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魔王と呼ばれた女剣闘士を買った少年の物語Ⅰ  作者: 飯塚ヒロアキ
第二章 アレー・ソリスの登場
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トルナシー砦を奪還せよ! その3

騎士達がトルナシー砦城門に雪崩れの如く、進撃したが、その勢いは直ぐに止まってしまう。


外壁の様子はわかっていたが、内部までは実際に入らないとわからないと計算して考えていたイサル団長だったが何とも言えない惨状に言葉を失ってしまった。


騎士達も同じく闘う戦意と肝が冷えるような光景が眼球に広がる。


目の前には、守備隊の者達の亡骸だろうか、至る所で吊るし上げられている。


しかも、明らかになんども刺された跡があった。


そして足元には、先ほど偵察に出した部下達の腕や足の一部やバラバラになったっていた。


土が赤く染まり、水溜りのようになっている。


「な、何なんだこれは―――――――ここで一体、何が起きている。これではまるで悪魔の仕業ではないか…」


騎士達は修道院に収められている歴史書、古文書の中に挿絵としてあるサタンの魔宮が脳裏に広がる。


まさに自分達はそこに飛ばされた感覚に陥った。


挙動不審になり、目線は定まらず、震えが止まらなかった。


そして背後の城門が堅く閉ざされ、退路を絶たれるという物語では、お馴染みとも言える事態が発生する。


「ぐぬぅ…やはり罠だったか……?」と迂闊うかつ過ぎたと後悔した。


すると、何処からか複数の声がし始めた。


「おい、おい、おい?騎士団かよ。めんどくせぇな。ソーイ、てめぇが始末しろッ!!!」


「あたちはいやなのね。だって怖いものね」


「私もパスだわ。本業は工作ですもの。闘いなんて野蛮ですわ」


「んじゃあ、うちがやろうか?北壁帰りだけど?」


「「「「賛成ッ!!!」」」


さっきまで響きわかっていた声が突然、嘘のように止んだ。


それが更に恐怖を呼び覚ます。


目の前にあった灯台から、何かが騎士達の前方へ落ちて来た。


軽い音がしたあと、それを騎士らが驚いた顔で凝視する。


「やぁ~初めましてやな?うちはキュナンって言うねん。よろしくな~」と謎の少女が陽気に手を差し出し挨拶してきたのである。


しかし、誰もそれに答えようとしなかった。


全員、膠着こうちゃく状態となっていたからだ。


(バカな…飛び降りたら……死ぬ高さだぞ。……私は悪夢でも見ているのか……?)


ここは現実世界なのか。とイスラは心の中で自問した。


引きつった顔で見つめられている謎の少女が小首を傾げた。


「あれ?もしかしてうちの登場に驚いたんか?」


イサルが慌てて、剣先を向けて言った。


「お前は何者だッ?!他は?!」


「他って言われてもな、うちら四人しかおらへんで」と惚けたような言い方をした。


それに騎士が反応し罵った。


数で圧倒しているローズ騎士団はようやく落ち着きを見せ始めていたからである。


ましてや、小さい少女に何を恐れる事があるだろうか。


彼らは聖騎士団ではないが、魔獣及び魔族の討伐遠征の経験がある。


数年前にはコカトリスの討伐に成功しており、熟練度が非常に高い。


※コカトリスとは、雄鶏の頭を持ち、トカゲまたは蛇を合わせたような容姿であり、たまにプルクテスの山脈や森林などに出没しており、危険性も高い魔獣である。


「ふざけるなよ小娘ッ!ここの守備隊は八千以上は居たはずだ。そう易々と陥落するはずがない!」


「それを上回る戦力があるはずだぞ!答えろ!」


「って言ってるけど、どうする?」と飛び降りて来た灯台を見上げ、誰かに話しかけた。


すると直ぐに返事が返ってきた。


「決まってるだろ。加勢してやるよ」


「あたちも、フェザール様に褒められたから頑張るのね」


「仕方ないわね。久々なら悪くはないわ」と先ほどの少女と同じ場所から三人の女達が飛び降りてきた。


新たに飛び降りて来た事に対しては驚きを見せていたが、四人に対してローズ騎士団は六千以上。


笑い声まで出始める。


「バカめ!我らはローズ騎士団。泣く子も黙る精鋭部隊だ」


「貴様らは、ゴミ同然である」


それに短気なレイラが反応し目をしかめた。


「あん?ゴミだぁ?今、俺の事をゴミ扱いしたのか?」


鋭い視線が送られるが、騎士の一人が見下した顔で言った。


「ゴミにゴミと言って何が悪い?」


「はぁ…これだから騎士は嫌いなんだ。だから―――――――皆、ぶっ殺してやるよ」と腰に提げていた鉄斧を取り出す。


目のきつい少女は鉄斧を構え、唐突に騎士達の隊列に走り込んで行く。


数人が迎え撃つ構えをするが、接触の瞬間にレイラが上へ飛翔した。


「と、飛んだだと?!」


空中で回転をしながら、騎士達の頭上に斧を振りかざす。


「さぁー皆殺しだ!」と目を光らせ、騎士達のど真ん中に突っ込んだ。

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