序−2 発見された少女
199X年、五月七日。某局、ニュース番組の記録。
「この時間からは全国ニュースをお伝えします。まず、最初のニュースです。
先日、谷潟県山田村にて、自宅近くで遊んでいた、
香田薫ちゃん、四歳の行方が分からなくなっていた事件について、速報です。
本日五月七日の午後七時半頃、この少女は無事、自宅にて保護されました。
目撃者がおらず、行方不明になってから約半年が経過していたにも関わらず、
少女は行方不明当時と全く変わりない健康な状態で帰宅したとの事で、
警察はこの失踪事件を誘拐事件と断定、調査を再開すると表明しています。
また、少女は犯人については「遊んでただけ」と述べており、具体的な犯人像を割り出すのには時間がかかりそうです。
……コメンテイターの飯田さん、少女は発見当時と全く同じ服装で、外傷も無かったとの事ですが」
「えぇ。私も保護された時の映像を見たんですがね。
四歳児にとって半年とは結構な時間ですが、全く身体的にも成長している様子がないんですよ。
まるで半年前からそのままタイムスリップでもしてきたかのようにすら見えましたね。
心的外傷も全く無く、少女の証言も不可解極まりない。
なんというか、色々と整合性の取れない事が多く、謎の多い事件だと思います。
あと……非常に不確かな情報ですが、この少女が行方不明になった当日と、発見された今日。
どちらも山田村上空で、緑色に光る未確認の飛行発光物体の目撃証言もあるんですよね。
まぁ、流石にそれは関係ないでしょう。失礼しました」
「ありがとうございました……では、次のニュースです」