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魔王と呼ばれた女剣闘士を買った少年の物語Ⅰ  作者: 飯塚ヒロアキ
第一章 黒髪の少女との出会い
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南部連合 その4

――――――――大陸南部に位置する国々に衝撃が走った―――――――


―――――――南部だけではない。


北部、東部、西部、同じく混乱している。


南部を統一するプルクテス国の王ジャバは緊急に指導者議会を開いた。


議会が開かれるのは、ジャバ王が南部を掌握した時、以来の事である。


それだけ、事態が重大ということ。


円卓の机を囲うように指導者らが腰を下ろしている。


それを見下ろすように一段上げられた床に豪華な装飾された長椅子があった。


そこにジャバ王が腰を据える。


ジャバが口を開く。


「―――諸君らも知っての通り、帝国にて“反乱が起きた”」


それに指導者らはどよめく。


言いにくそうに一人が口を開ける。


「……皇帝ボルドノアが暗殺されたと聞きました」


それに隣に座っていた者が反応する。


「私のところにもそのような報告が来た」


「まさか、こんなことがありえるのか?」


反乱を起こしたのは国民ではない。


一番、可能性がある奴隷でも剣闘士でもなかった。


反乱者は第3皇子フェザールである。


皇子直々の反乱など聞いた事が無ければ、この大陸で起きた事も無い。


どう対応すれば良いのかわからないでいた。


一人の指導者が立ち上がり、威勢よく言った。


「あの“暗殺事件”のことが明るみになれば、我々はヤバイっ!!!叩かれる前に、帝国に進撃しようではないか?!!」


それに、中年の指導者が机を叩いて椅子を倒した。


「気は確かかっ?!帝国の第一軍団、第二軍団を誰が相手するのか!!!私はご免だ!悪魔の軍団など、命がいくらあっても足りぬっ」


ジャバが、「黙れ」と罵声する。


二人はゆっくりと席に腰を下ろした。


「…案ずるでない。今まで通り、金貨を渡せは問題などない」とジャバ王は余裕の表情を見せる。


プルクテス国は奴隷の都市と知られているが、別名“黄金都市”とも言われてもいた。


山脈のほとんどが金鉱山である。


その為、加工技術が独自に発展し、装飾品は大陸一と言われる。


プルクテス産の装飾品の輝きは、富豪や王族の心を奪ばった。


帝国も同じくそれに魅了されていた。


そんな豪華な金銀財宝がタダで送られて来るのであれば、文句を言う者は誰も居ないだろう。


いいかえれば、賄賂だ。


帝国をまとめる大臣らも、多数はジャバ王の操り人形となり、奴隷制度を容認し続けた。


ジャバ王の手は、帝国軍の将軍にまで渡っていた。


(これだけ、根っこを生やしているのだ。何を恐れる事がある……か)


しかし、その行為が全て無駄になるとは、ジャバ王には予想もつかなかった。





==========================================================================





帝都、マクシリアンにある皇居の玉座に若い成年が座った。


顔は凛々しく、整った美男子である。歳は21。


玉座に座るには早過ぎると思われてるが。


後ろには、その皇帝の専属奴隷と思われる若い美女達が控える。


「…皇帝陛下」


大臣列に並ぶ、肥満体の中年男が皇帝の前に出た。


何か不服があるのか、それとも恐れているのか、わからないが挙動不審になりながら、自分の汗を布で何度も拭き取る。


(汚らしい……豚め……)


「何だ?」と頬杖をつき、目を細めた。


何故なにゆえ何故なにゆえ、実のお父上を。ましてや兄弟までも――」


彼は暗殺という言葉を避けた。


少年は鼻で笑う。


「―――簡単な事だ。右手は武力によって制し、左手は欲を満たす。それを実現させるには、邪魔だった」


みかどの間と言われる場所は、普段から静寂ではあるが、今日は、違う雰囲気が流れていた。


「何を申されているのか、理解致し兼ねますな陛下…?」と今度は軍人が前に出た。


この軍人は中央に総本部が置かれている帝都防衛隊の将軍である。


少し前にも話したが。プルクテス国の操り人形の1人だ。


いつでも、鞘から剣を抜けるようにしたのか柄に手を置いた。


その行為だけでも、主に対しての侮辱に当たる。


将軍が言った言葉にフェザールは少し驚きを見せたが。


口を押さえ何かを堪える。


「プッ。アハハハハハ――――――ッ!!!」


フェザールの笑い声が響く。


そして、異様な雰囲気に包まれた。


笑を堪えながら、フェザールが言った。


「良いよ、良いよ。その反旗を企てるような言い方、態度、目つき、実に素晴らしい」と両手を広げる。


感動したのだろうか、手を数回、叩いた。


「貴様は皇帝に相応しい人間ではない!!!」と大臣列からまた1人が前に出てくる。


(プルクテスの膿が3人も居たか…)


「いやまだ居るかも知れんな……煽ってみるか」


親衛隊の騎士が腰を折り、フェザールの耳元でささやいた。


この騎士は、左目に眼帯つけているフェザール親衛隊長のバルカスだった。


バルカスはフェザールの幼少期から親衛隊として仕えており、忠誠心と剣の腕は親衛隊の中でも群を抜く。


「陛下?回りくどい事せず、証拠を抑えてやる方が早いかと思いますが……」


「バルカス。たまには、“心理戦”というものをしてみたいのだ」


その言葉に、バルカスは納得し、白い歯をこぼした。


「陛下は腹黒いですな?」


「そうか、普通だと思うが」と微笑むとバルカスを見上げる。


「先ほどから何を話しているッ!!」


将軍が腹を煮え繰り返し、感情を爆発させた。


「もぉ――我慢ならん!諸君、この者の母親は農民だっ!!!」と指を差す。


フェザールの母親は、とある事件で何者かにより暗殺されている。


皇帝に指を差すとは簡単に言えば、反逆を意味する。


将軍が言葉を続けた。


「つまり、純血の皇族ではない。何故、そのような下衆に従わなければならないのだ」


「そ、そうだ!我らの皇帝陛下を手にかけた大罪人である。衛兵!この大罪人を捕らえろ!」


しかし、帝の間を守る衛兵は直立不動のまま。


誰も反応をみせなかった。


動揺も見せず、まるで石像の置物のように一点だけを見つめていた。


「どうしてだ!貴様らはあのような者を皇帝として認める気か?!」と将軍が言葉を吐き散らした。


帝の間を守る衛兵達が、持っていた槍の石突きで大理石の床を同時に叩き、一斉に言った。


「「「我らは皇帝陛下のモノ!我らはフェザール様の駒!」」」


帝の間で、そんな声が端まで響き渡ったのである。

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