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終わりと始まり その3

ヨハンネは走った。


決して、振り向かない様に自分に言い聞かせた。


彼女を信じているから、振り返ったら、彼女を疑っている事になる。


(ミネルヴァは必ず、僕に追いつく)


ヨハンネはミネルヴァが約束を絶対に守ると信じた。


謎の少女がどんな技量があっても、彼女にはかなわない。そう思っていた。


路地を曲がると人の気配を感じた。


彼が足を止め、後退りした。


ヨハンネの眼前にまた別の少女が立っていたのたま。


偶然と言えるのか何故か、ここで会うのが妙に嫌な予感がした。


「おっ新手か?」


「き、君は誰……?」


「俺はレイラ。てめえは?」


「僕はキンブレイト家、当主、ヨハンネ・キンブレイトです」


その言葉にレイラは突然、肩で笑い始めた。


「ククク、アハハハ――――――ッ!!!凄い。こんな事ってあるんだ」


両手を広げ、大袈裟に仰け反りながら空を仰ぐ。


「どういう意味?」


「いや。何でもない。ただ―――――」


ヨハンネが眉をひそめる。


「…ただ?」


「てめぇの親父を殺した犯人達です。世界って狭いよな?こんな所で子供に出会うなんてな」


「えっ……そんな……嘘?」


ヨハンネの視点が泳ぐ。


「あーそうだ。ちなみにその場に俺も居たんだ。可愛そうにな」


悪戯な笑みを浮かべ楽しそうに話す彼女にヨハンネは怖くなった。


思考が追いついて来ない。


「じゃ君は、父上……いや、僕の父さんを……殺した人の仲間って事?」


「そうだ」


即答だった。


ヨハンネはずっと考えていた。


父親を殺した犯人を突き止めて、自分の手で敵を取りたいと。


どれだけ捜した事か。


でもヨハンネはその復讐心を押えた。


そんな事をして父親が喜ぶはずがない。


それに、仮に敵を取ったとして、最後に残るのは、哀しさと喪失感だけである事をヨハンネは知っていた。


(でも……ごめん父さん。僕、やっぱりダメだよ)


ヨハンネが唇を血が滲みほど噛み締めた。


犯人の仲間を目前にして、彼女を殺したくなってしまった。


押えていたものが無くなったかの様に、心で復讐心が溢れ出てきた。


悔しい。


弱い自分に。


(でも、これが…チャンスなんだ…)


ヨハンネは剣を抜き、レイラに刃先を向ける。


彼は初めて人を殺したいと思った。


その相手がいま目の前にいる。


「僕は……君らを許さない」


「ほぉ?」


「僕は君を……殺します」と目つきが変わった。


「いいねぇ。その目つき。嫌いじゃないぜ。付き合ってやるよ」








その頃、足止めをしていたミネルヴァはソーイと死闘を繰り広げていた。


剣と剣が当たった瞬間、火花が散る。


どちらも、本気で闘っているようだ。


二人が接触し、相手の額と額が引っ付くぐらいの距離になった。


「あなたは強いのね?」


「……くっ」


ミネルヴァは焦っていた。


早く、ヨハンネに追いつきたかった。


しかし、この者を倒すのには精一杯のようだ。


闘技場にはこんな猛者は居なかった。


いつも、直ぐに倒れてしまう。


彼女と同じ時間を持つもの、同じ力を持つものは全く現れなかった。


自分は衰えたと思ってしまう。


二人は距離をとった。


「あたちには時間がないのね。だからここで、終わらせるのね」と刀剣を振りかざす。


私はそれを防ぐしかなかった。


剣と言っても、相手のほうが断然有利であるのはわかっていた。


しかし、避ける事は出来ない。


その前に懐に飛び込んで来るからである。


「やぁぁぁああああ―――――――――ッ!!!」とそれを押し返す。


しかし、ソーイはそれに動じず、横一文字に斬りかかった。


「つっ……」と左手で脇腹を押える。


どうやら、刀剣の刃が当たったようだ。


「凄いのね。反射的に急所を避けたのね」


「私はここで死ぬわけにはいかない。守るべき人が居るんだ」


「へーさっきの人のこと?じゃあその人もあたちが殺してあげるのね」


「何?!」と敏感に反応した。


「どうしようか?姉さんに頼んで拷問に掛けようか。それとも……」


「させるかっ!」とソーイに飛び込んだ。


それにソーイはニヤリと笑う。


どうやら、誘い込まれたそうだ。


ミネルヴァの一撃が受け流された。


「もらったのね」


「私は生きる!ご主人様の為に」と左足で踏ん張り、そして剣で防ぐとソーイの横っ腹に蹴りを入れた。


「きゃっ」とソーイは壁に叩き付けられた、口から血を吐いた。


普通なら、ここでくたばっているだろうが、ソーイは立ち上がった。


口から出た血を手で拭い、笑った。


「フフフ。ようやく楽しくなって来たのね」


究極の戦士とはこの事を言うのだろう。


闘って傷つき、死に掛けても、それが快感に思えるのだから。


私は息を大きく吐いた。


左足にピリピリと痺れを感じた。


さりげなく、目を下に送ると、いつの間にか斬られていたのだ。


気がつかなかった。


(でも、かすり傷。これなら大丈夫)


まだ、動ける。


(足も手も体もまだまだ動く!)


彼女は静かに力を込めつつ構えた。


「さぁ。第二戦の開始なのね!」


ミネルヴァが先に仕掛けた。


「アハハハッ――――――――!!!」


それに続くようにソーイが走り出す。


二人は、呼吸があっているかのように、攻め、防ぎを繰り返した。


右からのを防いだ時、私は目の前がぼやけた。


出血が激しい。


が、ソーイも同じ。


それにソーイからのアッパーをくらった。


「かはっ」


ミネルヴァは宙を舞い、後ろ頭を打ち付けた。


「きゃは!いただき~」とソーイが飛び跳ねる。

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