影の組織
この世界は残酷だ。
財力を持たない者は、のたれ死ぬか、奴隷となる。
今日も大陸の各地で人狩りが行われていた。
そんな時、どこからかは特定が出来ないが、噂が流れていた。
帝国による奴隷の解放戦争。
事実、帝国軍は虐殺、略奪などの行為は無く、抵抗する部隊及び王国軍、貴族軍にしか攻撃をしない。
奴隷などの下級国民らは解放される。
これが、貴族や王族には理解出来ないでいた。
何故、自分より低い階級層は狙わ無いのかと。
それは同じく、帝国内でも不安を抱く者が現れ始めていた。
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――――――――とある地方軍、野営キャンプにて――――――
「何だ、この書文はっ!!!何故?略奪をしてはいけない?!!何故、奴隷を殺してはいけない!!
「弱い者の味方とでも言いたいのかッ!!英雄気取りのクソガキが」
ロール状になった紙を近くに控えていた兵士に投げつける。
この短期の男はリッセル将軍。
名家に生まれ、親の七光りで、この職に就いた人物である。
本当であれば、帝都の安全な後方勤務のはずであったが。
皇帝直々の命令により、反帝国派の掃討戦に出陣させられた。
彼もまた下級国民を酷く軽蔑している。
つまり、フェザールが気に入らなかった。
(なぜ、この私が下賎の者の命令されなければならない!)
リッセルが歯軋りをし、苛立つ。
「…あの…リッセル将軍?先遣隊の指揮は誰が執るのでありましょうか?」
「それは各自の部隊長に委任しているはずだっ!!!さっさと反対派の街を攻め落とせっ」と唾を吐き散らす。
そんなとき、外が騒がしくなった。
そして、叫び声が聞える。
「ぎゃあああああ――――――っ!!!」
野営テントに何が飛び散る。
「な、何事だ!?お、お前ら見て来い」
従うように入口の近くに居た兵士二人が剣を抜く。
一人が恐る恐る外を覗いた瞬間、何者かの剣が兵士の体を貫いた。
「え?」
その兵士は何者かに蹴り飛ばされ、もう一人の兵士の方へ飛んでいく。
一瞬の出来事で、驚きとどまってしまった。
「んだよ。弱くてつまんないなぁ」
本当につまらなそうに、頭をポリポリと掻く。
謎の者とリッセルの視線が重なる。
「あっリッセル将軍、ご主人様の命令で、てめえを殺しに来たぜ」とニッコリと笑った。
「おのれッ!」とテントにいた兵士長が斬り掛かるが。
返り討ちにあった。
首元をはね飛ばされ、兵士長の頭部がゴロゴロと床に転がる。
それに何人かの兵士が驚きとどまる。
謎の者は返り血を浴びるのが嫌いなのか。
飛び血を避けるように何歩か後ろに退けた。
しかし、避けきれず、足に少し血がつくと、嫌そうな顔する。
「あっ。畜生、汚ねぇな」
腰に巻いていた布切れで直ぐに拭き取る。
誰だこいつは?
リッセルが謎の者の全体を見る。
すると、身に着けているのは帝国軍軽装歩兵の鎧。
しかも胸がある。
つまり女だった。
我にかえったリッセル将軍が震えながら言った。
「き、貴様、まさか……あの例の…」
「あーやっぱり、調べてたんだ?俺達の事を」
リッセルの近くに居た私兵は震えが止まらなくなり、歯をカチカチと鳴らす。
まるで、化け物と遭遇したような感じだ。
リッセルは私兵を使い、皇帝にまつわる噂を確かめる為、帝都に密偵を放っていた。
そのとある噂とは皇帝の影の組織、“ホワイトスネーク隊”の事だった。
別名“白蛇部隊”。
(噂では、右肩に蛇の刺青があるはず……)と私兵の一人が心の中でつぶやき、視線を右肩へ向ける。
(そんな………)
私兵が声を震わせ、涙を流す。
「白蛇じゃないか……ちくしょう……」と一人の私兵が言葉を漏らした。
「はぁダメだろ?ご主人様の言う事はちゃんと聞かないと。ペットでもお利口にしているのに」と頭をぽりぽりとかいた。
「ふ、ふざけるな!この飼いならされたメスブタが」
それに彼女は鼻で笑う。
「言ってくれるねぇ。てめぇの状況わかってるか?わかってないよな。あ――でも苦しまずに殺してやる。慈悲とか、同情とかではないぜ。ただ、汚いゲロみたいな血を浴びたくないからだ」
「な、何?!」
「教えてやるよ――――」というと、余裕なのか両手を広げ、言葉を続ける。
「――――俺はな、相手を痛めつけて、泣き叫びさせ、血の全てを体内から流し出して動かなくなっていく姿がたまらないんだぁ。まるで、ドールみたいでな」
彼女は楽しそうに話していたがリッセルを見ると顔をゆがめる。
「だが、お前の血の色はドス黒くて汚い。今にも吐き気がする、わかるかこの気持ち?わかんねぇよなぁ?」
悪魔のように相手をあざ笑う。
「貴様は狂っている。異常者だ。異端者だ!ええぃ。奴を殺せ。奴を殺した者には、金貨100枚出す!」
その言葉に、反応し兵士達が戦う姿勢を見せた。
「おっ、“俺を殺してくれるのか”?」と数人の相手がいる状況でも余裕な感じである。
不意をつくかのように、兵士が四方八方から槍や剣で突き刺そうとする。
だが、それを全て避ける。
まるで自分は幻をみているようだ。
剣が当たりそうで当たらない。
確かに、彼女目掛けて剣を振り下ろしているのに、影のように、空気の様に溶けてなくなる。
「馬鹿なっ!?」
彼女が背中に隠していた柄の長い斧を手にするとブーメランのように相手に投げる。
兵士らはの体は簡単に切り裂かれ、バタバタと崩れていく。
時には頭に突き刺さった。
「ぐわぁっ」
「アハハハハッ!!!死ね!みーんな死んじゃえよっ!!!!」
斧が振り下ろされる度に、鈍い音がした。
そんな彼女の姿を離れた場所から観戦していた者達がいた。
「あらあら。レイラったら、皆殺しにしちゃうつもりだわ」
「別に構わないのね。だって、みんな役に立たないから」
「ウフフ。そうね。主様も呆れてたし。金食い虫は早めに潰さないといけないわ」
その日、白い布で張られた野営地は真っ赤に染まり、生存者は誰一人残らなかったのである。
後日、他の部隊には敵の襲撃を受けたと報告され、リッセル将軍の後任がすぐに着任したのであった。




