学校に私も行くんだ!

「行きたい!どうやったら行けるの?」


「そのうち嫌でもやることになるよ。人の言った通りに走るために、人を乗せるための道具になれなくちゃいけないからね。」


「なあんだ。かっちゃんが行っている学校じゃないんだ。」


「かっちゃんって誰だい?」


「ここの牧場の次男さんです。」

ツキちゃんがクレスタに教える




【Side B】

テーブルの上に名刺が二枚


「お父さん、お客さんがお帰りになりましたよ。」

見送って戻ってきた妻がお茶を入れ直す


「うちで馴致ブレーキングまでする予定だったが、コンサイナーに任したほうがいいだろう。克幸の事でお金もまとまっている事になるだろう。」


「ユキとツキ?」


「ユキだけだ。ツキはうちから出す。ユキはあいつはスターになる素質の持ち主だ。早くからうちよりパイプの太いところに出したほうがいい。」


「克幸ががっかりするね。あの子はユキが好きだから。」


「それを言うなら誰もかもだ。今まで牧場をしてあの子ほど人を惹きつける子はいなかった。だからこそ尚更出す。」


「あの子がスターになって、引退してから帰るとこがうちじゃなくなるかもよ?」


「それも仕方がない。」

夫の返事に妻がテーブルの名刺を覗き込む


「で、どっちに任す気なの?お父さん。」


「まずはあのストーカーに聞いてみるか。」


「ストーカーね。銀城さんなら、ユキに悪いことはしないからね。迷っているなら意見を聞くのはいい考えですね。」


「ゆきちゃ~ん!甘~い人参ですよ~!」


これ以上崩れないというほど顔を崩して、声をかける

久しぶりの晴れ間に外に出ている馬たち

白い雪の中にかろうじて見えるユキが、こちらに気づいて走ってくる


「う~ん可愛い。やはり天使だ。」


銀城の持っている人参は有機栽培の特別栽培で糖度が、8度以上ある甘い人参なのだ。

馬は甘いものが好きだ

ユキは体こそ小柄だが、驚く程食べる

馬にも痩せの大食いという言葉が当てはまるのを初めて知った

ユキも甘いものが大好きだ

夏のあいだはキビを持って日参した

今は時期が外れているので人参だ

これもお気にいるだ


走るたびにアホ毛が揺れる

ヒョコヒョコと拍子をとっている

こんな綺麗な子を埋もれさせておくのはもったいない

心を込めてポンポンと軽く叩く


先ほどの牧場主の話を思い浮かべる

二つとも自分が話を持ち込んだところだ

二箇所とも間違いはない

必ずデビューさせるとこまでやってくれる

そのどちらかがいいかと聞かれると少し難しい

ひとつは大手と呼ばれるところ

片や最近出始めた新しい形態で、中小が提携を組んで大手と対抗するために組織したところ

どちらがこの美少女にふさわしいだろうか?

さみしがりやなこの子には仲間が多くいるところが望ましい

だが彼女に細心の注意を払ってもらいたい

大勢の中の一人ではなく

この子だけに情熱を注いで欲しいと願うのは自分だ


彼の脳裏にある人物が浮かんだ


ピンフッカーもコンサイナーも馬を預かって見栄えが良いようにしたり、人なれさせたり、毛艶を良くしたりして、高い値段で転売して儲ける職業だそうです

*門外漢なので認識が間違っていたらご指摘ください

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