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魔王と呼ばれた女剣闘士を買った少年の物語Ⅰ  作者: 飯塚ヒロアキ
第一章 黒髪の少女との出会い
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ワインを輸送せよ! その3

一本の矢が彼女の眉間にめがけて、飛んでいく。


放った男は当たったを結果を待たずに思い自慢し出した。


「どうだ!俺様の腕前は?」


しかし、誰も褒めなかった。


それよりも、逆に驚きとどまっている。


瞳孔が開く者までいた。


「あぁん。どうした?てめえら」と振り返り、少女に目を送る。


確かに矢は当たったはずなのに、まだ立っていたのだ。


「ば、ばかな!?」


驚くのは無理もない。


ミネルヴァは当たる寸前に矢を左手で、掴んでいたのだから。


とんでもない瞬発力で矢を止めたのである。


それは、雷より速かった。


神技と言うべきであるが、彼女にとっては凄い事でもない。


当たり前なのだ。


それよりも、普通は避ける方を選ぶのだが彼女はそうしなかった。


恐怖心を煽り、相手の戦意を裂くようにしたのだ。


ミネルヴァはその矢を手から放し、盗賊に向かって歩き始めた。


「この野朗!踏み潰してやる」と数人が騎馬で突撃する。


しかし、衝突の瞬間、彼女は飛び上がった。


後ろに、乗る射手は何かが刺さった感覚になる。


恐る恐る、自分の腹部を見ると、血が滲み出ていた。


その後、白眼を向き、馬から受け身もせずに頭から落ちた。


「己!」と別の盗賊が馬から降りて向かう。


彼女は再び、構え歩きだす。


まるで、あの頃の剣闘士のように。


剣で横から斬り掛かるが、籠手で弾き返される。


「何!?」


「もらった!」と別の男が剣を振り下ろそうとした。


しかし、当たらない。


体をねじらせて避けたのである。


その男の腹部に膝蹴りし、背中に肘を落とす。


肋骨が折れる音がした。


「かはっ」


「このぉ!」と剣を突き立てるが、剣で受け流し、相手の勢いを利用し、右肩に剣をめり込ませる。


その後、足蹴りをし、別の相手にぶち当てる。


「野郎ども!挟みうちだ」


彼女の前、後ろから同時に斬りかかる。


「どりゃあ!」


「しねぇーー!」


互いに切り払いの形をとった。


しかし……


「え?」と拍子抜けした声が漏れた。


よく見ると、横腹に仲間の剣が刺さっていて、仲間にも自分の剣が刺さってた。


目線を下ろすと、彼女はかがんでいたのだ。


込み上げてくる熱。


目の前が、真っ赤になり、立ちくらみが始める。


そして、膝から崩れて、真っ暗にあった。


「てやー!」と二刀流の刀剣男が、彼女に斬りかかる。


ミネルヴァはそれを踊る様に避ける。


「さっさと、死にやがれ!」


「死ぬのは、貴方です」と初めて言葉を発した彼女は、無表情。


焦りが無ければ、余裕な笑みも無い。


淡々と人を殺していくみたいだった。


その姿はまさに、殺人鬼だ。


盗賊など、相手にもならない。


遊び相手にもならない。


しかし……


「ご主人様に危害を加えようとする者は、私が消します」


「黙れぇ……あれ?」と二刀流の男が違和感を感じた。


何故なら、自分の両手が無いからである。


よく見ると、彼女は切り上げている形をしていた。


斬られた痛みが、時差の様にやってくる。


「う、うわあああああ!いでぇ!いてぇ」とのたうち回る。


それを目障りに思ったのか、無言で止めを刺した。


それから、残った盗賊らを慈悲も無く、急所を斬り裂いていった。


柄で顔面を打撃したり、ボウガンの矢で相手の首を刺しりもした。


そんな、中でも彼女は顔色一つ変えなかった。


例え、返り血を浴びようとも。


「あ、あいつは、悪魔だ。サタンの子供だ!」


「死にたくねぇ。俺はごめんだ」と頭を置いて、一目散に逃げていった。


それを見ていた彼女は、先ほどの刀剣を両手に取り、ナイフ投げの様に逃げる二人の背中に目掛けて投げた。


一人は後頭部に、もう一人は、心臓部分に。


そして、彼女は、また歩み始めた。


盗賊の頭は腰を抜かし、持っていたメルスを捨てる。


「ま、待て!待て。ひぃぃぃ」と両手を前に突き出す。


彼女は頭の目の前に立ち、剣を頭の首に当てる。


「貴方にお尋ねします。貴方の盗賊はこれで全部ですか?」


「それ以上は、い、いねぇよ。皆お前がやりやがった……」と辺りに盗賊らの死体が累々と横たわる。

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