日常に溶ける三つの光
深淵の魔女との戦いから三日後。
学園には、久しぶりに“普通の朝”が訪れていた。
青空。
鳥の声。
学生たちの笑い声。
――平和って、こんなに静かで暖かいんだっけ。
ユウは久しぶりにゆっくり深呼吸した。
「……ふぅ。今日は授業だけだし、のんびり行こうかな」
そう言って教室へ向かおうとすると――
「ユウ~!! おはよーっ!!」
背中に思いっきり飛びついてくる影。
リリアだ。
「お、おはよう……リリア」
「もう! 三日間も心配で眠れなかったんだからね!
ユウが起きて歩いてるだけで幸せだよ~!」
勢いのまま腕に絡みつくリリア。
ユウは困ったように笑う。
「そんなに心配かけた?」
「当たり前でしょ!!」
リリアが頬をぷくっと膨らませると、
「……ユウ、おはよう」
後ろからひんやりした手がそっと肩に触れた。
エルザだ。
「リリア。ユウにくっつきすぎ」
「えっ!? い、いいじゃん別に!!」
ふたりがプチ火花を散らした瞬間――
「……ユウ、手」
エルザがユウの手をとった。
「えっ……?」
その動きは自然で、静かで、
でもどこか“甘さ”を含んでいた。
「三日ぶりだから……少し触れたくなっただけ」
リリアの頬がかぁっと赤くなる。
「ちょ、ちょっとエルザ!? 私もユウと手つなぐの!!」
「……順番」
「順番とかじゃなくてぇ!!」
ユウは二人に両腕を引っ張られ、ふわっと笑った。
(ああ……なんだろう。
緊張してた心が……ほぐれていく感じがする)
■ 1 学園のいつもの日常が戻ってくる
教室に入ると、クラスメイトたちが騒ぎ始めた。
「ユウくん生きてたかー!」
「いや本気で心停止したって聞いたぞ!?」
「どんな激戦だったの!?」
「……ユウは……普通に、すごいだけ」
エルザがさらっと答える。
「そうだよ!
ユウはね、私たちを守るために――」
「リリア、言いすぎ」
「ふえぇ!? な、なんでエルザが言うの~!?」
クラス中が笑い声に包まれる。
ユウは席につきながら、胸の奥がじんわり温かくなった。
(……変わらない場所があるって、いいな……)
■ 2 昼休みは“取り合い”
「ユウ、お弁当一緒に食べよ!」
「だめ。今日は私が作ったから……ユウはこっち」
「え!? ずるい!! 私だって作ったのに~!!」
「……どっちも食べたら?」
「それなら……いい、かな……」
結局ユウの机には
リリアとエルザの弁当が二つ並ぶ。
「……あの……一応、僕のも……」
「「いらない!!」」
「ですよね!?」
三人で笑いながら食べるお昼は、
戦いの緊張を忘れさせるほど穏やかだった。
■ 3 放課後、少しだけ甘い時間
夕暮れ。
校門前。
リリアとエルザがユウの両隣に立つ。
「今日、ほんとに平和だったね……!」
リリアが幸せそうに笑う。
「ずっと……こうだったらいいのに」
エルザがユウの袖をそっとつまむ。
ユウは二人を見て、小さく笑った。
「ありがとう。
二人がそばにいてくれるから……
こんな時間が幸せに感じるんだと思う」
「ユウ……」
「……ユウ……」
二人が同時に顔を赤くする。
その様子にユウもつられて照れた。
(……深淵の戦いは終わったけど、
守りたいものは増えたんだな……)
■ 4 空に浮かんだ“ひとつの光”
三人がふと空を見ると――
星のように小さな光がひとつ、瞬いていた。
「わ……なんだろ?」
リリアが首をかしげる。
「……深淵の魔女……?」
エルザが小さく呟く。
その光は、まるで微笑んでいるように
静かに瞬いていた。
(……ありがとうって……言ってるのかな)
ユウはそっと胸に手を当てた。
「僕たちも……負けないように頑張らないとね」
その言葉に二人が頷いた。
「うんっ! 私もユウを支える!」
「……私も……そばにいる」
空の光は、ゆっくりと夜空へ消えていった。




