表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪奇!知らない世界の人々  作者: ずび
第九話 クローン
109/123

9−1 悪魔の影

 20XX/09/03──妖山市、某ビジネスホテルの一室の会話録。某機関の盗聴器による。


「ハナコ。Kシリーズのテスト状況の報告が随分と遅れているようだが」


「コスト最優先の粗悪品のテストなんて、やる前から知れたもんだよ」


「随分な物言いじゃないか。思考形態のプログラミングから細胞のクローニングまで、全部君が引き受けたんだろ? 手塩にかけて育てた、娘のようなもんだ」


「娘だなんて止してくれ。まだ嫁入り前の生娘を捕まえて」


「……冗談を言っている場合じゃないのは、君も知っているだろう?」


「おっと? 拳銃とは穏やかじゃない」


「俺も忙しい身でね。急かされているのさ」


「そんなもので私が死なないよ。だから安心してくれ」


「……そうしてもらえると助かるよ。それで、テスト延期の理由は?」


「貴方も知ってるだろ、例の『肝試し』」


「あの原住民共の乱痴気騒ぎかな。『+α』の試運転もあったそうだな。……結果は散々だったようだが」


「そうでもない。おかげで『恐怖』のインプットが完了した。戦略兵器としての性能は向上したと見ていいだろうさ」


「……ふむ、君がそう言うのならばそうなのだろう。話が逸れてしまったな、で、延期の理由だが」


「肝試し以来、最近やたらと元気に鼻を利かせているワンコがちらほらと……」


「……テストの内容は『狐狩り』だったな」


「上の自業自得なんだ。反省しながらのんびり待ってろ」


「ここじゃなくても出来るだろう。君は随分とこの地に拘っているようだが」


「……プロトタイプの回収計画をそろそろ動かしたい」


「おい、いくらなんでも早過ぎるだろう? 予定では後二年は必要だった筈だ」


「もう十分だ。これ以上変な知恵を付けられても困る。それに、ワンコ共が事の外目障りだ」


「本隊が必要かね? なんなら、その……チワワ狩りに本腰を入れるが」


「聞いてみたら? 多分答えはNOだろう」


「何故だ?」


「居なくなったらそれはそれで困る。アレはそう言うシステムなんだ」


「君がそう言うならそうなんだろうな。……ところで、プロトタイプの調子はどうなんだ?」


「すこぶる順調。最近はもう、眼も当てられないくらい元気で」


「全く……君はアレに甘いな、流石は君の」


「おっと、失礼。拳銃を拝借しますよ」


「おいおい、止めてくれよ……って、あ、あれ?」


「ほうほう、使い込んでいる割には傷も少ない。手入れも行き届いている。まさしく愛銃ですな」


「……返してくれよ。と言うか、いつの間に盗ったんだ? こちとらソイツをずっと握っていたってぇのに」


「強いて言うなら手品。もっと言えば科学、かな」


「ははは、こいつは参った。せめて冥土の土産に教えてくれよ、俺の何が気に入らなかったってんだ?」


「いや、貴方ではなく。どうもさっきからネズミがうるさくてね」


「……鼻の良いネズミもいたもんだ。俺の色気が強過ぎたかな? それとも君か?」


「どっちにしろ……害獣は見つけ次第駆除するようにしてるのよね。こんな風に」


 直後発砲音二発が録音されており、音声記録はそこで途絶えている。このテープを持ち込んだ某氏は後日、消息を絶っている。

 当局はこの記録を最高機密として取り扱い──

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ