4−終 事件の傷跡
八月四日。昼前。
神部祥子は、穏やかに目を覚ました。
場所は妖山市総合病院。市内で最大の規模を誇るその病院の一室で目を覚ました神部は、ふらつく頭を両手で支えながら起き上がり、辺りを見回す。
自分の腕から伸びる点滴のコード。窓際の花瓶に生けられた、リンドウの香りが仄かに鼻にかかる。
入院患者用の浴衣を着てベッドに腰掛ける自分は、さながら重病を患った薄幸の少女のようだ、ってそんな柄ではないか、と神部は嘆息する。
どうやら個室らしい事に神部が気がついたのは、起きてから一分程経ってからだった。ベッドは一つだけで、右手側には小さな机とソファがある。
その机の上にあるデジタル時計に目をやれば、8/4の表示の隣に11:05とある。
神部はいつからここに居るのだろう、と思い出そうとした。
意識がなくなったのはいつからだったか。大体三日前位から、何か……とても恐ろしい事が起こっていた筈だ。まるで、自分の存在そのものが根底から否定されるような、恐ろしい何かが。
思い出そうとする……が、頭痛が酷い。まるで無意識的に思い出すのを拒否するかのように。体を起こすのが辛くなり、神部は再びベッドに身を預けた。
そうしてしばらく足れる点滴の数を数えて時間をつぶしていると、病室の扉がゆっくりと開いた。
「神部さん……あ、目ぇ覚めたんだ!」
「おぉ、本当だ……ふぅ、良かった……」
病院で出すには少々大き過ぎる声を上げた、長い髪を二つに結った色黒の女は、小森美紀。
次いで入ってきた、安堵の溜め息を吐く、右手に包帯を巻いた丸坊主の男は空峰雲海。
考えなくても、彼らがどうやら見舞いにきてくれたらしい事は寝起きの神部にも分かった。
「すまないな、二人とも。こんなに情けない姿を晒してしまって」
神部は起き上がりながら、自嘲するようにシニカルに笑む。
髪が乱れ、少し汗も掻いているし、半袖の腕からは点滴のチューブが伸びているのだ。
普段から自分自身のイメージというものを強く持っている神部としては、今の自分はあまり人に見せるべきでない『弱い神部祥子』である。
俯く神部を見て、小森は相手が病人だと分かっているのか怪しい位声を張り上げ、いたわりの欠片も見せない程強く神部の背中を平手で二三度打った。
「なぁに言ってんのよ!
ぶっちゃけ普段のアンタは不気味だから、そんくらいで良いのよ!」
「おいおい、不気味は言い過ぎだろ」
「あ、あはは……」
雲海に窘められて、小森は苦笑いを浮かべながら、大人しくベッドの隣の椅子に腰掛ける。雲海がごめんね、と神部に頭を下げながら、彼女に習って椅子に座る。それを見て、神部はついついいつもの調子で口を挟んでしまう。
「君に謝られても仕方ない。無礼なのは小森美紀ではないか。
小森美紀本人から謝罪の言葉にしか、適切な答えは」
「あーもー、めんどくさ。いいじゃん、コイツが謝ってんだから」
小森が本当に面倒臭そうにそう言い放つ。
雲海はどこか不服そうな視線を小森に向けるが、否定する様子はない。神部としては勿論、納得がいかないが、場の空気を無視してまで我を通すメリットはない、と判断する。
「では、それは良いとしよう。……しかし、幾つか分からない事があるのだが」
「ん? 何?」
小森と雲海の表情が少し強張ったのを、神部は見逃さない。この様子ならば、何か知っている。神部はそう確信して、二人の方に身を乗り出す。
「私は、何で入院しているんだ?
ここ数日、体調はあまり良くないが、入院する程ではなかった筈だ……」
「ええっと! ……そ、それはね」
小森が素っ頓狂な声を上げながら、立ち上がる。
額に指を当てながら、何かを思い出すように唸りながら、小森は説明を始める。
「神部さんの家で……そう、ボヤ騒ぎがあったんだよ。えっと、キッチンのガス漏れのせいで。
それで、神部さんは煙に巻かれて、意識を失った……んだよね、雲海君」
恐る恐ると言った様子で雲海に確認をとる小森。
所々で言葉に詰まる彼女は、まるでどこかに用意された原稿を読んでいるようである。神部は彼女を訝しげに見るが、すぐに雲海の言葉に掻き消される。
「あぁ、そうだ。丁度その日、小森さんが神部さんに誘いの電話を入れたんだ。
そうしたら、神部さんは具合が悪いって言ってたそうじゃないか。
気になって僕らがたまたま見舞いに行ったから良かったけど、火傷すら負わなかったのは本当に奇跡だったよ」
「そう言えば、君の右手はどうした? 酷い怪我のようだが」
「家で料理の手伝いしてたら、包丁で盛大にぶった切っちゃってね。
僕の料理の腕は君も知ってるだろ? なんせ、調理実習は同じ班だったしね」
座ったままの雲海は、小森と違い世間話のような口調で流れるようにそう言った。神部は雲海の目を数秒眺めるが、特に何かを企むような様子は見受けられない。
「そう……なのか」
そのような記憶はない。しかし、何も覚えていない以上、嘘だとも言い切れない。
煮え切れない神部だったが、一応の納得を示し、次なる質問を繰り出す。
「あと、ここ数日の記憶が妙に曖昧なんだ。何がいつ起きたとか……殆ど思い出せん」
「寝ていたんじゃないか? 生憎、僕らは昨日以外、神部さんとは会ってないけど」
雲海はそう言う。しかし、ずっと眠っていたとは考えにくい、と神部は懐疑的であった。
しかし頭をひねって記憶を思い起こそうしても、すぐさま再び頭痛に阻まれる。
恐らく、ここから先、何度思い出そうとしても同じような目に遭うだろう。神部は諦める事にした。きっと、余程体調が酷かったのだ。だから思い出せないのだ、と。
「そうか……」
「他に気になる事はある?」
「いや、聞きたい事はそれだけだ。思い出せないのは、きっと疲れているからだろう。
それと……」
神部はチラリと雲海と小森を順に見やる。少し身じろぎをしつつ、照れくさそうな彼女の表情を見て、反応を返したのは小森だった。
「あ、トイレ? ここ出て右側にあるよー」
「……君は本当にデリカシーというものを知らないな、小森美紀。
一応ここに君の想い人がいるのだし、俗に言う気の訊く女アピール、とやらで点数を稼いでおくべきだろうに」
「それよりほら、早く行ってきなよ。漏らしても拭いてやんねーからなー」
「……下品な女だな、君は」
照れる事すら忘れて呆れ果てる神部は、雲海とは視線を合わせないようにベッドを降りて歩き出す。足取りは至って普通。健康そうな、軽い足取りであった。
*
神部が点滴棒を片手に病室から去った後、小森は額に浮かんだ汗を拭って、盛大に溜め息を吐いた。
「ふぅ。なんとか誤魔化せたね」
「君、演技下手過ぎ。神部さんすっげぇ怪しんでたぜ」
「アンタは妙に上手かったよね……」
小森は神部が出ていった扉の方を見て、呟く。
「……昨日の事は忘れてるっぽいね」
「そうだね。まぁ……一時は魂を抜かれて、本当に生死を彷徨ったんだ。
代償が一日二日の記憶なら安いものさ。それに」
「覚えてない方が良い……そう言う事?」
小森の確認に、雲海は無言で首肯する。
何せ、己と言う存在そのものを徹底的に踏み荒らされたのだ。精神崩壊寸前まで追い込まれた挙げ句、化け物染みた他ならぬ自分のおぞましい姿を見せつけられた記憶なんて、ない方が良い。
何も覚えていないのなら、妖怪の事も、雲海の仕事の事も、全てなかった事に出来る。
妖怪の存在が一般に浸透し、人間が彼らを恐れ始めれば、妖怪達は再び中世の日本のように力を付け、町中を跳梁跋扈するようになる。それを阻止する立場の雲海としては、妖怪の存在はあまり表立って欲しくない。
だが。
「しかし、アレだね。妖怪って、本当に居るんだね」
小森美紀は、既にこの事件の一部始終を雲海の側で目撃してしまっている訳であるのだが。もはや取り繕う気がない雲海も雲海だが、簡単に信じてしまう小森も小森であった。
小森は、力無く微笑む雲海に向き直って、小首を傾げて眉を少しだけ顰める。
「でさ、結局、何が起きてたのか、私よく分からないんだけど。
あの妖怪が神部さんになりすまして生活してた……って事なの?
あの妖怪から、話は聞けたの?」
雲海が本気で殺しにかかった変化妖怪エイ・エスは、見事に雲海に倒され、命だけは見逃してもらい、雲海にひれ伏しながら事の詳細を語った。事情の聴取は既に終わっており、雲海はその内容を小森に語ってみせる。
「大体合っているよ。
アイツも住処を追われて町に降りてきた妖怪連中の一匹らしい。
一先ず町を散策するために、色んな人に化けながらターゲットを狙っていたようだ。
そして、杵柄高校の生徒会長に化けて高校に侵入した時、神部さんを見つけたんだ。
彼女の気丈な心と、硬い分だけ脆い内面を見抜いたエイ・エスは、そのまま神部さんにターゲットを絞った」
「それ以降、あの妖怪はずっと神部さんに変身してた……って事?」
「そうだね。ただし、なりすましは完璧じゃない。
大きく二つの不気味さ、を残しておくのさ」
「二つの……不気味さ?」
「一つ目。
敢えて矛盾を生じさせる。
僕らは関わっていないけど、前に生徒会主催のキャンプがあったらしい。
神部さんは欠席していたんだが、神部さんに変身したエイ・エスが代わりにキャンプに行ったようだ。
そして、神部祥子がキャンプに参加した、と言う証拠を残してくる。奴は、写真に写りこんで証拠を残したらしい。
でも、神部さんの記憶にはないから、ここで矛盾が発生する訳だ。
それだけじゃない。これは僕らも関わった話だ。
一昨日、僕と君と神部さんの三人でプールに行っただろ?」
「うん。コーラぶちまけられた日ね」
「あそこに居た神部さんは、実はエイ・エスだったらしい」
小森は大口を開けて、呆然としている。かと思えば、自らの体を抱いて、少し震え始める。
「あれ、そうだったんだ……」
「そうさ。だからこそ、この事件が発覚した訳だけどね。
そして……その日の神部さん。少し妙だと思わなかったかい?」
「ええっと……そうねぇ。何か違和感はあった。
妙に明る過ぎると言うか……らしくないって感じ?」
小森の答えが100点の解答だ、と言わんばかりに深く頷き、微笑んでみせる雲海。彼は得意な話になると饒舌になるらしい、と小森は自分の心に刻み込んだ。
「そう。それが二つ目の不気味さ。
敢えて、普段のその人と違う振る舞いをする……と言うか、正確には、だ。
本来のその人が「自分の理想とする人物像」で振る舞おうとするんだ」
「……チョット日本語ガ難シイデース」
首を捻って目を点にする小森を見て、雲海は苦笑する。
「神部さんの例を挙げるよ。
エイ・エスは、他人のコンプレックスを見抜くのがとても得意なんだそうだ。
奴曰く、神部さんは「コミュニケーション能力に乏しい事」がコンプレックスだったらしい」
「……へぇ。ちょっと意外だわ。あの人もそんな風に思ってたんだぁ」
「だから奴はそのコンプレックスを克服した神部祥子として、僕らの目の前に現れた。
「馴れ馴れしいくらいに人に仲良く歩み寄る神部祥子」としてね。
僕らは理想の神部祥子作りに付き合わされてしまったって訳さ。
……そして、二つの不気味さが合わさって、最期の一手が積み上がる」
「ど、どうなる……の?」
「それはね……」
恐る恐ると言った様子の小森を見て、雲海は声のトーンを落とす。室温が二度程下がった気がする小森は、少し身を震わせてから雲海の言葉に耳を傾ける。
「目の前に、その人と同じ姿で現れる。
ここで、自分が二人居るのでは、と言う懸念が一つ、確信に変わってしまう。
目の前の自分は、語り出す。理想的な自分が、周りからどう評価されているか、を。
そしてトドメに、現れたもう一人の自分がこう言うのさ。
「私は、お前が理想とするお前自身だ。だから、もうお前は必要無い」
……怖い話だろ?」
途中から完全に怪談を語る態度を取っていた雲海。
小森は生唾を飲み込んで、そのシチュエーションを自分に当てはめてみて、もう一度大きく身を震わせた。ノースリーブから覗く肩を擦って恐怖に震えている小森を見て、雲海は満足げに鼻から息を抜いた。
「ま、事の次第はこんな所か。
僕らの突然の来訪に、慌ててメイドに化けて追い返そうとしたりって事もあるけど……語る必要もないね」
「そうね……そっか。神部さん、そんな辛い目に遭ってたんだ……」
小森は殊勝にも俯きながらベッドの皺を伸ばし始める。
雲海は怪訝な顔でそれを無言で見つめていると、小森が視線に気づいて、少しむくれる。雲海は、不覚にも少し可愛いと思ってしまうが、その心はやんわりと胸の奥に仕舞い込む。
「それよりさ……」
「ん?」
小森が神妙な声を上げながら、枕の位置を直す。雲海は、小森の動く尻と髪を見やりながら気のない返事を返す。
「アンタが神部さんの部屋に突入してった後、私部屋の外から見てたんだ」
「……そうかい」
雲海は特に驚いた様子も見せずに、静かに小森に続きを促す。
「本当に驚いたわ。なんか爆発してるし、血とか平気であちこち飛び散ってるし。
バイオ4で慣れてなかったら失神してたわ、アレ」
「ははは……ゲームで済めば、神部さんの部屋でボヤがあった、なんて誤魔化す必要もないんだけどね」
雲海が部屋を焦がしてしまったせいで、神部の部屋はしばらく使えそうにない。
彼女の気の遠くなる程大量の、しかも高そうな蔵書も既に物言わぬ煤と化してしまっている。弁償するなら陰陽師稼業を止めてバイトに励まねばならない貧乏高校生の雲海としては、このまま闇に葬ってしまいたい出来事である。
小森にその弱みを突かれるか、と一瞬でも考えてしまうが、直後、雲海は自分の愚かさを知る。
「アンタ、神部さんまで殺しかけてたわよ。爆破に巻き込んで」
「………………」
「それとも、ちゃんと調整してたの? それだけは、ちゃんと聞かせて」
小森の視線は真っ直ぐだった。
雲海を批難している訳でも、軽蔑している訳でもない。
ただ、どう言うつもりなのかを純粋に問いただす目。答えを聞いてから判断する、と言う澄んだ瞳。その瞳が一瞬だけ不安に揺れているのを見て、雲海は頭を悩ます。
雲海は口を開かない。何といえば分からない、と言った様子で、しばらくの間口を噤む。数秒間、二人は見つめ合う。静かに流れる時間。張りつめる空気。
雲海は、小森から目を逸らす事なく、真っ直ぐに見つめ返し、ゆっくりと口を開く。
「……僕は」
「きゃあああぁぁぁぁ!」
絹を裂くような悲鳴が、雲海の言葉を遮り、二人の間の固い空気にひびを入れる。
聞き覚えのある声だと感じたのは、雲海だけではない。先に動いたのは、人の声色には妙に敏感な小森であった。
小森に並んで病室を飛び出した雲海が目指した先は女性用のトイレ。廊下を歩く看護婦や入院患者の間を綺麗に縫って辿り着いたそこに、悲鳴の主、神部はいた。
彼女は、入り口のすぐ側でうずくまり、大きく体を震わせている。喉の辺りを手で押さえ、荒い息を吐きながら、目を白黒させて嘔吐いている。
「おい! 何があった!」
「止めて! 助けてぇ! 死にたくないよぉ!」
雲海が彼女に駆け寄ろうとするが、拒絶の言葉に足を止める。
慌てる雲海の目に、トイレの大きな鏡が飛び込んできた。そこに映る自分の姿を見て、雲海は気づく。
「そう言う事か……!」
彼女を襲ったのは、他ならぬ彼女自身の姿をした妖怪。
たとえ記憶がなくても、心に刻まれた深い傷が癒えた訳では無い。鏡に映る自分の姿を見て、トラウマが刺激される可能性だってある。
恥も外聞もなく泣き叫びながら床を駄々っ子のようにのたうち回る彼女に、雲海は黙って視線を送る事しか出来なかった。手を伸ばしかけたり引っ込めたり、と熱いものを触るのを躊躇うような雲海の挙動を見て、共に駆けつけた小森は眉を顰める。
「何やってんのよ、馬鹿!」
「う……ご、ごめん……」
「謝んな! ……よしよし、神部さん。大丈夫、大丈夫だよ」
小森は雲海に鋭く言いつけたあと、幼子をあやすような声を出しながら神部の方に手を伸ばすが、その手は他ならぬ神部によって弾かれる。
「止めて……近付かないで……やだ……やだよぉ」
「神部さん……」
体育座りをしながら、完全に身を強張らせる彼女を見て、小森は困惑していた。
小森や雲海が想像していた以上に、神部の心は深く抉られていた。プライド高い彼女の心は、妖怪によって粉々に砕かれてしまい、簡単に取り戻せるものではない。
二人が呆然と、為す術無く神部を見つめていると、後ろから声が聞こえてきた。
「すまん、少しいいか?」
「え、え?」
「悪いが、答えは聞いていない。通らせてもらおう」
そう言いながら二人の間に強引に割って入るのは、細面で長身の大人びたオールバックの男。雲海と小森は、その男に見覚えがあった。
「生徒会長さん……?」
雲海達と同じように悲鳴を聞きつけて駆けつけて来たその男……藤原敏哉は既に雲海達など眼中にないとばかりに、神部の方に、威圧感を振りまきながら、大股でゆっくりと。
神部は彼から遠ざかるように、トイレの床を這って行くが、やがて壁にぶつかり、それ以上逃げられなくなる。それでもなお、手を突き出しそれ以上の接近を拒絶するが、藤原は一向に介さずに神部に近付いていく。
「止めて、いや! 来ないで! なんで、なんで来るのぉ!?」
「………………」
藤原はしゃがみ込み、壁に背を付ける神部と目線の高さを合わせる。
神部はそれに怯え、彼から顔を背けて、必死に目を瞑っている。藤原は一つ溜め息を吐いて、彼女の顔を両手で挟み込み、親指で無理矢理目を開かせて、神部と目を合わせた。
「うひゃぁ……」
小森が小さく呻く。
女性用トイレで泣き叫ぶ女に無理矢理言う事を聞かせる。
傍目から見れば、生徒会長は単なる暴漢でしかないが、小森も雲海も黙って成り行きを見守る事にした。
藤原の持つ強引さは、二人には持ち合わせていないものであったから。
藤原は、低い声で、神部を鋭く睨みながらゆっくりと語りかける。
「神部。私を見ろ。私を、だ」
「……ひ、ひぃ…………」
「答えろ、神部。私は誰だ?」
無理矢理開かれていた神部の目から、怯えの色が徐々に薄らぎ始める。過呼吸気味だった荒い呼吸が、少しずつなりを潜め始める。全身から力が抜けて、上がっていた肩がゆっくりと下がり始める。
「か、会長……?」
「もう一度、問う。神部、私は誰だ?」
「ふ、ふじわらとしやせんぱい……」
「もう一度」
「き、杵柄高校生徒会会長の藤原敏哉先輩です……」
ようやく納得のいく解答を得られた藤原は、神部の顔から手を離した。
神部は既にパニック状態から脱しており、立ち上がった藤原の方をぼんやりと眺めている。藤原は雲海達を振り返り、肩を竦ませている二人を眺める。
「君たち、神部の友達か?」
「……は、はぁ」
「彼女が非礼な事をした。生徒会を代表して、謝ろう」
「いや、僕らは全く何も」
「さあ、神部。お前も謝れ」
「は、はい」
生徒会長に命令された神部は、壁に背を付けて座り込んだままの姿勢で、深く頭を下げる。
「すまなかった。何故かは分からないが、鏡を見たら急に何もかも怖くなって」
「言い訳は無用だ。やり直し」
「……皆さん、ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした」
「神部さん、また泣きそうになってるよ」
小森は困ったような薄ら笑いを浮かべながら、雲海にだけ聞こえるような小声で呟く。
恥ずかしい行いをした事と、藤原に叱られている事の二つで、神部はすっかり肩をすぼめている。恐慌状態は藤原の活躍によって完全に収まっているらしく、雲海はそれだけで安堵する。
神部は、雲海達同様に藤原にも頭を下げた。
「先程は、ありがとうございました」
「いや、構わん。私がアレくらいで動揺するとでも?」
「貴方にとって、私のパニックは『アレくらいの事』に収まるんですね……」
「折角見舞いに来てやったのに部屋に不在。
挙げ句騒ぎを聞きつけてやってきたこの私に挨拶もしない後輩を叱りつけただけだ」
藤原は吐き捨てるようにそう言いながら、溜め息を吐く。そんな彼の顔色を窺うように、神部は恐る恐る口を開く。
「ご迷惑をおかけしてしまったようで……」
「全くだ。だが……気にする事はない。
先輩が後輩の面倒を見るのは、当然の義務だからだ。
中学の頃から、お前の世話をするのは慣れているしな。
さて、病室に戻るぞ。男子がいつまでも女子トイレに居るのは問題だ」
藤原は未だに座り込んでいる神部の手を取って無理矢理立たせようとするが、神部の足はうまく立たない。腰が抜けてしまっているらしい。
藤原は小さくやれやれ、と呟いた後、神部の胴と膝裏に素早く手を回し、そのまま軽そうに持ち上げた。いわゆる、お姫様だっこである。
神部は顔を赤くして両手を振って慌て始めた。
「か、会長、何をなさるんですか!」
「点滴棒はお前が持て。私はこの通り、手が塞がっている」
「そ、その、この体勢は少し……いや、かなり恥ずかしいです!
出来ればおんぶの方が良いと思うのですが」
「その意見は却下する」
そう言って藤原は来たときと同じように、ゆっくりと歩き始める。
来たときより少し歩幅は小さめで、悠然と雲海と小森の脇を通り過ぎていく。
彼の腕の中に居る神部は未だに体に力の入らない状態で暴れようとするが、線が細い割には力強い藤原の身体は一切動じない。
「な、何故このような非効率的な手段を選ぶのですか!」
「……そんなに嫌か?」
残念そうに眉を顰める藤原の顔に至近距離から見つめられ、神部はますます慌てて口を回す。
「わ、私は……ただ、会長の腕に負担がかかるのを危惧しているのであって、嫌とかそう言うつもりは……」
「おんぶでも大して変わらんだろう。今から組み直すのは面倒だ」
「いえですが、物理学的に考えれば、やはり重心がより体の中心に持っていきやすいおんぶの方が安定性があると」
「分かった。この体勢をとった理由を述べれば良いんだな?」
藤原は神部から目を逸らす事はなく、むしろ鼻先がくっつく位顔を近づけ、静かに、甘い声で囁いた。
「私がやりたいと思ったから、だ。納得してもらえただろうか?」
「へ!? いや、ちょっと、その……そ、それはどういう……もうすこし、その、め、めいかくなりゆうを」
「そうだ、君たち」
羞恥と照れで目を回している神部を無視しながら、藤原は一度二人に振り返る。
彼の顔色は、先程と全く一緒。動揺の欠片も見られない。それはそれでどうなんだ、と思う雲海と小森であった。
「見舞いの品がトイレの前に置いてあるんだが、手が塞がってしまった。
悪いが、病室まで持って来てくれないだろうか?」
「あぁ、わかり」
「いやでーす」
雲海の承諾の台詞を、小森が朗らかに遮った。首を傾げる雲海の腕に自分の腕を絡めて、小森は彼の代わりに会話に割り込む。
「私達これからデートなんで、一秒でも時間が惜しいって言うか、そんな感じなんですよぉ」
「で、デート? そんなの聞いてな」
「いいから黙ってなさいっての!」
「いってぇ!」
怪我をしている右手を思い切り握られた雲海は、渋々口を噤んで成り行きに身を任せる。
小森の弁を聞いた藤原は、少し考えた後、薄く微笑んだ。出刃包丁のようなその細面に浮かんだ柔らかな微笑みは、固い表情の多い彼にしては、とても人間味に溢れた物であった。
「そうか……邪魔をしてすまなかったな。あとで、自分で取りに行く」
「いえいえ、私達こそ、お邪魔しましたぁ」
「ありがとう。さぁ、神部、お前の病室に向かうぞ」
「あ、あの……ちょっと待って! そ、空峰雲海!」
藤原の腕の中に抱かれている神部が、裏返った声で雲海を呼ぶ。握られた手の痛みを労るように擦る雲海は、神部の方を向いて、首を傾げてみせる。
「……どうしたんだい?」
「わ、私は何故鏡をこんなに恐れているのだ? 私は今、一体何に脅えていたんだ?」
「……僕にそれを聞いて、どうするんだい? 僕が何か知ってるとでも?」
「何故かは分からんが、君なら知っている気がして……いや、すまない。馬鹿な事を聞いた」
神部はこめかみを揉んで、自分の言っている妄言を戒める。雲海は少し首を俯けた後、神部に意外な言葉を返す。
「知ってるよ」
小森も藤原も、そして当然神部も目を見開く。
一人冷静な雲海は、恐ろしく真剣で、傍目から見れば威嚇するような厳しい顔つきで、神部を見つめ返す。
神部を射抜く鋭い視線は、神部が普段藤原から浴びる視線の何倍も鋭く彼女の心に突き刺さる。
まるで、試されているようだ。神部は、直感的にそれを感じ取る事ができた。
「でも……本当に聞く覚悟は、あるかい?」
「…………いや。止めておく」
神部は青い顔を俯けたまま、疲れたように溜め息を吐く。
「だがいつか私が落ち着いたら……その時には、是非頼むよ」
「勿論さ。ま、もし僕がその時まで覚えていたら、だけどね」
「……悪い奴だな、君は」
憎まれ口を叩く神部の様子を見て、雲海は満足げに頷き、神部と藤原に笑いかけてみせる。一部始終を見ていた藤原は、何かしらの察しがついたのだろう。小さく何度か頷いた後、穏やかな表情をしている神部の耳元に囁きをくれる。
「さて、これからようやく二人っきりになれる訳だな」
「か、会長、あまり私をからかわないで下さい……」
「やれやれ。お前は手がかかりそうだな……」
藤原と神部は、静かに語り合いながら、神部の病室を目指して歩いて行く。小森と雲海が微笑みながら二人の背中を見送っていた。神部は少し恥ずかしかったが、案外悪い気がしていない自分がいる事を、肯定せざるを得なかった。
*
病室の廊下の奥に去っていく二人の背中を見送って、雲海は呟く。
「……小森さんは、本当に恋愛の匂いに敏感だよなぁ」
「伊達に場数踏んでないからね……って何言わすのよ」
勝手に言ったくせに。雲海は心の中でそう呟きながら、ようやく女子トイレを出た。周りの奇異な視線が多少あったが、すぐに帰るので別に気にかける必要もない。雲海と小森は、神部の病室とは逆方向に歩み始める。
未だに腕を絡めたままの小森をどうするか、解くべきだろうな、と思い至った雲海が小森の方を向くと、彼女は真剣な顔色を作っていた。そして足を止めた小森は、自分より少し背の高い雲海を見上げて、どこか悲しそうな目をしている。
「ねぇ、雲海」
「………………」
「アンタ、神部さんに遠慮してたでしょ?」
雲海は答えない。彼は質問の意味が分からない訳でも、突然呼び捨てになった小森に驚いて動揺した訳でも無かった。
あまりにも図星過ぎるその問いに戸惑い、そして答える勇気がなかったからだ。沈黙を肯定と取った小森は、言葉を続ける。
「雲海は……やっぱりあの時、神部さんの安全は……」
「……その通りさ。殆ど、考えていなかった……。
あの妖怪を叩きのめす……それしか頭になかったんだ」
雲海は泣きそうな顔で答える。
妖怪と立ち合ったときの出来事を、彼は正確に覚えている。あの時自分が抱いていた感情も、記憶にある。
神部祥子の魂が人質に取られている事は知っていた。しかし、攻撃の手は休めなかった。
もしも、彼女の体が傷つけば、死んでしまったら……と言う冷静な思考も、ちゃんとあった。
しかし、彼は。
「我慢が、できなかったんだ」
「……え?」
「神部さんを助けなきゃって、分かっていた。
でも、考える前に体が動いたんだ。あの危険な妖怪を葬れ。ぶっ飛ばせ。殺せ……って。
腕が勝手に符を投げつけて、口が勝手に符に命令を下して……目は、妖怪しか追えなかった。
心の何処かで彼女を巻き添えにしても、構わないとすら思っていたのかもしれない。
何でかはよく分からないけど……でも、そう思ったのは事実なんだ」
小森は何も言わない。雲海は、弱々しい笑顔を顔に貼付けた。
「……神部さんも、自分を殺そうとした人と一緒に居たい人なんて居ないだろ?」
どことなく打ちひしがれたような雲海の、その沈んだ顔を見て、小森は少し戸惑った。
別に彼を責める気はなかった。ここまで気にかけているとは思っていなかった。小森は少し悩んだ結果、すぐに答えを出した。
「ていっ」
「い、ぎゃあああぁぁ!」
彼の怪我をしている右手を、先程以上に思い切り、全力で握りしめた。
悲しみに沈んでいた雲海の表情が、今度は痛みに歪む。
それを見て小森は楽しそうに、実に楽しそうに声を上げて笑う。大人しい雲海も流石に声を荒げて憤慨した。
「何すんだよ、ってぇなぁ!」
「うっさいわよ。ここ、病院なんだから。お・し・ず・か・に!」
「すみませーん、ここに怪我した所を握り締めるドSの女の子が居るんすけど誰かー」
「……もっかい握られたいんだ?」
「嘘だよ嘘だってば止めて止めて止めてゴメン小森様許しぎゃあああぁぁ」
小森の腕をタップする雲海だが、小森は言う事を聞かない。握りしめたまま、小森は雲海を諭すように話を続ける。
「確かにちょっと乱暴だったけど、アンタは無傷で神部さんを助けたじゃん。それで良いのよ」
「でも、心の傷は深いぞ? 多分、PTSDとか呼ばれる奴だ。精神科医に罹らなきゃならないかも知れない。
僕がもっと早く気づけていれば」
「それはしょうがないの! 私だって気づかなかったんだもん、鈍いアンタなんかが気づく訳ないじゃん。
傷は、結局ただの傷。時間をかけて、ゆっくり癒していけば、いつかきっと元に戻るわ。
私達が、あの子の側で癒してあげればいいんじゃないの? あ、あの会長さんの邪魔にならない程度でね。
だから、アンタが気に病む事なんて、これっぽっちもないんだってば!」
「そうは言ってもなぁ。部屋焼き払っちゃったし。
僕が本を焼いたって知ったら、神部さん怒るだろうなぁ」
「アンタは神部さんの命と部屋の本のどっちが大事なのよ、ホント馬鹿みたい」
「馬鹿って……火事って結構面倒なんだぞ? 片付け、保険金、改装、他にも」
「あーもう! ウッザイなぁ! そう言うのはどうでも良いの!
主人公の役割は、悪を討つ事! ヒロインを助ける事!
戦いで壊しちゃった物品の損害賠償考える現金なヒーローがどこに居るのよ!」
苛立つような声を上げた小森だったが、その顔は機嫌が良さそうだった。彼を労るようなその微笑みは、今の雲海に取っては太陽のように眩しいものだった。
「大丈夫。雲海は正真正銘、正義の味方だよ!」
正義の味方。弱きを助け悪を挫くヒーロー。
かつて助けられた小森には、雲海がそんな正義の味方に見えていたらしい。
雲海は自嘲しようとする。自分はそんな大層な正義を持っていない。ただこれが自分の仕事だ。誰かがやらなきゃ行けない事を、たまたま自分がやっているだけなのだ。
しかし、その自嘲は、小森の笑顔に飲み込まる。この笑顔を自分の勝手で曇らせるのは忍びないと、思い至った。
「……ありがとう、小森さん」
太陽のように眩しい小森の笑顔は、しかし太陽とは別の物であった。
夏の鬱陶しい太陽と違って、雲海は彼女を真っ直ぐに見て微笑みを返す事が出来たのだから。
*
夕暮れ時。
山の陰に日が沈み、すっかり暗くなった据膳寺裏にある空峰家の縁側で、河童の利休が自前の水瓶の中に水を入れ、中を覗き込んでいた。
昨日は収まっていた蝉の鳴き声は再び喧噪を取り戻しており、風鈴の幽かな音は殆ど耳に届かない。しかし、それ程までに喧しい蝉の声を一切気にかける事なく、利休は水瓶の水に見入っていた。
「なるほどねぇ、自分の血を使って……」
「利休さーん、そろそろドラマの再放送が……って、何見てるの?」
縁側に現れた天心は、丸い目を更に丸くして、利休に習って水瓶を覗き込む。
水瓶の水に、まるでテレビのような鮮明な映像が浮かび上がっている。天心は感心したように口を窄めて感嘆の息を吐く。
「おおぉ……千里眼って奴?」
「そうさ。水鏡っつってな。
霊峰から吹き出す水に、河童の秘薬を一滴垂らしゃぁ、この通り。
この世の数多、過去も未来も思うがままに見て取れる」
「れいほう? 憂山ってそんな大層な山じゃないでしょ? どこからそんな物を?」
「富士山の湧き水を通販で買ったんだよ。ホント、便利な世の中だよなぁ」
そんな一度ペットボトル詰めされたような市販の水で大丈夫なのだろうか、と天心は少し訝しむ。
だが、残念な事に大丈夫らしい。世の理というものは案外合理的に出来ているのだ。
「ちょっと値が張るのが欠点だけどよ。あ、金は岩武から借りたぜ。返す宛ねぇけど」
「……無駄遣いは止めてよね。
陰陽師って一応内閣御用達って扱いだけど、財政に余裕は殆どないんだから」
天心の主婦の意見を聞いて、利休は後頭部を掻いて誤魔化す。
「で、今何見てたのさ?」
「てめぇの兄貴の勇士さ。
あの化け妖怪をどうやって退治したのか、詳しく話そうとしねぇからよ。
だったらこっちもちょいと強引に見てやるわぃ! ……ってこった」
「……もう、映像終わっちゃったみたいだけど」
天心が不満そうに口を尖らせる。
今水瓶に映っているのは、気絶して泡を吹いた、女子高生の姿をした化け妖怪と、顔に影がかかって表情の窺えない雲海だけである。
「ちょっと遅かったな、時間切れだ」
「えー、もう一回見せてよぅ」
「同じ水では一回きり。買った湧き水も全部使っちまった。
っつー事で、利休様主催の陰陽師空峰雲海VS変化妖怪エイ・エスの無制限ガチンコ一本勝負放映会はこれにてお開き。
次回開催は未定となっておりまーす」
そう言って利休は水瓶を持ち上げ、中に入っていた水を一気に飲み干した。何リットルもあった筈の水を一瞬で飲み干した利休は、一つ大きなゲップをした。
天心は納得いかない様子だったが、渋々立ち上がり、夕飯の支度に取りかかる為キッチンに立つ。
一人残された利休は、ふと先程まで見ていた雲海がどうしているかが気になった。恐らく神部の見舞いの帰りに、小森に振り回されているんだろう。
そんな楽しい青春を送る彼に、今からでも教えてやるべきなのだろうか。
「自分の血を使った呪術は、さぞかし強力だろうよ。
山気光明の血族となりゃ尚更さ。
……だが、血の呪術は妖怪の術。
人間の触れられざる禁忌。人の身でそれを使ったモノの末路は……」
片鱗が見えた。
雲海には素質がある。人の身にして、人ならざる者へと堕ちるだけの素質が。
妖怪を喰らう妖怪へと変貌するだけの要素が、彼の中で産声を上げてしまったのだ。
果たしてそれは、彼が辿るべき運命なのか、否か。
「やれやれ……」
利休は青春を謳歌している雲海が、このまま幸せに生きていける事を、僅かに願った。例え自分と彼が、妖怪と人間と言う、相容れぬ間柄だとしても。
第四話は、不幸な超常現象の代表格、ドッペルゲンガーでした。
語源はドイツ語。二重に歩く者、を意味します。医学用語においても自己像幻視(AS)とか呼ばれているそうで、本作の妖怪の名はここから拝借しました。
日本では馴染みのない超常現象と思われがちですが、江戸時代に「影のわずらい」として日本でも起きていたとされています。
その実態は自分の姿を第三者、または自分自身が見てしまう……もう一人自分がいる、と言う状況が発生してしまう現象です。
発生の原因については諸説あります。幽体離脱の類い、ただの幻覚や幻影である、本作のように変身能力を持った化け物の仕業の場合も。酷い場合は単なるそっくりさんだった、なんて話すら。
しかし大抵の場合、この現象を体験した人間の末路は悲惨なものです。数日以内に死ぬ、精神が崩壊する、体を乗っ取られる……などなど。
さらに恐ろしい事にこの現象は、見ないにはどうすればいいか、見たらどうすればいいか、と言う対処法が民間伝承にも殆ど語られていません。一応、見てしまった場合はそのドッペルゲンガーを汚い言葉で罵倒すれば死を回避出来る……と言う説だけは発見できました。もっとも、見てしまったけど何も起こらなかったよ、なんて話もありますが。
だからもし、もう一人の自分を見てしまっても、パニックを起こしてはいけません。「こないだドッペルゲンガー見ちゃってさー」なんて笑い話の種にしてやろう、くらいの心構えをもって普段の生活を送りたいものですね。