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調査報告 その3

今日で任務は最終日となる。


しかし、私は任務を完遂するには、まだ不十分であると判断した。


とくに、対象者は何を考えているのか全く把握出来ず。


現在、彼らは市街地にある、武器屋に向かっているようだ。


思い切って、接触を試みる。


グラリスは流石に、このままの姿はまずいと思ったのか、近くにあった服屋に寄り、変装の為の服を買った。


そして、右側に赤い腕章を付けた。


(完璧!)


自分で納得し、二人の後を追った。


「やぁ。こんにちわ。良い天気だね」とヨハンネに話しかけた。


「そうですね。最近、天気が良いみたい。……でなんですか?監視委員さん」


「え!?な、なんの事かな。私は普通の街娘だよ」と動揺を隠せない。


「いやいや、普通に赤い腕章を付けてるし」とヨハンネが指差した。


その指差す方に目を送りと……


(しまった!腕章をつける癖があだとなった)


さらに、異様な視線を感じた。


どうやら、ミネルヴァが、睨みつけるように、ジッとグラリスを見ていたようだ。


「ご主人様から、三歩後ろに離れて下さい。さもなければ……」と剣を抜こうとした。


それに俊敏に反応したグラリスは手を前に突き出して言った。


「ま、待った!下がりますから。今直ぐに下がりやすから」と急いで三歩後ろに行った。


「……」と対象者はよし、と思ったのか、構えるのをやめた。


(殺気を感じた……うかつに近づけない)


「ごめんなさい。ミネルヴァは知らない人には敏感なんだ。特に僕に近く者は。ハハ。そこまで怯えなくてもいいでしょ」とヨハンネが少し笑った。


「わ、私はビビってなんか、ないぞ。これでも二十六歳なんだからね」


「そうですか。……じゃあお元気で」とヨハンネが立ち去ろうとする。


「ち、ちょっと待って!私を連れて行きなさい」


「はい?」とヨハンネは不思議な顔をし、対象者は眉間にシワを寄せて目を細めた。


(このままでは、報告が書けない)


「ねぇお願い。いや、お願いします!」とペコペコと頭を下げる。


「貴方は珍しいですね。と言うより、プライドとかないんですか?」


「ご主人様。こんな奴、構う必要はありません」


「そうだね。では、お疲れ様でした」


「ヨハンネ殿!お願いです。私には妹が居るんです。わかりますか、この意味?お腹を空かして待っているんですよ」


「えっ?!本当かい」とヨハンネが、食いつくような顔をした。


「ご主人様。私に対して小汚い悪党が同じ手を使いました。これは嘘です」


「えぇ?!なんて汚い。最低ですね」とヨハンネが呆れた口調で言った。


(くっ……かくなるうえば……)


グラリスはいきなり、土下座した。


「何卒、お願い申し上げます!!」


「うっ!?」とヨハンネは驚きを隠せないでいた。


「どうしますか?面倒なら消しますが」


「ミネルヴァ。それはダメだよ。こんなに必死にされたら仕方ない。わかりました。どうぞお好きにして下さい」


(ふっ甘ちゃんね)と心で笑ったグラリスであった。






こうして、私は一日中、監視を続けた。


事ある事にメモを取り、対象者の不審な行動を書こうとしたのだが……


「ご主人様?この服、ご主人様に似合いそうです」


「そうかな?結構、渋いように見えるけど」


ミネルヴァがヨハンネに差し出したのは、茶色の軍服だった。


この軍服は、近衛師団に配られる物で、言わばレプリカである。


(奴隷自らが、主人の服選びだと?!)


グラリスはまたまた、驚いてしまい、報告書を書いていた手が止まった。


インクが滲み、報告書の紙がダメになる。


グラリスはどう書けば良いのか、わからないでいたからだ。


いつもなら、反抗的な態度を取り、無口で何もしない。と書きたいのだが今回はその正反対。


無口ではあるものの、積極的で主人に対して忠実。


(悪い部分が見つからない……いや。まだだ。必ず、私は、この黒髪の化けの皮をはいでやる!)

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