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魔王と呼ばれた女剣闘士を買った少年の物語Ⅰ  作者: 飯塚ヒロアキ
第二章 アレー・ソリスの登場
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小さな泥棒 その4

ヨハンネが逃げるように立ち去った後、二人だけの沈黙が続く。


その者は顔を引きつりながら、ミネルヴァを横目で見た。


それに気がついたのか、ミネルヴァが質問した。


「そう言えば、名前?」


思い出したかのようにその者をミネルヴァが見下ろした。


「え、おいらか?おいらはハルトって言うんだ」


「ハルトですか。では一つだけ忠告しておきます。もしも、ご主人様に迷惑を掛けたら考え直す時間は与えません」


ハルトはミネルヴァから殺気を感じた。


今でも殺すと言わんばかりだ。


一歩下がると必死、自分が出来る事を主張した。


「おいらはむ、むしろ役に立つ!ほら、小柄だからあんちゃんの命令さえあれば邸宅とかに侵入できるし、密偵は大の得意なんだ」


「それは、いずれわかる事です」とミネルヴァはヨハンネの所へ歩いて向かった。






ちょうどその頃、帝都マキシリアンにある皇居にて。


フェザールは一枚の絵に目を輝かす。


「実に素晴らしい」とフェザールは何故か上機嫌だった。


手にするその一枚の絵には皇居が黄金色に輝くように描かれている。


現実の皇居とは形も規模も全く違う。


左下には帝都マキシリアン、黄金都市計画と書かれている。


どうやらフェザールは帝都を丸ごと黄金都市とするつもりである。


その莫大な金はどこから手に入れるのだろうか?


「主様。只今、リッセルの粛清から帰って参りましたわ」と、先ほどまで居なかった二人の美女がフェザールの玉座の背後に並んだ。


「早かったではないか?今回は誰がやったんだ」


「はい!はーい。俺だよ」と無邪気に手を挙げる。


それに、いつもは釣り上がった目を緩ませる。


「レイラかぁ。どうだった?久々の殺しは?」とレイラと言う少女に顔を向けた。


レイラ・レライ


ショートヘアの茶髪。


ホワイト・スネーク隊所属。


斬り込み隊長。


幹部である四人衆の一員。


性格は短気で、口調が荒い。


人を殺す事を好むが、顔立ちが悪い男を嫌う。


また、同じく顔立ちが悪い男の血を浴びるのを極度に嫌う。


彼女は残念そうな素振りをして返事した。


「ご主人様?あいつら、弱すぎて退屈だった。それよりさぁ?ご主人様を殺させてくれないかな」と怪しい笑みを見せた。


「バカを言え。バルカスに新しいターゲットでも見つけてもらうのだ」


「ちぇ。はいはい。りょーかいしました」と敬礼する。


「ロナス?奴の動きはどうなっている」


レイラの隣にいた貴婦人のような、落ち着きのある面立ちをしている女性にフェザールが話に掛ける。


ダリア・ロナス


ロングヘアに蒼い髪。


髪は後ろに束ねて団子にしている。


ホワイト・スネーク隊所属。


密偵及び工作員。


四人の衆の一人である。


彼女は見た目通り元々は貴族の婦人だった。


しかし、夫は戦場で戦死した。


路頭に迷っていた所をフェザールに拾われた。


ちなみに、ヨハンネな少し前に出会った町娘は彼女である。


「主様。順調に動いているようで、アレーは現在、プルクテス内部に潜伏中ですわ」


その言葉にフェザールが大きく頷いた。


「うむ。君はやはり優秀だなぁ~。あんな危険な所でも密偵を完遂するなんて」


「いえいえ。これも主様の根回しが効いているのですよ」


「あと二人はどうした?」と頬杖をつく。


レイラはフェザールの前に回り込み、手にする地図を覗き込む。


「あいつらは、手下を率いて北部戦線に参加しているぜ。それよりよぉ。なんだよ?その絵は」


「レイラったら。そんな事も知らないのかしら」と呆れたような顔をした。


「うるせぇ。ババァ」とレイラはダリアに噛み付く勢いで言った。


「コラ、コラ。怒るな」


ダリアは指を立てて話し始めた。


「いいレイラ?これは主様の黄金都市。富みと権力の象徴として帝国の強大さを海外に知らしめる為なのよ」


それにレイラは腕組みをして聞いていたが頭を傾げる。


「俺にはよくわかんねぇな。力こそ全てとか言ってなかったか?なら武力さえありゃあ問題無くないか?」


「政治と戦略は違うぞ。それに、植民地化した国を抑圧するにはこれが必要なのだ」


「主様は常に未来を考えておられるのよ」


「プルクテスさえ、攻略してしまえば、この大陸は、私が掌握した事になる」


フェザールの野望、それは大陸を統一した後、海外に進出し、植民地にする事である。


しかし、プルクテスは違う。


全て根絶やしにする予定だ。


理由はフェザールの母親がプルクテス人に暗殺したからである。


誰かはわからない。


プルクテス人の誰かが、フェザールの母親を殺したのは間違いなかった。


過去に調べた事があったが、ジャバ王の手下までで行き詰まってしまい、犯人は不明のまま。


ジャバ王の王宮は警備が厳重であり、海に囲まれた離れ島に建設されいる為、一つしかない石橋を通らなければ、そこには行けない。


よって、根絶やしが手っ取り早い事になる。


作戦は、全帝国軍による完全に包囲による総攻撃である。


親衛隊も参加予定。


しかし、完全包囲には兵力は足りない。


そこで、今、大陸の隅々に流れている、奴隷解放戦争のフレーズである。


それはフェザールによる情報工作であった……


(駒は動いた。後は、待つのみ……)




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